004: 巨大軍事衛星エリア・リスALPHA
≪EDF地球軌道第1軍事衛星エリア・リスα≫
レゼングラース巡洋艦とバニラ巡洋艦の両艦の母港。
巨大軍事衛星軍港エリア・リスαの巨体に2隻は収容される。
エリア・リスα。地球軌道に位置する全宇宙最大級の巨大軍事衛星要塞。
宇宙最大のEDF第一宇宙艦隊の本拠地だ。
数年前、どこかの政治家が、なにをとち狂ったのか。
巨大軍事衛星要塞を地球軌道において、強大な抑止力にしよう。と言い出した。
これが、エリア・リスαだ。
それよりも、軌道衛星上にいくつもの小型防衛衛星を製作した方が絶対、効率的だ。と、専門家たちが苦言を呈す中。
討論すえ結局。EDFがどちらを作ったのか。それは、火を見るよりも明らかだ。
もちろん、両方を作り上げた。
この両方作れてしまうところが、EDFの恐ろしいところだ。
もはや、地球の子どもたちに、流れ星に願い事の夢すらさせない防空網だ。
その巨大軍事衛星要塞エリア・リスαは、いま、地球観光船の航路になっている。
シャロン准将は、もちろん、巨大軍事要塞エリア・リスαの秘匿情報である。
内部の景色を勝手に撮影して。
オンラインで軍オタとか夢見るテロリストに高値で販売している。
シャロン准将のちょっとした財テクだ。
しばしの艦での雑務と報告後。
ヒスイ艦長がいつも通り苦虫をつぶしたような顔をして下船する。
それを、ワザとタイミングを合わせた金髪の悪魔シャロン准将が下船してくる。
「おや。これは、ヒスイ艦長。奇遇デスネー」
ニヤニヤ、と分厚い封筒を手にし、ニヤニヤと笑みを浮かべている小悪魔シャロン准将に対し、ヒスイ大佐はストレスにさいなまれながら、准将であるシャロンに敬意を払う。
「これは、どうも。シャロン艦長。あの行動力は素晴らしいですね」
「私もすごいとおもったよー、さすが、私のシャロン!」
ルーンラビットの少女ルナも、悪びれることなく、うんうん。と、うなずく。
さすがのシャロンも生意気だ。と。ルーンラビットに頭突きをくらわす。
幹部宿泊室階層まで、ヒスイ大佐とシャロン准将は、同じ通路。
ヒスイは、とどまることもないシャロンの自慢や会話に、左太ももに携帯している
すると、急にシャロンが立ち止まる。
「これは、エイス総監」
二人とも、きびすを返し敬礼をし、直立する。ルーンラビットは、とっさに笑みを消し無機質に立ち尽くす。
「シャロン艦長。4050の状況は?」
その型式を聞き、ルナは、ふと、瞳に悲しさを浮かべる。
「ハード、ソフト。ともに良好です。また、戦闘においても問題なく機能しています」
「なぜ、演習で
「ハッ、発見は容易ではありますが、レゼングラースの優秀な艦長は、緊急ワープのエネルギー波を感知します」
「そこで目隠しとしたわけか」
「ハッ、ご明察通りであります。」
「君には期待しているよ。来年には、総統府軍務武官の推薦も考えている」
ケッ。たかだか総統府付き勤務で喜ぶかよ。と。誰もがうらやむ出世コースにケチをつけ、EDF宇宙軍の総監ぐらいにしろよ。シャロン准将は内心でグダをまく。
「ハッ、ご期待に沿えるようがんばります!」
ヒスイ艦長は、その様子を見、自分自身の妬みとも知れず。おべっか使いが。と、内心いらだちを感じる。
また、ルナも上官の前では、シャロンに手も握れない。そんな、近くて遠い寂しさにもじもじとしていた。
それでは…。と、三人は別々の道に分かれる、優秀なヒスイ艦長は我慢できず。
「あのアマが!」
シャロンに聞こえる距離で叫び出した。
シャロンは、怖いお姉さんだねーと笑いながら、黙ったままのルーンラビットに語り掛けるが、返事はなかった。
二人ぼっちになったルーンラビットとシャロンは、自室の前へとやってきた。
あれ?カードキーどこやったっけ?とポケットをまさぐる。
ちなみに、シャロン准将のカードキー再発行回数はダントツ一位だ。
ルーンラビットが黙ってうつむいたまま、シャロンの右手小指をこっそりと握りしめた。シャロンも微笑みしっかりと握り返した。
「ルナ。どうした?」
ルーンラビットの背丈にしゃがみ込む。シャロンが少し涙目のルーンラビットの紅い瞳を見つめる。
「なんでもない…けど…」
感情なきはずのアンドロイドとして生まれたルナは、瞳から悲しさと不安を零した。それを見て、シャロンはルナを突然抱きしめた。
「甘えん坊だなぁ。ルナは~」
シャロンと同じ金色のルナの髪を、ぐしゃぐしゃとおもいっきりわしづかみにして撫でまわす。
ルナの無機質な顔が解け、少し笑みがこぼれた。
「大丈夫。ルナにはみんなもついてる。もちろん、私もいる」
「絶対に置いて行きはしないよ」
それに…、まだ、私はこの艦を渇望している。と。ルナにも聞こえないように、不敵な笑みでつぶやいた。
結局カードキーを紛失し、シャロン准将は、145回目の自室のカードキーの再発行の手続きに行くと、嫌なヤツに出会った。
男性将官とその取り巻きの女性士官が二人がこちらに気がついた。
いや逆に、これは考えを変えれば、幸運か。
「これは、これは、グース先任准将。お疲れ様です」
上官に対して、一応、敬礼はする。たが、この男は、金持ちのコネで軍部の上層部に入り込んだ。ただの能無しなのだ。
「シャロンか。俺の提案を飲んでくれたかね?」
「提案?ああ、あの婚姻の話でしたか。私など分不相応ですよ?」
グース准将は、シャロン准将の顎くいをして顔面を近づける。
シャロンは、それをニコリと笑って手を払う。
「私みたいな貧乏人を相手にしても仕方がないとは思わないので?」
「そうだな。だが、そもそも。俺と結婚すれば、金持ちになれるんだけどな」
「それに、そういう高飛車なところが好きなんだ」
グース准将とたまに出くわすとこういう訳の分からない戯言を行ってくる。
シャロン准将と三名は、いつものお決まりの勝負をするため。近くの休憩室へと足を運んだ。
そして、スツールに腰掛けると、シャロン准将は用意してた新品のカードを取り出しテーブルに並べる。
「では、いつも通り。ハイ&ローでもしますか?それとも、ポーカー?」
どちらも、勝負したことがある。その惨敗具合で金を絞られた記憶にグース准将は、顔をひきつらせ苦笑する。
「そ、そうだな、どちらも、いい勝負だったが。もっと簡単な物がいい」
シャロン准将が強い理由はただの幸運だけではなく。ハイカードの何枚か手前のカードを一枚ずらして位置を把握するインジョグという手品を披露しただけだ。
「では、スリーカードモンテにしましょう」
「さて、聞いたことがないな?」
「また、イカサマじゃないの?グース様があんなに負けるなんて考えられないわ!」
取り巻きの少尉が野次を飛ばす。金とイケメンに集う二人組だ。
「一度もイカサマなんて使ったことない。失礼な話は慎め少尉」
「そうとも、俺がイカサマを見抜けないわけがないだろ」
グース准将は信じ切っている。これだから、こんな宇宙港で誰もしないような専用の部署に突っ込まれているんだ。
「「ですよねー」」
取り巻きたちも、なんとも現金なやつらだ。
「ここに3枚のカードがありますね?」
両側のローカードの真ん中に、ハートのクイーンおいた。
「この、ハートのクイーンが私です。このカードを混ぜるので捕まえる事ができたら
今夜一晩お供しましょう」
グース准将は、ニヤニヤとゲスな笑いを浮かべる。
「ほう、簡単そうだな」
「ただし、参加料は一本です」
「百万か」
「一千万です」
「一千万…!?」
「どうしまあしたーぁ?怖気づきました?」
シャロン准将のあおりに、グース准将は、精一杯の右頬引きつりながら笑って余裕をアピールする。
「まあ、いいだろう。三回ぐらいなら出来る…。」
たった三千万か…。と思いながら、シャロンは、手品を始めた。
3枚のカードを裏返しにする。
まずは左手にローカードとクイーンを2枚持ち、右手にもう一枚のローカードを手に取る。ここまでは普通だ。
しかし、ここからが本番だ。
左手のクイーンのカードを置く。と思わせ、2枚で重なっているローカードの方を置き入れ替えをする。
この瞬間には、相手はすでにローカードをクイーンだと錯覚している。
あとは、相手にわかりやすいように、ゆっくりと混ぜて選ばせるだけ。
「はい。では。どうぞ」
「シャロン准将。今夜、君はいただいた」
寝かせないぞ。と自信満々にウインクをしながら、ローカードを引いたグース准将。
「あれ、おかしいな…?シャロンよ。もう一回だ」
「お金の続く限りどーぞー」
それから、信じられないと半分ブチギレたのは、七回ほど。挑戦した時。
結局、全部シャロンの勝利出終わった。
「ではー、時間もないので、そろそろ、お金を振り込んでもらえますかぁー?」
「今回は、勝たせたが。次はうまくいかないぞ!」
シャロン准将は、軍用PDAに七千万が振り込まれたのを確認し、毎度あり。と行ってそそくさ去っていった。
「この手の賭け事って苦手なんだけどなー」
勝率の低い勝負に乗るのは好きじゃない。御金様は、確実に勝てるものに投資しなければいけないのだ。
「ルナは好きだよー面白いー」
それは何も賭けてないだろう。もし、負けて、あいつと一緒に酒を飲んで。
期限切れのこの眠剤で酔い潰す作業なんて、めんどくさい事この上ない。
「しかし、なんで、あいつは、私を好きなのかねー?」
ヒスイ艦長は彼にぞっこん惚れているのは周知の事実だ。
あやつを取ればいいのにといつも思う。
「だって、シャロン美人だもん」
ルナは、今回、出番のなかったことに不服そうにしてた。前回はディーラーとして活躍してくれた。もちろん、トリックを教えたのもシャロン准将本人だ。
「そこは否定しない」
「お金にはがめついけどネ」
「んー、なるほど。そこも否定しない」
出来ないの間違えでは?という言葉を飲み込むルナは、シャロン准将の怒りを買わないギリギリのラインを攻める。
実によく出来たアンドロイドである。
しかし、ルナには今までシャロンに付き合ってきたわからない事があった。
「どうして、そんなに、お金を稼ごうとするの?
それになんで軍隊なんかにいるのー?」
シャロン准将は、そいえば、ルナをメンテンナンス室に連れて行くのを忘れていた。
「あー、たしかにそういう事よく聞かれるよ」
シャロンが他人に自分の昔話を聞かせるのは初めてだ。
まあ、ルナになら、特に支障はないだろう。笑顔で口を開く。
「まあ、塵も積もった話をするけど。
両親は金持ちだったけど。守銭奴で私にお金かけることがなくてねー」
シャロン准将は、誕生日プレゼントどころか、ケーキの存在すら知らなかった。
「頭はよかったから、良い高校に奨学金で行ったけど。」
「その後、名家に嫁げって言われまくってね。
投げやりになって家を出ったの。
そのあと、お金を稼げるディーラーとかバイトをして
それなりにお金は稼いでたけれども。
でも、働くの嫌いだし。」
「楽な勉強がしたいから学校に進学したかったの。
だから、お金もくれる防総大学に入ったわけ。」
「ふーん、それで、今に至るんだ。」
シャロン准将は、アンドロイドメンテナンス室で
整備スタッフにルナの状況を知らせる。傍ら。
「まあ、そういうことね」
と言う言葉で締めくくった。
ルナは、シャロンの一面が知れたようで少し嬉しかった。
シャロン准将は、ルナを預けると再発行されたキーを持ち、自室へと帰っていった。
その数時間後、出港時間に寝坊しそうになり、ルナの受け取りを忘れたのは言うまでもなかった。
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