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「森田はどう思う?」

「え、なになに?」

 部室には、二人の部員しかいなかった。宝田と、マネージャーの森田である。森田は元々女子ラグビーをしていたが、高校には部活がなかったため、マネージャーになった。

「カルアを出すかどうか」

「え、出さない選択肢あんの?」

「県外のあいつの凄さは、たぶん誰も知らない。ここぞという時のジョーカーとして使える」

「本当に使えるか、試さなくてわかんの?」

「まあ、それもある」

「それにさ、試合でこそ成長できるでしょ。宝田は焦ってるけどさ、あの子たちには来年以降もあるんだよ」

「……そうだな」

 指摘されたとおり、宝田は焦っていた。監督は解任、顧問はラグビーのことをほとんど知らない。自分は怪我、学校の名前も変わり、推薦の人数も減った。その一人も、当初獲得する予定だった県内ナンバー1選手からいろいろあって断られてしまった。

 状況が悪い。このままだと、年々チームは弱くなっていくだろう。今年が、優勝するにはぎりぎりの状態かもしれない。だから、相手の裏をかく作戦など考えてしまうのだ。

「なんか私が監督みたい」

「それもいいかもな」

「やだー、責任持ちたくなーい」

「はいはい。ただ、データ整理の責任は持って」

「はーい」

 二人は、練習試合で戦う相手校のデータを調べていた。実績的には総合先端未来創世高校の方が上である。しかし、新しいチームになったので力関係がどうなっているかはわからない。そして新しいチームにとって、「勝利する」ということはとても大事なのである。

「そうするとなあ……能代がなあ」

 宝田が本当に悩んでいるのは、フルバックについてであった。

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