5
宮理の攻撃が続いた。総合先端未来創世は何とか守っている。
14点差まで。監督はそう言ったが、かなりの苦しいラインだ。松上は必死にタックルをしながら、考えていた。
前回の対戦では、10点しか取れなかった。一気に大量得点できるような相手ではないのだ。
強く当たる。正直、けがの再発は怖い。それでも監督は、万全の状態になるまでの期間を考えて待ってくれた。決勝戦は、なかったかもしれないのだ、それでも仲間たちのおかげで、試合に戻ってくることができた。
瀬上にも感謝している。フォワードは経験があるとはいえ、きつかっただろう。
「出る!」
ボールがバックスに回される瞬間、松上が叫んだ。空気でわかったのである。総合先端未来創世のメンバーが、素早く対応した。ボールを受け取った直後に、瀬上が激しくタックルする。
「ノットリリースザボール」
相手が、倒されたにもかかわらずボールを手放さなかった。反則だ。
総合先端未来創世は、ボールを取り返した。
「星野監督ならどう見ますか?」
試合開始10分。ベンチ外の相模が、同じくベンチ外の星野に尋ねた。星野がいるのは、前試合までは松上がいた場所である。
「苦しいね。荒山さんが球の出しどころに困ってる。相手の出足が早いから」
「梅坂よりも?」
「かなり早い」
隣で相模がうんうんとうなずいていた。今日はこの三人が登録メンバーに入っていなかった。
「攻略法はありますか?」
「俺なら……カルアにライン際に蹴らせたいな。バックスを動かしたい。でも、相手のキックもいいんだよな」
「ほほう、星野監督の見解はそうですか」
「わっ、マジ監督」
鹿沢は不敵な笑みを浮かべた。
「マジ監督暇だから来てみた」
「いやいやそんな……」
「荒山が足を痛めている」
「えっ」
「二人には負担をかけてしまった。思った以上にきつい作戦だったな」
「そんな……」
「テイラーも含めて、全国では三人でうまくやっていく方法を考えないとな」
全国、という言葉の響きに星野ははっとした。宮理よりも強いチームと、対戦するかもしれない。こんなところでふざけている場合ではない。
「出られますか、花園で」
「そういうこともあるだろう。来年なら、絶対だ。星野監督やってる場合じゃないな」
鹿沢はそう言って、なぜか相模の肩をもんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます