緊急事態発生4(FFXX本隊 vs 炎竜“青付き”)

「邪魔を、するなぁあああああっ!!」


 突如として現れた闖入者ちんにゅうしゃを見て、“青付き”は炎熱防壁の出力を上げる。

 並のアドシアならば即時熔解し、パイロットは蒸し焼きになる――だが。


「効くかそんなもん! 俺のヴェルリート・グレーセアを舐めんなよ!」


 ヴェルリート・グレーセアは設計段階で、極限環境への耐性を付与されている。その“極限環境”には、「摂氏数千度の超高熱」も当たり前のように含まれていた。


 つまり――“青付き”にはもはや、打つ手は無い。


「がぁあああああ!! 来んなクソッタレぇええええええっ!!」


 闇雲に振るわれた爪も、ゼルシオスの直感の前では無意味に他ならない。

 一振りをさらりと避けたゼルシオスは、愛機ヴェルリート・グレーセアに握らせた二刀を振りぬく!


「奥義――双天そうてん


 軌跡がX字を描くように、二刀を同時に振りぬく――それが奥義“双天”。

 全長がアドシアに匹敵する大剣は、ただ振るうだけでも強烈な破壊を生み――しかも炎熱防壁に飛び込み熱量を付与されている状態では、火傷という凶悪な追加効果を有している。


 さらに、それだけではない。


「またこの現象か。慣れたもんだけど」


 莫大な熱量を受けたヴェルリート・グレーセアは、全身にまとう装甲の一部が、血管あるいは何かのエネルギー伝達を行うパイプラインのように帯状に光り輝くのだ。


 結果として――全身から光を放つ機体と化しながら、“青付き”を撃破したのである。


「ぐぁあ……。てめぇ、らぁ……!!」


 うめきながら、無人の島へ落下する“青付き”。


「さて、これ以上は問題ないだろ。トドメ、刺しとくか」

『そうですね。艦隊各艦、主砲用意』


 ヴェルセア王国第4王女アドレーアの冷徹な命令が下される。

 同時に、ドミニア、ヴァーチア、カラドリウス、アトラス、ギガースの全砲門が“青付き”へ向けられた。


『撃て』


 “青付き”が地表に叩きつけられると同時に、再び一斉に火を噴く実弾・ビーム砲。

 蓄積したダメージと、落下の衝撃でロクな身動きが取れない“青付き”は、無防備に砲弾を浴びる。


「あぁあ、いてぇ、いてぇ……!」


 だが、それでも砲撃は止まない。

 くわえて、フレイアとヒルデがブレスの発射体勢を整える。


「眠れ。哀れな炎竜フランメ・ドラッヒェよ」

「もう、付きまとわないでね」


 同族であり下位互換たる存在に、あくまでも冷淡に告げた二人。

 既に人間側にくみしており、その上「敵対した」という事実は、二人が容赦を捨てるのに何のためらいも無かった。


「ぁ――」


 “青付き”が何かを言いかけたその瞬間、2匹の赫竜エクスフランメ・ドラッヒェの炎が全身を包み込む。

 莫大な熱量は痛みを感じさせるよりも早く、“青付き”の肉体を骨も臓器もすべて丸ごと、蒸発せしめたのであった。


「これで良し。そんじゃ、救援行くか!」




 そして、残る三首竜サーベロイ・ドラッヒェたちもまた、ゼルシオスやフレイア・ヒルデたち主力によって、灰の一欠けらも残さず殲滅されたのであった。


---


★解説

 セルフ後始末枠、その2。


 書いていて思い出したのだが、「空獣ルフトティーア」という、自主企画においては地味に関連性が高い重要な設定がある。


「今作ったろ、その設定!」とは言わせないために、“双剣使いの英雄譚”第4話のリンクをここで貼っておく。

https://kakuyomu.jp/works/16816700428569814289/episodes/16816700428840040071


 先に内容を書いておくと、このエピソードに出てくる三首竜サーベロイ・ドラッヒェの死体は重素臓ゲー・オーガンを残して完全に消滅している。

 つまりこれは、「“竜”に該当する個体であっても、空獣ルフトティーアである限りは『死んだら厄竜化は不可』ではないか」という事実になる。


 むろん、「臓器さえ残っていれば、そこから肉体を再生して傀儡かいらいに出来る」という選択肢は排除していない。

 しかしそんなことが無いように、この場で書いておく。

「『緊急事態発生1~4』における“青付き”と三首竜サーベロイ・ドラッヒェは、フレイアとヒルデによってので蘇生は絶対有り得ない」と。


 こんな重要情報を今の今まで失念するとは何という……である。

 だが、以上の旨は原作設定にきちんと沿っている以上、(出すタイミング的には最悪だが)“問題なく適用されうる”ということをご了承いただきたい。


 このため、桜付き介入予定が台無しというか、「そもそも出さないで良かった」というレベルのオチである。私としては笑うに笑えない。


 なお、アドレーア姫とライラをはじめとしたドミニアクルーは、「竜種の死体が突如消失、再出現(各種厄竜のこと)」を20時間程度の諜報で把握している状態なので、その点もあしからず。

 エリア1への予定外の長時間滞在は、思わぬ方向に利した。

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