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 宮理の攻撃が続いた。総合先端未来創世は何とか守っている。

 14点差まで。監督はそう言ったが、かなりの苦しいラインだ。松上は必死にタックルをしながら、考えていた。

 前回の対戦では、10点しか取れなかった。一気に大量得点できるような相手ではないのだ。

 強く当たる。正直、けがの再発は怖い。それでも監督は、万全の状態になるまでの期間を考えて待ってくれた。決勝戦は、なかったかもしれないのだ、それでも仲間たちのおかげで、試合に戻ってくることができた。

 瀬上にも感謝している。フォワードは経験があるとはいえ、きつかっただろう。

「出る!」

 ボールがバックスに回される瞬間、松上が叫んだ。空気でわかったのである。総合先端未来創世のメンバーが、素早く対応した。ボールを受け取った直後に、瀬上が激しくタックルする。

「ノットリリースザボール」

 相手が、倒されたにもかかわらずボールを手放さなかった。反則だ。

 総合先端未来創世は、ボールを取り返した。



「星野監督ならどう見ますか?」

 試合開始10分。ベンチ外の相模が、同じくベンチ外の星野に尋ねた。星野がいるのは、前試合までは松上がいた場所である。

「苦しいね。荒山さんが球の出しどころに困ってる。相手の出足が早いから」

「梅坂よりも?」

「かなり早い」

 隣で相模がうんうんとうなずいていた。今日はこの三人が登録メンバーに入っていなかった。

「攻略法はありますか?」

「俺なら……カルアにライン際に蹴らせたいな。バックスを動かしたい。でも、相手のキックもいいんだよな」

「ほほう、星野監督の見解はそうですか」

「わっ、マジ監督」

 鹿沢は不敵な笑みを浮かべた。

「マジ監督暇だから来てみた」

「いやいやそんな……」

「荒山が足を痛めている」

「えっ」

「二人には負担をかけてしまった。思った以上にきつい作戦だったな」

「そんな……」

「テイラーも含めて、全国では三人でうまくやっていく方法を考えないとな」

 全国、という言葉の響きに星野ははっとした。宮理よりも強いチームと、対戦するかもしれない。こんなところでふざけている場合ではない。

「出られますか、花園で」

「そういうこともあるだろう。来年なら、絶対だ。星野監督やってる場合じゃないな」

 鹿沢はそう言って、なぜか相模の肩をもんだ。


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