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1回戦、2回戦、準決勝、決勝。今日で4戦目だ。
中学生の時、カルアは1回戦しか経験していなかった。大会も練習試合も、たいして変わらない。遠くまで行って、何とか試合を終えて、帰ってくる。
いつも、試合は点だった。次にはつながらない。それが今は、線になっている。しかも、その線はまだ先へと続いているかもしれない。
さらに、このチームは今、変わりつつある。
おそらくこれまでは、荒山と宝田のチームだったのだ。真ん中と後ろに柱があることによって、ある程度の戦い方ができていた。しかし上を目指すのには、それだけでは足りない。また、ラグビーは怪我で選手を欠くことが多い。誰かに頼りきりになるチームは苦しい。
だが、最初から宝田がいないことで、柱がない戦い方をチームが覚えた。しかも、鹿沢監督は荒山までを動かした。それができたのは、役者がそろっていたからだ。やたらと重い近堂、ステップで切り込む金田、そしてキック力お化けのカルア。
個性的なメンバーが、戦術になっているのだ。カルアにも、自分の役割というものがわかってきた。だからこそ今日も、先発を任されたのだ。
試合開始早々、カルアにボールが回ってきた。単に遠くに蹴ったりはしない。鹿沢や荒山と相談して、今日の作戦は練ってきた。
ボールを蹴るが、高さはない。とにかく速く、フルバックの前に落とす。ラグビーボールは、変則的に転がることが多い。相手がそれを手にするまでの時間に、フォワード陣が詰める。特に大した作戦ではないが、カルアのキック力があれば特別な作戦になる。
「おおっと」
だが、その作戦は断たれた。大きく手を伸ばした榊が、ボールをキャッチしたのである。
「ええっ」
それは荒山の声だった。「もし手が届いても、前に落とすはずだ」と試合前に言っていたのである。
「低すぎたか」
チームの誰もが驚いていたが、カルアだけは反省していた。
ナンバー8の榊は、そのまま走った。宮理には優秀なバックス陣がいたが、回す気配はない。一人で突破しようとする榊を、総合先端未来創世は二人がかりでタックルして止めた。そしてそこで、驚く展開が舞っていた。スクラムハーフを待たずに、高くにいたロックが駆け寄ってきてボールを出したのである。ボールは遠くへとパスされ、今度はそちらを止めに行く。すると、そこにはスクラムハーフがおり、すぐにボールが出された。榊に気を取られており、反対側は守備が薄くなっていた。宮理の攻撃は止められない。
トライ。位置もよく、キックも決められて0-7。
「してやられた……」
荒山は舌打ちをした。
「僕のミスです」
そしてカルアは、じっと榊を見ていた。
「お前のせいじゃない。あそこを取られるとは思わないから」
「でも……」
取られるとは思わなかったから、それなりの力で蹴ったのだ。全力だったら、弾いていたかもしれない。一度対戦しているにもかかわらず、榊という選手の力を測れていなかった。
「いい選手だろ。来てほしかったが、うちには今、金田が必要だ」
荒山と金田は、まだボールを触れていない一年生ウイングを見た。全く焦った様子はなく、フィールドをにらみつけていた。
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