2
「来ちゃったよ……」
観客はまばらだった。地区大会予選一回戦、総合先端未来創世高校の相手は乃小沢・赤村・霧下連合チームだった。15人で戦うラグビーは、一つの学校ではメンバーを集められないことも多い。地方の公立校にとっては特に、である。そんなわけで連合チームを作ることが許されている。
実力差ははっきりしている。ベスト4常連に対して、普段練習もなかなか共にできていないチーム。
ちなみに鹿沢も、連合チームで出る側だった。
「どっちかと言うと、あっち応援しちゃうよな」
鹿沢は、家から近い公立校に通うことしか許されなかった。ラグビーの強い私立校に行きたかったが、泣く泣くあきらめたのである。大学も国立に行ったため、1部リーグで戦うことはできなかった。
総合先端未来創世高校のようなチームはかつての憧れであり、嫉妬の対象だった。
とはいえ、試合を観るのは好きである。プレーするよりも好きなぐらいだった。
「どんなチームなのかね」
鹿沢は、メモとペンを取り出した。
地区大会県予選 対乃小沢・赤村・霧下高校連合チーム戦オーダー
鷲川(PR 2)
佐山(HO 3)
酒井(PR 3)
須野田(LO 2)
小川(LO 2)
松上(FL 2)
西木(FL 1)
芹川(NO8 3)
荒山(SH 3)
二宮(SO 2)
鶴(CTB 3)
犬伏(WTB 1)
金田(WTB 1)
瀬上(CTB 2)
能代(FB 2)
初めての公式戦。カルアは、ウイングで出場することになった。反対側には、金田がいる。一年生コンビとなる。
また、フランカーの西木もメンバーに名を連ねた。控えに回ったのが三年生の甲であり、自他共にレギュラーを奪ったのではないことはわかっている。カルアはどのポジションがこなせるか、西木はどれだけ使えるかが試されることになる。
カルアは、ぎこちなく集合する相手校の姿をじっと見つめていた。合同チームで出たことはなかったが、人数が足りなかったのは彼らと一緒だ。ラグビー部のことなど知らず、たまたま今の高校に入っただけで、相手校の方に何となく共感できた。
「なんとか高校から点を取るぞーっ」
円陣から、声が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます