夏に囚われ…

短ペン小僧

第1話 起床

太陽がジリジリ照りつける。

セミの鳴き声が鼓膜を破りそうなくらいにうるさい。

ここはどこだろう。

うつ伏せで地面に倒れていた。

目が覚めた俺は起き上がって状況を把握しようとする。

しかし、体は動かない。

口の中がジャリジャリする。

息をすると砂が鼻に入るので首を横にずらす。

首から上は動くみたいだ。


「ふぅぅーっはーーー」

深呼吸をした。


少し安心していると、小さな鳥居と小屋が視界に入った。

「神社か?」

小屋には賽銭箱らしきものとお供物が置かれていた。

奥行きがあり、何か祀られているのだろうか。

太陽が地面に反射して眩しいが、そこは影で見えなかった。


首をどうにか立てて周りを確認する。

木々が生い茂っていて遠くまで見渡すことができなかった。

ただ、あの小屋を中心に草が生えておらず、半径5メートルくらいの円が形成されているようだ。

俺はその円の内側、小屋の前にいる。


なぜ自分はここにいるのか、経緯を思い出そうとする。

小さな虫が俺の顔の前を飛び回るから、不快だ。

そう思いながらも考えを巡らす。


「虫、、、森、、そうだ!」


俺は8月6日、高校で同じクラスのレナちゃんとモリヤマと清尾山に来たんだ。

レナちゃんが道中で虫にビビりまくってた。

何で来たんだっけ、そうだった。話したこともないモリヤマが急に誘ってきて、、とりあえずレナちゃんが来るから来た。


で、崖から突き落とされたんだ。

山を登ってる途中に。


背後から急にだったから誰かはわからなかったけど、レナちゃんのハズが無い。

となると、、、


なんのために俺をこんなことに?

話したことすらないのに?

腹が立ってきた。

汗も乾ききった体から、怒りがふつふつと湧き上がる。


だが、次の瞬間怒りが恐怖へと変わった。


何かが俺の背中の上を歩いている。

体が、いや首が硬直した。


そいつは跳ねて俺の眼前にスッと立った。


キツネだった。


そいつは人語を喋った。

だが耳に入ってこない。


そいつは首に水晶をかけていて、それがあまりに綺麗だったから。




























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