第8話 異世界初日が終わった

「__あれ、もう朝か。」


中々寝れずに天井を見上げていると、いつの間にか窓から眩しい日差しが差し込んできていた。


異世界転生初日というのもあり、いろいろソワソワして全然寝れなかったな…。

まぁ、徹夜はゲーム中毒なのもあってほぼ毎日してたから慣れてるけど。


「……起きるか。」


相変わらず目は冴えているので、もう起きることにした。

実質今日、この瞬間から俺の異世界ライフが始まるのだ。楽しみすぎる!!!


ウキウキしながら髪の毛を少し整え、部屋のドアを開けた。


「あら、こんな朝早くにどうしたの。」


廊下には荷物を背負ったレーヴァがちょうど部屋から出たところだった。


「いや、寝れないしもう起きようと思って。レーヴァこそどうしたんだよ。」


今の時刻は結構早朝で、朝の5時半くらいだ。こんな時間からまさかレーヴァが起きてるとは思わなかった。


「やることは1つしかないわ。魔王城に乗り込むのよ。」


確かに、最初から明日魔王を討伐しに行くとか言ってたな…。

もし討伐されると俺の活躍するチャンスが減るから、できればやめてほしいのだが…。


「…やっぱ、俺もついて行くってできませんよね……?」


「は? 何回言わせるの。当たり前でしょう。 あなたなんか足でまといになるわ。」


恐る恐る聞くと、やっぱりマイナス0℃の眼差しで怒られた…。

足でまといになるかはまだ分からないぞ! 俺の秘められたチート能力的なものがあるかもしれない!!


「それじゃ、私は先を急ぐしもう行くわ。」


レーヴァともここでお別れか。異世界で初めてあった人だったけど、なんだかんだ言っていいやつだったな。

俺もレーヴァに負けていられない。絶対に有名になってチヤホヤされてやる!!


「ああ。短い間だったけどありがとうな。」


俺は感謝の気持ちもこめてレーヴァに手を差し伸べた。


それを見て、レーヴァは少し嫌そうな顔をしたが(失礼すぎるだろ)、俺の手を握り返そうと手を出した___


「うわっ!?!」


その瞬間、俺は床のドロッした何かに足を取られ、前のめりに倒れた。


「……危な…。なんだよ、これ!」


なんか臭いがキツイな…。

……ちょっと待てよ。これよく見たら誰かの吐いた後じゃん!! 最悪すぎる…。1個しか無いスニーカー汚しちゃったし!

あと服にもちょっと跳ねた!


「…………は、」


俺が涙目になっていると、レーヴァが小声で何かぼそりと呟いた。


あとよく見たらレーヴァの頭に俺の手が乗って、撫でてるみたいな状態だったので、申し訳なさを感じ手を退けた。


「ごめんごめん。 なんか誰かのゲロ……というか吐瀉物に足取られたみたいだわ。」


本当にこの世界に来てからというもの、ついてないな…。最初なんか森に転生したしな。

転生する場所どう考えても狂ってるだろ。


「はああぁぁぁぁぁぁ!?!」


「うおっ!?」


急に大声でレーヴァが発狂し、俺を押し飛ばした。

急に体制を崩された俺は、ビビってもう一度滑りかけそうになった。


「急になんだよ、危ないだろ!」


危うく顔面からゲロにこけるところだったぞ。そうなったら大惨事すぎる。

鈍臭い俺なら本当に転んでてもおかしくなかったしな…。


「な、なっ、何してくれてるのよ!!」


レーヴァが涙目で思いっきりこちらを睨む。拳は握り締められており、今にでも殴りかかってきそうだ。


「マジで殺すわよ!!いや、もうこうなったら私ごと死ぬしか……」


「はぁ!?! なんで急にそんな物騒なことになるんだよ!!」


レーヴァの頭の上に手を乗せたのが悪かったのか!? それにしてもこれは怒りすぎだろ、俺はまだ死にたくないぞ!!


「ここであなたを殺しても、もう取り返しのつかないことは分かってるけど…。冷静になろうとしても許せないわ!」


そんなに嫌だったのか!? 俺のガラスのハートが傷つく…。


「ごめん、ごめんって!! 謝るから命だけはどうか!」


レーヴァに本気で殺しにかかられたらもちろん死ぬので、俺はとりあえず2度目の命乞いをした。

異世界に来て命乞いばっかやってる気がするのは一旦置いておこう。


「…………はぁ、こんなのが私の主人になるのね。」


レーヴァは諦めたように、そして嫌そうにため息をついた。


「……主人? 何の話だ?」


急な展開についていけず、俺は首を傾げる。


「__こうなったらもう全部話すしかないわね…。」


少し沈黙した後、レーヴァはこんなことを話し始めた。

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