第3話(3)プリンがないなら月餅でも食べたらいいじゃない!

「誰かー!誰かあの生徒を捕まえてくださいまし!白百合様のプリン持って逃げましたわ!」

 緑川の声を聞いて、立ちふさがる数多の令嬢たち。

「お待ちなさい!」

「私達だって堪えているのですよ!一人で自分勝手な行動を取るのはノブレス・オブリージュに反しませんこと?」

 はあ!? 普段からあたしを小間使いみたいにこき使っておいて都合の良いときだけノブレスオブリージュ!?

「残念でした〜!あたしは庶民出身の灰学生です〜! プリンがないなら月餅でも食べてなさいよ!超余ってたわよ購買で!」

 立ちふさがってると言っても、ただ両手を広げて突っ立ってるだけのお嬢様たちなど正面突破すればたいしたことはない!

 私は生徒たちを掻き分け、蹴散らし、頭を飛び越えながら走る。寮に続く渡り廊下を走ろうとしたところで、前方からふらりと青山さんが現れた。

「あ、青山さーん! 良かった、逃げられたのね!」

 声をかけるが、反応がなく、青山さんはうつむいて立ったまま。

 彼女は、青色の薔薇がデザインされたリップスティックを持った腕だけ上にあげると、青い光に包まれて暴令嬢戦士の青薔薇に変身した。ん?

「青山さん?どうしたの、暴令嬢戦士に変身なんかして」

「黄崎くん……わたしはもう駄目だ……」

 は?

「そのプリンをこちらに寄越すんだ!」

 青薔薇が薙刀を振るってこちらに襲いかかってきた。

「ウソでしょ、ちょっとぉ!?」

 その時、緑川が青薔薇のいたところから現れた。

「おーほっほっほっほ!青山にプリンを一口あげて、「黄崎を捕まえたらもっとあげる」と言ったらこの通りですわ! さ、みなさんも手伝ってさしあげて!」

 緑川の声に呼応して、何人もの生徒達がさっと物陰から現れて、私に向かってくる。さっきとは動きが全然違って、機敏な動作で駆けてくる。

「おとなしく渡しなさい」

「ダメよッこれだけはだめっ!! 灰野先輩が待ってるんだから!」

 そうはいったものの、私は逃げ場のない廊下の端に追い詰められてしまう。もう駄目だ……そう思って目を瞑った、その時。

 誰かが私の腕をぐいと引っ張った。

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暴令嬢(あばれいじょう)戦士  レイジョーシスターズ 藤ともみ @fuji_T0m0m1

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