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「入れ入れ!」
荒山の声が響く。宮理のフォワードが一つの塊となって前進していた。モールである。ただ重いだけでなく、ゆっくりうねりながら斜めに進んでいた。ドライビングモールと言われる戦法だ。
促され、カルアも守りに入る。人数的には総合先端未来創世の方が多いにもかかわらず、宮理の足を止めることはできなかった。
そのまま、ラインを越える。一方的に押し切って、宮理が先制した。
コンバージョンキックも決まり、7点が入る。
「すぐ取り返すぞ」
荒山の声が再び響く。ほとんどの者は「わかっていた」ので落ち込んではいなかった。何度宮理に当たっても、序盤からやられてきた。ここからずるずると行かないことが大事なのだ。
カルアだけが、震えていた。中学生の時は、一回戦で負け続けてきた。高校に入ってからは、練習試合でも、予選でも圧勝してきた。
初めて目の当たりにする、強豪。
もちろん一年生歓迎対抗戦のときに対峙した先輩たちも、しっかり強かった。しかし一瞬でカルアは悟った。段違いで、宮理の方が強い。
「犬伏、あれに勝って全国に行くんだ。びびってる場合じゃない」
それは、金田の声だった。
「え、あ、うん」
金田の顔も、いつもとは違った。目つきは険しく、眉間にしわが寄っている。
「コンバージョン、ちょっと危なかっただろ。お前の方が上手い」
「そう? でも今日は蹴らないかも」
キッカーはずっと能代が務めていた。最近は成功率も上がっており、カルアに代わるという雰囲気はない。
「多分、そうはいかない。必ず犬伏の出番が来る」
金田は犬伏の背中を叩いた。こういう言葉をかけられるのも初めてだな、とカルアは少し感動していた。
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