第9話 永劫の絆
あれからというもの、僕の人生は彼女を中心に回り続けている。
結果から言えば、あの動画は拡散されてしまった。
SNSの僕のアカウントは一気に炎上し、自宅や大学を特定されそうになり、不安な日々が続いた。
シャノン本人が、誤解だということを説明して、徐々にではあるが鎮火していったが、 内定が決まっていた企業からは取り消しを告げられ、卒業後の進路が白紙に戻ってしまった。
佐々木さんにもあの一件以来、敵視されるようになっていた。が、誤解が解けた後は普通に接してくれるようになった。ただ、シャノンと付き合っているという話を聞いて、だんだんと距離を置かれて行ってしまった。
卒業してからしばらく経つけど、佐々木さんもサークルの皆もどうしているだろうか。
「佐野リーダー、この書類置いておきますね」
「あ、ああ。ありがとう」
「奥さんも仕事頑張ってるんですから、リーダーも頑張らないとですね」
「……奥さんではないよ。シャノンは」
「またまた~。親会社の社長の娘さんをゲットしておいて……謙遜も過ぎれば嫌味ですよ~?」
ちなみに、今の僕の現状であるが、この会話を聞けば大体察してくれるだろう。
そう――シャノンの父の系列会社にコネ入社して、なんとか生計を立てているという感じだ。
内定取り消しの憂き目に遭っていた僕に、シャノンは手を差し伸べた。元凶は完全にあっちだが。
ただ、希望していた職種では無く、且つ複雑な気持ちではあったが、仕事自体にはやりがいを感じている。
おかげで役職とまではいかないが、リーダーの肩書くらいまでは出世できた。
そこだけは感謝しなければいけない。
「あら、楽しそうな話をしているわね?」
「あっ、箱崎部長。お疲れ様です」
「お疲れ様。この人の下で働くと苦労するでしょ?」
「いえ。尊敬する先輩ですよ!」
「だって。よかったわね?」
「……え、ええ。そうです、ね……」
社内なので、一応敬語である。
「それじゃ、俺はこの辺で」
「ん、ああ。書類、ありがとう」
自分のデスクへと戻っていく部下を見遣った後、仕事に戻ろうとすると、シャノンが囁くような声で話しかけてきた。
「ねぇ、今週の繁忙期が過ぎれば余裕出来るでしょ? 久しぶりにデートしましょ?」
「えっ……でも僕はゆっくり休んで疲れを取りたいんですが……」
「……は?」
始まった。
あの、汚泥のような瞳と黒々としたオーラは、健在なのである。
「何? 私というものがありながら、浮気してるの? ねぇ、ねぇ……?」
「し、してないよ……あっ、いや、してませんよ……」
「許せないわ。もうこうなったら、絶対デートしてやるんだから。最低でもお泊り旅行はしてもらうわよ……」
話を聞かなくなるのもまた、そのまんまである。
「ずっと一緒だからね。斗真。私の大好きなdarling……」
昔隣に住んでいたハーフ美女がヤンデレ化してグイグイ迫ってきます! トウカ @keikato0311
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