第9話 唐突な告白
「__実は、私の種族は剣なの。」
…………剣…?
俺はレーヴァの言っていることが分からず、ぽかんと口を開けた。
「これに関してはそのままの意味よ。私、剣だから。今は人間形態だけどね。」
いやいや。生まれてこの方17年、ずっとゲーム三昧の一生だったが、種族が剣なんか聞いたことない…。
そもそも、剣とは武器であってレーヴァみたいに話したり動いたりできるものじゃないだろ。
「訳が分からないといった顔ね。そうなるのも仕方ないわ、一般常識では剣は人間の形を取れないものだからね。」
レーヴァが俺の心を読んだように思っていたことを言い当ててきた。
「百歩譲ってレーヴァが剣だとして、なんで人間の姿なんだ…?」
「それに関しては簡単よ。私が魔剣だから。
前の主人に長く使われて何百年と魔力を溜めているうちに、いつの間にか姿を変えることもできるようになったの。」
そんなこと有り得るのか…? いや、ここは異世界だ。前世の常識は通用しないと言っても過言じゃない。
「……っていうか、今魔剣って言ったか!?」
魔剣とは誰もが知っている通り、ものすごく巨大な力を持つ剣なのだ!!
魔物だけではなく、魔王や神までもを斬ることができると言われている、超絶チート武器だ!!
「ええ、そうだけど…。」
「よし、決めた! 剣状態のレーヴァを俺が使って魔王を討伐してやる!!」
これならレーヴァも魔王を倒せるし、俺は周りからチヤホヤされるし完璧といっていい作戦だろう!
よーし、そうと決まれば…
「…ちょっと話を最後まで聞いてくれる?」
レーヴァが眉間に皺を寄せ、ため息をついた。
……確かに話は最後まで聞くべきでした。ごめんなさい。
「……それで魔剣である私は訳あって500年前に封印されたわ。」
「封印? なんでだ?」
普通、魔剣が存在するならそれを勇者が使って魔王を倒すべきだろ。
「あなた、本当に一般教養がなってないわね…。小さい頃、古代史の授業で習わなかったの?」
この世界に来て2日目なわけだし、そりゃ知らんわ!!
というか、この世界にも学校的なものは存在してるらしい。
「まぁ、知らないならそっちの方がいいわ。そして、封印された私は何者かの手によって封印を解かれたの。」
「何者か…? それはレーヴァでも分からないのか?」
「ええ、解かれた直後は記憶があまり無くてね。」
何者かってところがなんか怪しいな。俺の中の名探偵がこの謎を解きたがっているぞ!
まぁ、レーヴァが分からないってことは無理なんだろうけど!
「それであなたが死にかけていたフォグの森、覚えてる?」
「言い方に悪意がある!!」
明らかに悪意のある言い方だったので、思わずツッコんでしまった。
「私はその森に封印されていたの。誰も寄り付かなかったし、退屈だったわ。」
「なんで人が寄り付かなかったんだ? 普通、多少迷おうが魔剣を手に入れたいと目論む輩は大勢いるだろ。」
この世界には例え命懸けでも金や名声を手に入れたい冒険者なんてわんさかいるはずだ。
なのに誰も来なかったっていうのは少し違和感がある。
「…あなた、変なところで鋭いわね。そんな話は別にいいのよ。」
なんか変にはぐらかされてしまったな。
そんなに隠すことでもないだろうに。
「それで、そのフォグの森で私はモンスターを倒してゴールドを集めてたわ。魔王討伐の前に腹ごしらえしようと思ってね。
そんな時にあなたと会ったってこと。」
なるほどな、ってなればレーヴァが封印から目覚めたのは最近ってことか。
「というか、なんでお前はそこまで魔王討伐に拘るんだよ。」
「___っ。」
俺がそう聞いた瞬間、レーヴァはほんの一瞬だったがとても悲しそうな顔を見せた。
「……別に大した理由じゃないわよ。他の冒険者と同じく、お金や名誉が欲しいだけ。」
「…ふーん。」
いやいや、絶対なんかあるだろ。いくら空気が読めない俺でもそれくらいは分かるぞ。
まぁ、本人から話さないってことは言いたくないんだろうけど。
「……それで、ここからが問題なのよ。」
レーヴァはそう言って俺の方を心底殺したいといった顔で見てきた。
……俺、レーヴァになんかしたか?
「私が剣ってことは私を使う主人がもちろんいるってことは分かる?
そして、封印から解き放たれた今、主人がいないということも。」
そりゃ、剣は武器なわけだし使う人はもちろんいるよな。
「ああ、そんくらいは分かるけど。」
「………そう。それじゃあ、心して聞いてほしいんだけど__」
なんだこの空気。死になさいとか言われないよな?
異世界に来て2日目で死ぬとかいう異世界人生RTA的なのは嫌だぞ。
「__魔剣はね、頭を触られるとその人に絶対服従しないとダメなのよ。」
「…………マジすか。」
目を丸くした俺は、口を広げてぼそりと呟いたのだった。
陰キャの俺が異世界転生したら魔剣と出会ったので魔王討伐します 遮 @mizuna_
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