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練習試合

佳鳴かめい学園高校戦オーダー


近堂(PR 3)

佐山(HO 3)

酒井(PR 3)

須野田(LO 2)

小川(LO 2)

甲来生(FL 3)

松上(FL 2)

芹川(NO8 3)

荒山(SH 3)

犬伏(SO 1)

林(WTB 3)

瀬上(CTB 2)

鶴(CTB 3)

金田(WTB 1) 

能代(FB 2)



 新学年になって初めての練習試合、総合先端未来創世高校ラグビー部は、1年生二人を含むオーダーでスタートした。

「結局こうなんだ」

「まあね」

 ベンチで監督の代わりを務めるのは、ケガで離脱中の宝田。その隣にはマネージャーの森田がいた。

 宝田は悩んだ結果、ほぼ最強のメンバー構成で挑むことにした。相手の佳鳴学園は近年力を付けてきているとはいえ格下。そこを相手にどれだけ差をつけて勝てるか、それを確かめたかった。

「近堂君は?」

「どれぐらいできるか見てみたいから」

 ほぼレギュラー陣で固められている中で、プロップは鷲川がベンチで近堂が出ることになった。鷲川は推薦で入ったラグビー歴の長い選手である。一年生の時からレギュラーであり、チームの中心選手でもあった。

「鷲川君むすっとしてるよ」

「後でアイスでも買ってやるか」

 実際には、鷲川も理解していた。金堂の成長は、チームにとって不可欠なのだ。プロップの負担は大きく、常に試合に出続けられるとは限らない。そして、すぐにレギュラーになれるほどの有望な1年生フォワードは入らなかった。誰かが怪我をしたときなどのことを考えても、近堂がどれぐらいできるかはチームの未来を左右する。

「50点は欲しいな」

 宝田はつぶやいた。試合が始まる。



 試合は総合先端未来創世が攻める時間が続いた。試合開始直後に立て続けにトライを決めたが、その後は相手の強靭な守備に攻めあぐねていた。

 トライの位置もよく、フルバックの能代はゴールキックを2本とも決めた。14‐0ののまま、10分ほどが経過した。

「どこで流れを変えるか」

 球を出しながら、スクラムハーフの荒山は考えていた。2トライ後の相手の守備が意外としっかりしていて、突破口が見いだせない。昨年卒業した先輩たちのことを思い出すと、何とかしてくれただろうと思ってしまう。ただ、今はこのメンバーで何とかするしかない。

 荒山は、大きくボールを飛ばした。はっきり確認できていたわけではなかったが、そこにいるはずだと思っていた。そして、ちゃんといた。ウイングの金田はボールをつかみ、ステップを切りながら駆け抜けていった。

 金田の走りは、これまで荒山の見てきた誰とも違った。上半身が全くぶれず、どこに動くのかわからない。フェイントもかけないのに、何人かあっという間に抜いていく。しかも、捕まりそうになるとパスを出す。決して一人で強引に突破しようとはしない。

 いい選手だ。なぜ、他のチームは取らなかったのか?

 スクールの先輩である星野は言っていた。「あいつはチームを破壊する」と。

 確かにきつい物言いをするし、周りともあまり馴染まないところがある。だからと言って、「破壊」までできるものだろうか。

 ボールが、カルアに渡った。経験者ということもあって「ひどい」というほどではないが、ヘタクソな走りだった。そして犬伏は、ボールを離さない癖があった。今も外に人数が余っているが、パスを出す様子がない。

「回せ!」

 荒山の声が響く。だが、その時にはすでにカルアは相手の厳しいタックルを受けていた。

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