第2話 通りゃんせ
その村は誰一人として人が居なくいないので全く音がない。しいて言うなら井戸にぶら下がった水汲みバケツが風で井戸の柱に当たりカンカンと鳴っているぐらいだった。
そんな静かな所に村の中でも一番幅が大きい道がありその周りには家々が立ち並ぶ。そんな道の奥は薄気味悪い霧がかかっており、不気味な雰囲気があった。その道から人が三味線を持って歩いてきた。何かを弾いて歌っているらしい勉は早朝だったこともあり、眠たく何かが鳥がさえずっているな〜ぐらいの感覚でその音を聞いていた。
「通〜りゃんせ〜通〜りゃんせ〜」
「こ〜こはど〜この細道じゃ〜」
「天神、さまの細道じゃ〜」
「ちっ〜と通〜して、くだしゃんせ〜」
(※通しゃんせで検索してみたください。)
勉はその綺麗な三味線の音と彼の美声にちょっと見る気になった。しかもここは勉以外誰も居ないはずなのに何故人が居るのだろうと言う好奇心もあった。勉は物音をたてないように恐る恐る玄関に行き、扉をゆっくり開け、彼の三味線の音の方へ覗いた。するとそこには信じられないくらい綺麗な美男子が着物をきて歩いていた。まるで女の様な歌声だなあとは思っていたが、ここまで綺麗な美青年だとは思っていなかった。男ながらそのつぶらな瞳には見とれてしまい、ずっと眺めていた。
だが彼の歩く周りは何やら薄気味悪く、強く育つ雑草が、彼が歩くと枯れている様に見える。
「御用〜のないもの通しゃせぬ〜」
「この子の7つのお祝いに〜」
「お札を〜納に参ります〜」
段々と彼の曲が近づいてきて、すこし恐怖を感じ始めた。何より風の音が強くなっている気がする。勉は何かまずいと思いつつもその綺麗な歌声と三味線のいい音に気を取られていた。
「行きは、良い良い、帰りは怖い〜」
彼の奏でる曲は大きくなり。
「怖いながらも。」
三味線の音が止まり。
『通〜りゃんせ〜、通〜りゃんせ〜』
歌が終わるとすぐに彼は立ち止まり、その奥から何やら影が大勢走っている。足音が凄く大きく鳴っている。
足音が大きくなると声が聞こえてくる、いい声では無い潰したような声だ。
「突撃ィィィィイ!」
と言っている。
影の正体は透明な骸骨の兵士だった。それも昔の甲冑を着た兵士で手には剣や槍を持っていて、そんな妖怪に勉は腰を抜かし扉を閉じた。
だが彼らの目の矛先は私では無いのでは無いか?と勉は思った。
その推理は正しく扉の外で激しく地響きと突撃の声が鳴り響く、が私の横を通り過ぎるだけで扉には目もくれてなさそうである。
しばらく経ち、彼らは遠くに行った。すると
「コンコンコン」
「こんにちは。」
それは美青年の声だった。
勉は学校で恐怖の体験をしたことがあるそれは授業での事である、不審者が学校に侵入したと言うアナウンスが学校に放送され皆は大パニックになり先生の指示で扉に机や椅子でバリケードを作った事がある。そして近くにいた勉はバリケードを抑える係にされた。
不審者は勉らの教室の前まで近寄って来ており、バリケードを抑える私に、「おい!そこのガキ開けろ!」と言われた。
その時と同じ感情になった。
「私の今の行為を見ておらっしゃいましたか?」
「もしもそうなら開けてはぐたさらぬか。」
絶対に開けたら酷い目にあう、最悪殺されてもおかしくないと思い、無言を貫いどうした。
「そこに居られるのでしょう?」
「さっき私が事を済ませた時この家の扉が閉じた気がしたのですが…」
最初は優しい口調でしたが。少し口調が強くなっていきました。
「いい加減にして下さぬか。私は馬鹿ではありませぬ。おちょくるようなのであればここを強引にも開けてくれましょう。」
勉は怖かったので開けたくなかったが、今思えば私は今日の今頃死ぬ予定だったと思い。強引に開けられ死んでもいいのではと思い。また無言を貫いた。
それから数分経ち、彼は本当にいないと思ったのか、はたまた呆れたのかはわからないが、その場を去っていった。
罪よ聞いてるか。 ソングン @kyousei1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。罪よ聞いてるか。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます