Chapter2 第12話 恵壊の精
あれから数日、この心恵中央要塞での生活にも慣れてきた。澄みわたる空気!市街地に溢れる活気!居住エリアの心地よさ!皆希と心愛のコント!なんて住み心地がいいんだろう。
心愛「琴音、私達はコントをしてるんじゃないの。」
皆希「てっきりコントかと思っていたぞ。返しが完璧だからな。」
心愛「やかましい!あんたは黙ってて!!!」
皆希「ここは褒められて照れるところじゃないのか?」
心愛「ちっとも嬉しくないわ!!!」
琴音「おーいコント始まったぞー」
心愛「少しは私の味方をしてーーー!!!!」
とまぁ、この部隊(?)も大きくなり、日に日に賑やかさは増していってる。まあ賑やかさの原因はだいたいこの2人だけどな。
琴音「今日なにかやることあったはずだがなんだったっけ?」
晴瑠人「会議室1に集合だ。何やら事件でも起きたみたいでな。」
あぁそうだった。2人のコントを聞いていたらすっかり忘れていた。んで...えーっと、確か会議室に行く前にやりたいことがあったはずなんだけど...えーっと...あ、思い出した!
と、私は足を早める。最近近くにできたお肉屋さんでコロッケをもらって朝ごはんにする。今日は作るのめんどくさかった。別にいいっしょ、近くにお店いっぱいあるし。事前に今日は作らないって言ったし。
コロッケ片手に会議室に向かい、席に着く。皆希には先を越されたけど2番目に早くついたみたいだな。
皆希「会議室での飲食はお控えください。」
琴音「この前ここで心愛がなんか食ってたけどいいのか?」
皆希「いや、ただ言ってみただけだ。なんか会議室って食べ物食うなってイメージないか?」
琴音「いやまあ分からんでもないけど。冷やかしならやめろよな。私達はこういう体質なんだからさ。」
とまあそんな話をしているうちに続々と入ってくる。あ、そうそう。要塞を発見したのと同時に真心達がここに住むことになった。部隊としては別だから情報の共有くらいしかしてないけどな。だから今日この会議にあの4人は参加するそうだとよ。
真心「んで皆希。集めたのはあれか?この間提示した妖精の件。」
皆希「そうだ。まあ、順を追って説明するから待て。まず...全員いるか?」
全員、ちらっと周りを見る。うん、欠けてるのはいないな。全員出席だ。
皆希「それじゃ、説明するとしよう。この間、コミュニケーターに送られてきた情報に興味深い内容があった。それは、トライデントを持った妖精が近くの森で心恵人を見境なく襲撃しているという内容だ。情報提供者はこれを、壊恵の精と呼んでいたな。」
琴音「妖精って輪環内だろ?誰かを殺すことができない種族、しかも同じ輪環内の人を襲撃する意味はあるのか?」
皆希「そこなんだよな。私も目を疑ったが…間違いなく妖精との事だ。透き通る羽を使い飛翔する姿が確認されているし、妖精の笛も持っていたとの事だ。」
琴音「要はそいつを討伐して理由を聞こうってこったろ?」
皆希「察しがいいな。いかにも。戦闘不能になるだけなら戦闘経験として無視するが、妖精にやられた心恵人は半数ほど、そこを通りかかった盗賊に殺されるとのことだ。」
心愛「ってことは妖精と人間が協力している…?」
真心「利用されてるんじゃないか?人間が俺らと協力するなんてことは無い。精神操作やら、デマでも流せば輪環の中の生物は簡単に利用可能だ。」
利用…ねぇ。人間が私たちに敵意を持っているなら、確かに協力するというのは考えにくいけど…もしその妖精がもともと私たちに恨みを持っていたとしたら?そこに人間がつけ込み、殲滅作業の最後の一工程を人間が行っているとしたら…妖精を討伐する目的は、また違う目的になる気がする。
琴音「兎にも角にも行ってみないことには分からなくないか?」
皆希「行くならば地図を渡そう。そうだ、カシミヤ一行。君達には協力者が居ないか探って欲しい。実は持っている武器や髪の色に関して一致しない情報があるのでな。琴音達一行は、森に向かい情報収集、できれば討伐をお願いするよ。安全確保の為に、私の小型機と向かわせる。レティシアはこちらに同行してくれたまえ。」
カシミヤ「承知。」
レティシア「了解しました。」
私たちの、初めての任務がスタートだ。
旅路 @tsumugi289
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