4
そんな気はしていた。
なんとかボールを奪われなかったものの、明らかにミスだった。外に回せばトライできていたはずだ。
中学の時とは、レベルが違いすぎた。
常に助っ人ありきのチーム構成。パス回しもおぼつかない仲間。そんな中で、カルアだけが「何でもできる選手」だった。勝利なんて夢のまた夢、とにかく失点を減らし、完封をされないことが目標だった。カルアが運び、カルアが蹴る。それがチームにとって、最もましな選択肢だったのである。
高校は、そういう過去のチームは全く違う。県ベスト4の常連校。推薦で入った者もおり、スクラムハーフの荒山とフルバックの宝田は全国レベルと言われている。人数だって紅白戦ができるぐらいいる。
頼っていいのだ。けれども、頼り方が分からないのだ。
むやみやたらと蹴らないようには気を付けていた。キックを使わなくても、このチームは前に運ぶ力があるのだ。ただ、自分がボールを持った時はどうしても焦ってしまった。
「犬伏」
ボールがラインを割り、フォワードがラインアウトに向かって奔っていく。そんな中、金田がカルアに声をかけた。
「何?」
「上級生と俺のことは信用しろ。そうしたらうまくいく」
「えっ、あ、うん」
ボールが動き出す。先輩たちは、決してラインアウトを失敗しない。高く飛びあがり、ボールをつかむ。
カルアは、金田の言葉を解釈しようとした。「俺を頼れ」でも、「上級生を頼れ」でもない。試合に出ている一年生は二人。つまり、「全員を頼れ」ということになる。
頼ればいいのかー。とりあえずカルアは納得した。
前半が終わった。28-0。
「今日はとにかく、完封しよう」
ハーフタイム、荒山が皆に言ったのはそれだけだった。実際、それが一番の目標だった。
「動きは悪くない。けど、もっとどん欲にいこう」
監督代行の宝田の言葉である。その姿をマネージャーの森田が微妙な顔で見ている。
「なんだよ」
「まだ慣れてないから、変な感じなってる。こう、偉そうにしてるけど同じ高校生だし、そもそもキャプテンに選ばれてたわけじゃないし的な」
「全部言うなよ」
「あんたが偉そうにしても、似合ってるんだからもっと偉そうにして」
なんか森田さんが一番偉そうだ、とカルアは思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます