たい焼きが泳ぐならエビフライも泳げ
九十九語 矢一
お前も泳げるだろ
親は仕事が忙しい。
だからいつもお昼を前日に買っておいてくれる。
今日のお昼のお供はエビフライだ。
その時大海瑛太の頭に電撃が走る。
俺はエビフライを手で握りしめ家の横の用水路に落とす
「泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ」
俺は呪文を唱えるように願う。
「泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ」
「何してんのよ、怖いんだけど」
隣の家から俺の様子を不思議そうに覗き込んでくる幼なじみの七瀬心。
「心、お前は知ってるか?泳げたいやきくんを」
そうだ、俺はあの時、エビフライを見た時思い出してしまったのだ。
たい焼きは泳いでいたことを
「それで?何故そこで泳げって叫び続けるのよ、怖いわよ?」
「だってよ、たい焼きは泳ぐんだろ?なのにエビフライは泳がないなんておかしいじゃないか」
はぁと心が呆れたようにため息をつく。
「きっとエビフライは泳がないものなのよ。」
「いや、絶対いける心も一緒に願ってくれよ頼む」
俺は心を用水路に呼ぶと2人で叫ぶ
「「泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ泳げ」」
夏の太陽がジリジリと俺たちを照りつける。
「バカみたい」
心は俺にそう言い残して家の中へと戻っていく。
俺の元に残ったのは用水路の中でしなしなになったエビフライだけだった。
たい焼きが泳ぐならエビフライも泳げ 九十九語 矢一 @Alice__0420
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます