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蹴り込まれたボールを拾いに走る。ラグビーボールは時折、予想外の方向に転がる。能代はボールに追いつくまでに少し手間取り、焦って顔を上げた。
当然、まだ敵は遠くにいる。しかし、予想よりも迫っているように感じた。ボールを強く蹴る。タッチキックのつもりだった。しかし予想に反して、ボールはフィールドの中に落ちた。榊がそれを拾った。
そのまま榊は、前を向いて走り出した。いくつものタックルをかわす。独走状態か、と誰もが思ったその時だった。横から飛び込んだ選手が、榊に抱き着くようにしてタックルした。金田だった。対格差では大きく劣る金田だったが、上手く体を回転させて、榊の体を傾かせた。勢いが弱まったところへ、別の選手たちも集まってくる。やむなく榊は倒れながらボールを手離した。
宮理の選手も集まってくる。とりあえず急場をしのいだ総合先端未来創世は、数分間宮理の攻撃を耐え続けることになった。
「いやあ、強いねえ」
鹿沢は嘆息した。
試合開始10分。7失点に抑えているとはいえ、ほとんどが宮理の攻撃する時間だった。
あらゆる面で、宮理の方が上回っているように見えた。荒山や金田が活躍する場面も作れない。総合先端未来創世の苦戦は明らかだった。
それでも、耐えられれば何か起こるかもしれない。「1トライ1ゴール」である7点は、追いかける意識を途切れさせない点差だった。
度重なる宮理の攻撃に、ついに総合先端未来創世は反則をしてしまう。そこで宮理が選んだのは、スクラムだった。直接点が入るでもなく、陣地を稼げるわけでもないスクラム。それを選ぶということは。
自信があるのだ。
総合先端未来創世のフォワードも決して小さくはない。体重ではそれほど差がないだろう。
だが、スクラムは宮理が押し込んだ。
ボールが出て、パスが出て、走って、トライ。
「どうすんのよ、これ」
点差は、14点となった。
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