東博多高校
1
「え、金田ちゃんが?」
夏休み初日。何人かの部員の姿がなかったが、一年生で不在なのは金田だけだった。金田と同じクラスの部員がいなかったため、今日までみな、「そのこと」を知らなかったのである。
「そうなんだよ、西木君。まさかとは思うけど……」
カルアは、後者の方を見つめた。
「いやあ、しかしそうだよなあ」
午前九時。いつもならば授業が始まっている時間である。そして今日も、成績が芳しくない生徒が呼び出されて「特別補講」が行われている。
「金田君も成績悪かったのかな。一応声をかけたんだけど断られたからさ」
一年生の何人かは、テスト前に皆で集まって勉強会をしていた。夏休みの部活に支障が出ないようにである。
「金田は特別補講って連絡あったよ」
荒山が決定的なことを言う。
「え、じゃあ金田ちゃん、明後日からの……」
「うん。二日目まで来れないって」
「早くも監督の言ったとおりに……」
チームは二日後から合宿に行く。補講にあたるとそれに行けないことは、以前から分かっていた。
「三年はゼロなんだが……」
二年生では、古龍と小川が来ていなかった。荒本の表情が曇っている。
「いるやつで戦うぞ。古龍に関しては自分の方が来れなくてどうすんだって話だが」
監督もあきれているようだった。
「みんな合流はできるんですね」
荒山が尋ねる。
「その予定だ。が、惜しいことをしたものだな」
「どういう意味ですか?」
「今回は、同じ宿にもう1チームラグビー部が泊まっている。一日目にそこと練習試合をすることになった」
「そうなんですね」
「東博多だ」
「……え?」
「すごいだろう。俺もびっくりした。菅平に行かないんだな」
菅平とは、長野にあるラグビーコートが何面もある合宿所である。
「なんで俺たちと同じところに……しかも九州から」
「毎年恒例らしい。菅平で手の内を見せたくないのか、花園も見学したいのか。とにかく、偶然うちと同じ場所、同じ期間になったみたいだった」
「東博多と……」
前年度準優勝校の名前に、荒山は正直ビビっていた。
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