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選手交代

酒井(PR 3)→根田(PR 1)

松上(FL 2)→西木(FL 1)



 後半、二人の一年生が入った。カルアを部に誘った西木と、体は大きいがスポーツ未経験という根田である。

 カルアは入部以来、この二人とは話をするようになった。西木とは同じ県出身であり、共有できる思い出も多い。根田はこれまで勝負の世界にいたことがないせいか、雰囲気が柔らかい。「トップを目指したことのない」カルアにとって、気持ちよく話せる相手なのである。

「僕も出たーい!」

 駄々をこねているのはテイラーである。スクラムハーフ三番手である彼は、まず順番が回ってこないだろう。先日も守備位置の転向を宝田から打診されたが、頑なに断った。

「テイラー君もきっとチャンスあるよ」

 カルアは励ましたが、それは本心からだった。一年生歓迎対抗戦では共に戦ったが、とても良い選手だと感じていた。口には出さなかったが、学年順では三番手でも、実力的には二番手なのではないかとすら感じていた。

 とはいえ、一番手が強すぎる。今日はともかく、公式戦ではまず間違いなく荒山が出ることになるだろう。

「ある? あるかなー、あるといいなー。とにかくみんな頑張ってー」

 テイラーはニコニコとしている。いい人だと思うが、カルアは少し苦手だった。

 彼は、勝負の世界を知っている。

 総合先端未来創世高校ラグビー部は、いいところだ。変な上下関係とかしごきはないし、それでいてちゃんと強い。きっと、これまでカルアが知らなかった「勝利の味」を何度も教えてくれる。

 でも、だからこそ。カルアは怖かった。負けるときは理由がある。負けは、当然じゃない。

 一点でも取る。それが中学時代の目標だった。勝負なんて考えたことがない。人数がそろって試合に出られたら、「僕らの勝ち」だった。

 今、勝負の世界にいる。

 それはゾクゾクすることでもあったが、ビクビクすることでもあった。

 明らかに、先輩と経験者の一年生たちはカルアよりもうまかった。カルアはキックだけはずば抜けている。しかしラグビーは走って投げて、ぶつかっていく競技だ。カルアは、そのどれもが得意ではない。

 正直、後半で交代になるのは自分だと思っていた。体がばててきている。極力キックを出さないようにしていたせいでストレスも溜まっている。

 不安で押し潰されそうなカルアの肩を、能代が叩いた。

「後半は、お前が蹴ってくれ」

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