10

(試合終了)総合先端未来創生高校10-0北嶺高校



 試合が終わった。一年生たちが喜びを表す中、二年生以上は浮かない顔をする者が多かった。

「不満か」

「えーと……」

 結局、荒山に出番はなかった。金田も早く下げた。上級生たちが想定していた戦い方ではなかった。

「勝ったぞ」

「そうですね」

「これが正解じゃない。ただ、宝田には背負えなかった試合だろう」

「……」

「できるだけ大人に責任を擦り付けろ。それが俺のいる意味だろう。ただ、責任を持つ覚悟でやってるから、全部説明できる。実は俺、頭いいからね」

 荒山は何も言えなかった。「この監督の下では、絶対的なレギュラーじゃないんだ」と考えると、胸の奥がざわついた。



「俺にも出番があってよかったのになー」

 西木は嘆いた。表向きは無邪気だったが、彼なりに悩んでもいた。

 金田もカルアも、交代とはいえ試合に出た。今日は、テイラーも出た。それに対して、経験者であるにもかかわらず西木は試合に出られていない。

 監督は、戦力として計算しているのだろうか?

 良くも悪くも、宝田の采配には情のようなものがあった。中学からの経験者であり、犬伏を連れてきた人間。三年生の甲が卒業すれば、レギュラーになるだろう存在。そして、一年生のムードメーカー。少なくとも無視はされていなかった。

「あの、監督」

 西木は、聞きたいことは聞いてしまうタイプである。

「なんだ」

「僕は構想に入ってなかったですか?」

「全員入ってる」

「そうですか!」

「交代枠は予定の枠と、展開の枠がある。誰かが不調だったり、けがをしたとき用の。君の出番も、あったかもしれない」

「あの、レギュラーには……」

「それは努力して」

「はい」

 西木は誓った。努力して、レギュラーになる。そして、金田やカルアとともに、花園に行くのだと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る