仮初の君
おー
第1話
朝、目が覚めて気分が良くないことに気づく。いつものことなので考えても無駄なのだが。
もたもたしてる時間などないためさっさと用意を終わらせて家を出る。
高校2年、青春を謳歌するべき時期なのだから。
「おはよー」
そんな挨拶に声を返しながら自分の席へ向かう。
「ねえ聞いてー!昨日先輩がさー、ちょっとかたずいてなかっただけでやり直せって言ってきたんだよ。気づいたんだったらやれよって思わない!」
くだんな。
でも周りからの印象は上げるに越したことはない。
「それな。やばすぎ」
「だよね。てか課題どこまでやった。」
我ながら浅い発言に内心笑いながら返すと、すぐに次の話題へ。女子なんて所詮こんなもんだ。薄っぺらくても共感さえしてれば良いのだから。
教師が教室に入ってきて授業が始まる。偏差値が高い学校に入っていれば勉強も難しいなどと言うが、実際どこも変わらない。生徒の質だって変わらないのだ。
面白くない、かと言ってつまらないわけでもない時間をただただ消費していれば、終わりはやってくる。
「あー部活だ。もう帰れんの羨ま。じゃね。」
かわいそう。まあ関係ないけど。
毎日のように、苦痛を味わう必要のない帰宅部は楽だ。なんて思いながら帰路に就く。
結局一人でいるのが一番いいのである。
午後九時。スマホの着信音で目が覚める。乾いた目をこじ開けながら、スマホを見た私は溜息をついた。
「課題終わった?終わってたら教えてほしい…」
めんどくさ。
昔からずっとだから慣れきった話だけど。
「わかんないの?ばかじゃん」
「うーわ。傷ついた。ヒントだけでいいから!」
「きっしょ。主人公の気持ちでも考えてみたら」
「あーおけ。わかりそう!ありがと」
幼馴染の彼は頭が良くないらしい。受験期に必死に勉強してたのを隣で見て、自分も勉強できたのを覚えている。
なんでそんなに頑張っているのか聞いてみたら、
「好きな人と一緒の学校に行きたいから。」
と照れながら言っていた。
実際、入学式の日に気合を入れて学校に行っていたので、好きな人も同じ学校に行けたのだろう。他人ならまだしも、身内に近い人間の生々しい話なんて聞きたくないから、詳しくは聞いていないが。
今日は昼寝をしたから寝付けないだろう。実際眠くないし。
私は起き上がり、ブルーライトが溢れ出る画面の前に座って、ゲームを起動すると共にSNSを開く。
『だれか今から一緒にショットできませんか…?@3募集中です
!』
こんな書き方現実ではできない。遠い目をしながら返事を待つ。私は仲間もいるし、この時間は人口も多いのですぐに集まるだろう。ほらもう枠が埋まった。
ショットとは昔からあるFPSゲームだ。FPSなんてやってる女子は少ないらしいから、ちょっと女子らしくすると人が近くに来てくれて嬉しい。今の世の中女子のほうが女子のほうが楽かもしれない。こんな言い方をすると怒られてしまうが。
「こんばんは-!急だったけど応えてくれてありがとねっ」
心地良い発砲音を聞きながら、無駄な思考なんて捨てていくんだ。
仮初の君 おー @oh51
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