004: シャロンの思い出


 シャロンが生まれたのは、巨大軍事衛星エリア・リスαが就航する15年前だ。

外宇宙の自治権が認められ、盛んに交易取引を行い経済が活性化。それにより、株価が上昇し、好景気となる吉兆がみえていた。


 そうした中、シャロン准将は、裕福な家庭に生を受けた。親ガチャに成功したと。周りの人々は言うだろう。

 しかし、それは全く違う。


 そんな、株価を操る匠と呼ばれた男。それが父親だ。大邸宅に住み。

何不自由なく過ごせる環境ではある。

 ちなみに母親は、大盗賊の末裔まつえいで、年中世界各国にいっては、美術館のものをかすめ取る。本当の意味での泥ママだ。

 

 アンドロイドの家政婦ナニーメイドだけが、シャロンを大きくしてくれたと感謝をしている。


 父親は、仕事傍ら、0才児のシャロンに言葉よりも先に、株式や先物取引の何たるかを永遠と語っていた。それは、シャロンが家を出るまで続いた。


 13歳になったシャロンは、友達の誕生日会に招かれた。

この時、初めて、誕生日の誕生日ケーキやプレゼントを初めて知った。

株式のロウソク足に、そっくりな本物のロウソクに目がくらんだのを覚えている。


 金に鋭い父親と、海外で潜入している母親に祝ってもらったことはなかった。


 16歳になったシャロンに、高校進学を決める時期となってきた。

この時、ちょうど帰ってきてた母親と父親の同伴のもの三者面談を行ったことを今でも忘れない。


「シャロン君は、名門校でも、十分やっていけます。推薦入試の用意もしてます」


担任からかけてもらった嬉しい言葉。次の父親の一言ですべて吹き飛んだ。


「いや、シャロンは、高校には行かせません。」


「だって、お金の無駄でしょう?」


愛娘を前に、お金の話だ。この時、本当に金というものが嫌いになった。


 それでも、『自分はタフな子だ』と言い聞かせ、先生と両親の言い合いを

にっこりしながら聞いていた。


 結局、名門高校は高校卒業後働くという条件で、奨学金でいくことになった。

この頃から、少し外れた生徒になりつつあった。世間を斜に見るようになったのだ。

『この子は、こういう利益を欲しているからこんな事を言うんだな。』

とか。

『先生は、問題さえ起こさなければ、生徒のことをなんとも思ってないんだろうな』

反抗期とも、金持ちの偏見とも違う。ネジ曲がった発想が形成される。

愛情を幼少期に置き忘れたシャロンにとって、その要因は、火を見るよりも明らかだった。

 いくら感動的な告白されようと。辛辣しんらつな嫌味を言われようと。

にっこり笑いやんわり避ける。そんな、処世術が培われていくこととなる。

 

 そんな、シャロンは飛び級で卒業し、働くことになる。

シャロンとしては、もっと、学校で学びたかったのだが。


 先生がシャロンの殺し屋みたいなオーラを耐えられなくなり。さらに、成績が優秀で大学レベルの勉強に問題なく対応できる才能が認められた。


 その結果、早めに卒業させられ、親との約束である職に就かなければならなかった。

 シャロンは悩んだ。したくもない仕事を何に付けばいいのだ。

とりあえず、バイトをしてみることにした。いわゆるフリーターだ。


 様々なバイトをした。

 特殊清掃。夜逃げ屋。闇の占い師。

 闇の世界で働いているともう少しまともなバイトも勧誘された。

 イカサマディーラー。ひよこ鑑定士。長距離エアビークルの運転手。


 これらを、3年ぐらい点々としたシャロンだったが、どれもあまりピンとしなかった。

 どれも、稼げるけど面白くない。

やっぱり、勉強がしたい。と、思いお金がもらえる大学を探した結果。


 EDSF防総大学校があるのを知った。

シャロンは、寮もあってお金が稼げて、気楽な勉強ができるのならと。

一念発起し、家出した。すぐさま、転がり込むこととにした。


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