主従再び相まみえる(ユニット:代行者一行&桐夜)

「総員に伝える。本艦は間もなく都市部周辺に到達する。繰り返す、本艦は間もなく都市部周辺に到達する」


 道中においてさしたる障害も無く、ゲルゼリア改、とりわけ代行者一行とスィルはエリア0にたどり着いた。

 エリア0の郊外にある、着陸出来るだけの広さがある空き地にゲルゼリア改が降り立つと、格納庫のハッチがゆるやかに開かれる。


 ハッチ前で待機していた代行者たちは、既に進む意思を固めていた。隠形を発動させており、一般人からは見られないように準備を終えている。


「行くとしよう」

「ええ。案内は頼むわね」

「当然だ。我が汝を招いたのだ、請け負う責務がある」


 代行者は神錘を取り出し、吊り下げる。


「神錘よ。我らに進むべき道筋を示し給え」


 言葉から一拍遅れて、振り子が進むべき方向に揺れ始めた。


「えっ、それ、どんな原理?」

「我がしゅによる導きである」

「ワケが分からないわよ!」


 まるで回答になってない代行者の答えを受けて、スィルがツッコむ。

 見かねたミミミがフォローを入れた。


「不思議な力……尋ねた通りの答えが出る。ついていけば、分かる……」

「はぁ……もうそれでいいわ」


 あきれながらも、スィルは言う通りにする。

 元々、「想い人リルヤと会わせる」という触れ込みで連れ出したのだ、今のスィルには従うのみであった。

 ――幸いなのは、代行者の言葉と立ち居振る舞いが宿す通り、代行者が誠実であることであったが。


 ともあれ一行は、セントラル内を誰にも見られずにひたすら歩き続けたのであった。


     ***


 場所は桐夜の拠点に移る。

 拠点であり、また特性上隠れ家同然の特性を有している居住スペースは、桐夜たちの存在を厳重に隠匿していた。


 そんな拠点にも、当然玄関は存在する。玄関の無い家など、不自然極まりないからだ。そして一般人のふりをして日常を過ごすにあたっても、一般的な通用口が無いのは悩みの種となる。毎日入れ替わる玄関代わりの活性ポータルだけを頼っていては、無駄に歩くことも目に見えている。


 最初に玄関に向き直り、意図しない来訪者の存在を察知したのは――墨崎智香の姿をしたエルピスだ。


「誰か来るな」

「またかよ」

「配達のたぐいは頼んでいないわね」


 一般的な住居に構造を寄せてあるとはいえ、基本的に隠れ住むことを目的とした桐夜たちの家。

 そんな家にピンポイントで訪れる人物など、ただ者であろうはずがない。何より、少なくとも桐夜とエルピスには、そういう人物が誰なのかという心当たりがある。


 だが、武器を構えようとする桐夜たちを制する声があった。


「落ち着け。たぶん俺の知っている者だ」


 意外にも、謎の青年……シューヤには、これから訪れる人物の心当たりがあった。


「そう、かもな……? 邪悪な気配は無いが……」


 エルピスは疑問交じりに、シューヤの言葉を肯定する。


「とりあえず、みんな隠れてろ」


 シューヤとエルピスの言葉通りであれば敵意を持たない者であるだろうが、それでも確証が持てない以上、桐夜は寧愛を含めた全員を退避させる。万が一の際には桐夜が戦闘し、3人が逃走する時間を稼ぐ必要があるからだ。


 そんな警戒態勢を取る桐夜をよそに、ドアを叩く音が響いた。

 桐夜はドアロックをかけながら、慎重に、少しだけドアを開ける。


「誰だ?」

「我が名は神錘の代行者。こちらの家に、進むべき道筋があると知り、参じた」

「進むべき道筋? 何のこと――」


 代行者の言葉の意図を理解できない桐夜が、疑問を口にしたその時。


「俺だ。待っていたぞ」

「!」




 玄関に来ていたシューヤが、代行者に気安い雰囲気で話しかけたのであった。


---


★解説

 シューヤ君の初登場エピソードはコチラ。

https://kakuyomu.jp/works/16817139558351399728/episodes/16817330648060744299


 正直「誰?」と思った方もいるかもしれないが、このエピソードからの後出しではなく、ちゃんと事前に出しているキャラなのでご安心を。

 あと、彼は有原陣営公式チートの一人。ぶっちゃけ時間異常対策目的で連れている。最低ラインとしては桐夜だけでもいいのだが、出した以上は……。

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