連合チーム

1

「いやいや、どうってことよ」

「そうだよなあ」

 ベッドの上にテイラー、そして床にひかれた布団の中には相模がいた。共通の悩みを抱えた二人は話し合うべく、テイラーの家に集まっていたのだが、深夜になるまでゲームで遊んでしまったのである。そこで話し合いは、寝る直前に行われることになった。

「ずっとやってきたんだからさ。いまさらねえ」

「俺はまあ、やっぱりかっこいいし変えたくない」

 テイラーはスクラムハーフ、相模はスタンドオフ。二人とも一つしかないポジションの、三番手だった。テイラーはほぼ出番がないだろうという理由から。相模は「初心者なのにポジションにこだわっても」と言われて。二人ともコンバートを打診されていたのである。

「荒山先輩だっていずれは引退するんだしさ」

「まあねえ」

「まさか、来年はハーフの推薦取るつもりなのか?」

「そうかもねえ」

「あーやだやだ」

「そういえばあれ、かっこいいな」

 相模の視線の先には、壁にかけられた青いユニフォームがあった。

「いまさらかよ。父さんの」

「選手だったの?」

「そうさ。まあ、一年だけ。フランスで」

「すごいね」

「怪我で引退。俺はね、息の長い選手になりたい」

「頑張れ」

 二人は、徹夜で語り合うようなことはなかった。昼間の練習が、睡眠薬になっていたのである。



「先生、お話があります」

 校門を出ようとする教師に、女子高生が話しかけている。教師は眉をひそめた。

「単位?」

「えっ」

「君、見たことないからさ。欠席多すぎて相談に来た?」

 女子高生、森田は口をあんぐりと開けた後、気を取り直して真面目な顔に戻った。

「ラグビー部の、監督になってください!」

「え」

「今年から監督がいなくて。でも、学校の先生ならなってもらえるらしくて」

「はあ」

「別のクラスの友達から、先生がラグビー部だった話してたよって聞いて。お願いします!」

「あのね……俺、非常勤講師なんだよね。週二日しか来ないしさ。指導とかしたことないし」

「それでもいいんで! せめて一度見に来てください!」

「なんで君なの?」

「え」

「普通さ、主将とかが来るじゃん、そういう熱いの」

「それは……あいつらは必要と思ってないから……」

「そっか。じゃあ、駄目だ」

 教師、鹿沢は、校門を出てそのまま歩き去っていった。


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