恋に不器用な少女が全力で告白したらこうなった

かいんでる

不器用少女が全力で告白してみた

「校舎裏まで呼び出して悪かったな」

幸介こうすけだから来てやった」

「早速なんだが、姫乃ひめのに頼みがあるんだ」

「聞いてやる」

「お前、愛里えりと中学から仲良いんだろ。俺、あいつと付き合いたいんだよ。ちょっと協力してくれないかな?」

「心の奥底から嫌だ」

「いいじゃないか。ちょっと手伝ってくれるだけでいいからさ」

「全身全霊で断る」

「なんでだよ!」

 

「わたしが幸介のことを好きだからだ」

 

「何を言ってらっしゃるのですか?」

「聞こえなかったか? 幸介のことが好きだからだ」

「ちゃんと聞こえてたわ!」

「じゃあ何で聞くんだ?」

「姫乃がおかしなこと言い出したから」

「好きだから好きと言った。どこがおかしいんだ?」

「もういい。相手してられん」

「待て。まだ返事をもらってないぞ」

「追っかけてくるな!」

「返事を聞くまで追いかける」

「全力で逃げ切ってやる!」

「わたしから逃げられると?」

「くっそ〜、こいつ長距離の選手だった……」

「とりあえず止まって話をしないか?」

「俺が必死で走ってんのに、なんでお前は無表情で俺より早いんだよ!」

「実力の差だな」

「頼むから諦めてくれー!」

「そうはいかない。ほら、つかまえた」

「シャツ引っ張るな! あっ、シャツ破れたじゃないか!」

「それはすまない。わたしのシャツも破ってくれ」

「そんなとこ誰かに見られたら通報されるわ!」

「しかし、それではわたしの気がすまない」

「もういいから帰してくれ」

「そうだ。シャツを脱いで渡そう。それなら心置き無く破れるだろう」

「ばか! こんなとこで脱ぐな!」

「ここだとダメなのか? じゃあ今から幸介の家に行こう」

「そう言う意味じゃねえよ!」

「ん? 彼女が自分の部屋で服を脱ぐと嬉しいのだろ?」

「いつ姫乃が俺の彼女になったんだよ!」

「返事がないから」

「じゃあ返事してやる! 俺は姫乃のことを好きだと思ってない!」

「嫌いなのか?」

「いやいや、嫌いって訳じゃない」

「なら可能性はあるんだな」

「数分経ったらお前の記憶は消えるのか? 俺は愛里と付き合いたいって言ってましたよ?」

「それは無理だから諦めろ」

「そんなもん分かんねえだろ!」

 

「愛里はお前の親友と付き合ってる」

 

「はい? なんて?」

「愛里は秀二しゅうじと付き合ってる」

「えっ……うそ……」

「親友なのに聞いてないのか?」

「たったいま親友じゃなくなったよ」

「理解したか?」

「いや、待て。それは本当なのか?」

「愛里から送られてきた写真がこのスマホにある。これを見れば分かる」

「幸せそうに抱き合ってるねえ。もう一枚の写真はキスしてるねえ……」

「泣くな幸介。わたしが居るじゃないか」

「姫乃が居てもどうにもならんだろうがー!」

「あっ、また逃げた」

「もう放っといてくれ!」

「彼氏が泣いて全力疾走してるのを放ってはおけない」

「こんな時はそっとしといてくれるもんだろ! それとっ! どさくさに紛れて彼氏にするな!」

「もう諦めてわたしで手を打っておけ」

「そんな急に決められるか!」

「そうか。ならば特典を付けよう」

「何なんだよ特典って!」

「幸介の部屋で服を脱ごう」

「それはさっき聞いたわ!」

「いまなら、なんとキスまで付いてくる」

「そんな雰囲気のないキスしたくないわ!」

「では、本日限りの大サービス。胸もみ放題も付けよう。Dカップだぞ」

「その言い方なんか嫌だ! ちっともラブラブ感じない!」

「そこまでしてもダメなのか。流石のわたしも泣きそうだぞ」

「姫乃……」

 

「はい、つかまえた」

 

