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 そんな気はしていた。

 なんとかボールを奪われなかったものの、明らかにミスだった。外に回せばトライできていたはずだ。

 中学の時とは、レベルが違いすぎた。

 常に助っ人ありきのチーム構成。パス回しもおぼつかない仲間。そんな中で、カルアだけが「何でもできる選手」だった。勝利なんて夢のまた夢、とにかく失点を減らし、完封をされないことが目標だった。カルアが運び、カルアが蹴る。それがチームにとって、最もましな選択肢だったのである。

 高校は、そういう過去のチームは全く違う。県ベスト4の常連校。推薦で入った者もおり、スクラムハーフの荒山とフルバックの宝田は全国レベルと言われている。人数だって紅白戦ができるぐらいいる。

 頼っていいのだ。けれども、頼り方が分からないのだ。

 むやみやたらと蹴らないようには気を付けていた。キックを使わなくても、このチームは前に運ぶ力があるのだ。ただ、自分がボールを持った時はどうしても焦ってしまった。

「犬伏」

 ボールがラインを割り、フォワードがラインアウトに向かって奔っていく。そんな中、金田がカルアに声をかけた。

「何?」

「上級生と俺のことは信用しろ。そうしたらうまくいく」

「えっ、あ、うん」

 ボールが動き出す。先輩たちは、決してラインアウトを失敗しない。高く飛びあがり、ボールをつかむ。

 カルアは、金田の言葉を解釈しようとした。「俺を頼れ」でも、「上級生を頼れ」でもない。試合に出ている一年生は二人。つまり、「全員を頼れ」ということになる。

 頼ればいいのかー。とりあえずカルアは納得した。



 前半が終わった。28-0。

「今日はとにかく、完封しよう」

 ハーフタイム、荒山が皆に言ったのはそれだけだった。実際、それが一番の目標だった。

「動きは悪くない。けど、もっとどん欲にいこう」

 監督代行の宝田の言葉である。その姿をマネージャーの森田が微妙な顔で見ている。

「なんだよ」

「まだ慣れてないから、変な感じなってる。こう、偉そうにしてるけど同じ高校生だし、そもそもキャプテンに選ばれてたわけじゃないし的な」

「全部言うなよ」

「あんたが偉そうにしても、似合ってるんだからもっと偉そうにして」

 なんか森田さんが一番偉そうだ、とカルアは思った。

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