ベリーダンス 🥻

上月くるを

ベリーダンス 🥻





 はい、腰を小刻みにふるわせ、ヒップスカーフのスパンコールを鳴らしましょう。

 正面の席でご覧になっている王さまに、とびきりの笑顔をお見せしましょうねえ。


 シレっとそんなことを言う自分が恥ずかしいなんていう時期は、とっくに過ぎた。

 この道で食べていく以上、プロに徹しなくてどうすんの、がんばれ自分!🤸💪


 ひときわ優雅に踊ってみせながら、フウコは三方の鏡に映る生徒をチェックする。

 総勢二十人あまりだが、メインスタジオの半分以下の第二スタにはちょうどいい。


 


      💅




 さすがにベテラン連は衣装も化粧も華やかで、中近東の踊り子になりきっている。

 逆にエアロビのレオタードや筋トレウェアで恥ずかしそうにしているのは新入組。


 ダンスがダンスだけに大方は女性だが、なぜか男性の生徒も何人か混じっている。

 スレンダーな肢体にスケスケのレオタード……フウコ先生の艶に吸い寄せられて。


 男性トレーナーたちはそう言って揶揄からかうが、動機が何であっても全然かまわない。

 市内のジムを掛け持ちし、出席人数でギャラが決まるので、何なら犬猫でもOK。


 女性とちがいウェストのくびれがない男性は、ヒップスカーフの治まりがわるく、踊っている最中に外れてしまったりするが(笑)、それもまあ、ご愛嬌というもの。




      👯‍♂️




 地元の大学を出てスポーツジムに就職し、結婚して子どもが生まれてからフリーのインストラクターに転向したが、とつぜんのコロナで飲食業の夫の収入が激減した。


 クラスターの発生源のひとつと言われたジムも一時は閑古鳥の棲み処になったが、何度かの危機をみんなで乗り越え、マスク着用の定員制レッスンが定着しつつある。


 夫の完全復帰の目処がいまだに見えて来ない状況で、当面はフウコの稼ぎで家計を支えなければならないのだから、色気でも何でも売れるものは売って凌ぐしかない。


 兄ふたりの末っ子で育った自分にこんなパワーがあるとは思ってもみなかったが、小一と年中の子らのためならどんな苦労もいとわない自分が、少し誇らしくもある。


 キレッキレのステップ&フリが人気のリトモスやズンバとは毛色がちがう、スローでムーディで蝶のように優雅な中近東の宮廷ダンスの市内第一人者を目指している。





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ベリーダンス 🥻 上月くるを @kurutan

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