「しまったー! つい止まってしまったー!」

「ほら、わたしの胸を貸してやる。思い切り泣くがいい。泣いて忘れるがいい。Dカップは顔を埋めるのに丁度いいぞ」

「慰めるならちゃんと慰めろよ!」

「だから、わたしが彼女になって慰めてやる」

「慰めるのに彼女になる必要あります?」

「彼女が出来たら嬉しいだろ? ほら、遠慮せずにわたしの胸を借りろ」

「お、おい! 無理やり抱きつくな!」

「ほら、少しは安らぐだろ」

「ま、まぁ、ちょっと心地よいな」

「Dカップは気に入ったようだな」

「否定はしない……」

「どうだ。わたしと付き合ってみないか」

「それは……少し考えさせてくれ」

「前向きになったな。Dカップの魅力に惹かれたか」

「そんなんじゃねぇ!」

「しかし、幸介のご子息は気に入ってくれたようだぞ。私の太ももに元気をアピールしている」

「言うなー!」

「わたしに反応してくれたのは嬉しいことだ」

「普通の女子ならビンタして立ち去るシーンだぞ」

「わたしは本気で幸介のことが好きなんだ。だから、これは嬉しいことなんだ」

「そんなもんか?」

「そんなもんだ」

「分かったよ。姫乃は本気で俺のことが好きなんだな」

「さっきから言ってるじゃないか」

「言えばいいってもんじゃないだろ」

「言わなきゃ伝わらん」

「もうちょっと雰囲気とか、タイミングとか、そう言うの考えろよ」

「不器用ですまん」

「まぁ、それが姫乃らしさか」

 

「じゃあ、返事待ってる。付き合うなら結婚前提で」

 

「なんか条件付いてきたよ! 結婚とか言われたら重いよ!」

「本気で好きだから。幸介以外と結婚なんて考えられん」

「そこまで想ってくれてんのか」

「想ってる」

「分かった! 真剣に考える。だが! 必ずいい返事が貰えると思うなよ」

「あぁ、ありがとう幸介」

「ちゃんと笑えるじゃねえか。姫乃は笑顔の方が可愛いぞ」

「惚れたか?」

「調子にのるな」

「これからは、幸介の前では笑顔で居よう」

「無理しなくていいよ」

「無理ではない。幸介の前なら、自然と笑顔になれる気がする」

「その笑顔を毎日見れるなら、付き合うのも悪くは無いな」

「もれなくDカップも付いてくるぞ」

「それはもういいから! 恥ずかしいと言う言葉を知らんのか」

「恥ずかしいぞ」

「そうなのか?」

「幸介に好きになってもらいたくて頑張っている」

「姫乃、可愛らしいとこあるんだな」

「惚れたか?」

「あぁ、ほんの少し惚れた」

「なら頑張った甲斐があった」

「俺、姫乃の事ちゃんと見るよ」

「脱げばいいのか?」

「その見るじゃねえよ!」

「見たくないのか……」

「落ち込むなよ。見たくない訳じゃないから」

「本当か。見たいんだな?」

「見たくても見たいとか言わないから!」

「二人の間で隠し事は無しだぞ」

「こう言うのは普通隠すから!」

「わたしの前では隠さなくていい。全て受け止める。わたしは、自分の気持ちは隠さない」

「確かに隠してないな。少しは隠した方がいいような気もするが」

「幸介に嘘はつかない。隠し事もしない。そのままのわたしを好きになって欲しい」

「ちゃんと考える」

「ありがとう」

「俺の方こそありがとな。失恋がどこかに飛んでったよ」

「それは良かった。新たな恋の始まりだ」

「始まるかどうかは分からんがな」



 

「パパ起こして来てくれるか?」

「はーい!」

「さすがわたしの娘。いい返事だ」

「パパー! 起きろー!」

「ぐはっ! 朝からお腹にダイブしないでくれ……」

「パパ! 早く起きろー!」

「分かった分かった! もう起きたからお腹の上で暴れるな!」

「やっと起きた!」

「とっくに起きてたわ! ったく、だんだん姫乃の行動に似てくるな」

「ママー! パパ起こしてきたー!」

「良くやった」

「おはよ……」

「おはよう。幸介」

「ママは、パパといる時しか笑わないね」

「パパのことが好きだから、自然と笑顔になるんだよ」

「朝から子供に恥ずかしいこと言うなよ」

「本当のことだから仕方ない」

「ママの笑顔好き!」

「パパも、ママの笑顔好きなんだよ」

「だから、朝から何言ってんだよ」

「パパのお顔赤いよ?」

「赤いねえ。パパどうしたのかなあ?」

「いいから早くご飯食べるぞ!」

「ねえ、幸介」

「なんだ?」

「わたし、幸せだよ」

「なんだよ急に」

「ありがとう」

「……俺も幸せだ」

「パパとママ、顔赤いよ」

「赤くていいのよ。幸せの印だから!」

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