機は熟す寸前(ユニット:代行者一行&桐夜)
出てきたシューヤを見て、代行者はうやうやしく礼をする。
「こちらにいらっしゃいましたか、殿下」
「挨拶はいい。俺のいる場所をたどって来たんだろう?」
「いかにも。神錘が示した通りでした」
「おいおい、俺を置いてくな!」
いちおう家主らしきポジである桐夜を差し置いて話す代行者とシューヤ。そんな二人を見て、桐夜はたまらずツッコミを入れる。
「なんでここが分かった……のかは後にして。何の用だ?」
「灰坂桐夜よ。君が二度目の後悔を迎えない機は、間もなく熟そうとしている」
「どういう意味…………まさか」
桐夜は今、焦燥感を抱いている。
見透かすようなシューヤの言葉にではない。いっときとはいえ仲間であった、死神リルヤを、彼はほとんど不可抗力で置き去り同然に危険な場所へ放置し、撤退したのだ。
「…………なんでこのことを知ってるんだ」
「見えているからな。君を高みより見下ろし、何が起きているのかを掴んだ。だから俺はここに来た。そこな代行者の目印となるべく、そして君を助けるべく」
「何を求める?」
「俺たちが求めるのは“希望”だ」
シューヤが見据えているのは、桐夜の目だ。一点の曇りもブレも無い目線、しかし神としての格に近い魂をもつそれは、桐夜をして一歩後ずさりさせるほどの圧があった。
そんな桐夜の様子をさして気にせず、シューヤは話す。
「その意思宿る瞳、見事なものだ。これだけでも俺がついていく甲斐がありそうだな」
「ついてくって……あの危険地帯にか!?」
「もちろんだ」
ここまでの経緯を、シューヤはすべて知っている。
元々“希望”の力を持つ桐夜は、シューヤにとってはなかなかに目立つ存在であった。
「君が助け出したい者……リルヤといったか。そこにいるんだろう?」
「リルヤですって!?」
桐夜が助け出したい仲間――リルヤの名前を聞いた途端、飛び出してくる少女がいた。スィルである。
「貴方たち、知っているのかしら?」
「ああ、知ってるぜ。今のあいつがどうしてるのかもな」
スィルに向けて説明を始める桐夜を見て、シューヤは狙い通りと言わんばかりに、突如とした沈黙と共に微笑んでいた。
……余談ではあるが、カラクリとして、代行者が質問を出した時点で、質問に関する情報はシューヤに伝わることになっている。
時間が経つこと数分。
桐夜の説明を聞いたスィルは、ショックを受けていた。
「なに、やってんのよ……。あのバカ…………」
「そんな“バカ”を助け出したいんだろ? 俺も一緒に行くさ。元より、俺が行って助け出さなきゃなんねぇワケだったしな」
「もちろん、俺と代行者も行こう。とはいえ……」
「何だよ?」
桐夜の問いかけに、シューヤは短く答える。
「少しばかり、回り道をさせてもらう。さして時間は取らせない」
「どういうことだ?」
「これから起こる戦いに、連れて行きたい者たちがいるのだよ。いずれも
薄く笑みを浮かべたシューヤは、どこか楽しげな様子であった。
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