5.そうしてボクたちはお友達になった

二匹ともどこに行ってしまったんだ。もしかして洞窟から出られなかったのか。慌てて立ち上がると、のんびりと坂を下ってくるねこむかでさんとうちゅーじんさんがいた。

「キミさーん! だいじょーぶ?」

「は、はは・・・・・・大丈夫だよ!」

 あまりにも二匹がのんびりしているので、拍子抜けしてしまった。なんというか、危機感が足りない。思わず苦笑いが漏れてしまった。

 二匹と合流すると、改めて周囲を見渡す。洞窟は暗くて冷たい場所だったが、ここは暖かくて爽やかだった。天辺に咲いた紅の花は真っ直ぐ太陽に向かっている。ぼくの身体なんかよりもずっと大きな花だった。花というものはこんなに大きなものだったかと首を傾げる。大きいせいか、花の濃厚な香りが風に乗って運ばれてくる。大きな木々と、花の匂い。記憶はないが、確かにボクはこの匂いが好きだった気がした。木々の隙間から見えるのはどこまでも冴え渡る青空だ。

 まるで夢のような光景だった。ボクはもしかすると、夢を見ているのかもしれないなと思った。

「それじゃ、いこっか」

「・・・・・・行くって、どこに?」

「やくそくしたでしょ? 『まち』にあんないするって。ここからちかいからすぐだよ! いこ!」

 ねこむかでさんとうちゅーじんさんがボクの頭に飛び乗ってきた。頭が重い。けれど、悪い気はしない。

 今一度、後ろを振り返る。洞窟の入り口かと思われる両扉はしっかりと閉ざされていた。カゲさんが閉めたのだろうか。どうやら、ここまでは追ってこないようであった。

 ねこむかでさんの鼻歌が聞こえてくる。調子外れの鼻歌だった。

「うれしいなー。『おともだち』がふえたよ」

「おともだち?」

「うん! キミさんはもうぼくたちの『おともだち』なんだよ」

『ぴ!』

 そうして頭から飛び降りたねこむかでさんとうちゅーじんさんがボクをじっと見つめてくる。強く風がざわめいた。その風は、確かに暖かなものを伝えてくれた。

 なにかがはじまるそんな予感に、胸がざわめく。ねこむかでさんが小さな手をボクに差し出してきた。

「よろしくね、キミさん!」

 ボクはなんだか・・・・・・その言葉がとても嬉しかった。「おともだち」だなんて、きっと昔のボクには縁のない言葉だったに違いない。そう思わせるほどの違和感と、そして歓喜が「おともだち」という言葉に内包されていた。

 

「・・・・・・よろしくね、ねこむかでさん。うちゅーじんさん」

 ぼくはねこむかでさんと手を繋いだ。その手がやはり暖かくて、ほっとして涙が出た。

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ねこむかでさんと冒険! 海野月歩 @kairi_kobayashi

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