情報整理(ユニット:FFXX本隊)

「まったく、この世界にまでわんさかいるじゃねぇか、空獣ルフトティーア


 ドミニアに着艦し、機体を収めたゼルシオスは、愚痴を短く呟く。

 女神リアの異世界召喚の副次的な影響で、本来存在しないはずの空獣ルフトティーアが大量に流入しているのだ。


「さて、どうすっかな……あいつら」

『ゼルシオス様、フレイア様、ヒルデ様、そしてゲルハルト様。ブリッジまで集合願います』


 ドミニアに迎え入れた冒険者たちの扱いについて考えていると、艦内放送が響き渡る。


「俺を名指しかよ。ほっときゃまずそうだし……行くか」


 ゼルシオスは渋々、ブリッジへ向かう運びとなったのである。


     ***


「お帰りなさいませ、ゼルシオス様」

「あいよ、ただいま。んで、帰還早々に何の用だか」


 そうしている間に、まずゼルシオスがドミニアのブリッジに到着した。


「それは皆さまが揃うのを待ちましょうか。あら、噂をすれば」

「邪魔するぞ。ゼルシオスの案内で場所は分かっていたが、それにしても見たことの無い設備ばかりだな」

「ねー。興味深いなー」


 次に、ゼルシオス……と、いつものようにくっついているパトリツィアが着く。


「やれやれだぜ。アドレーアがそう言うってこたぁ、よっぽど重要な事柄なんだろうけどよ」

「済まない、遅れた」

「ご主人様、お待たせしました」

「おう、フレイア、ヒルデ。さて、これで全員か?」


 ゼルシオスがせっつくように話すと、アドレーアはコクリと首を縦に振る。


「はい。ブリッジメンバーには既に話していますが、私とライラがまとめた、他クルーが収集した情報を伝達させていただきたく、呼ばせていただきました」


 先ほどの休息における20数時間において、アドレーアとライラはドミニア、ヴァーチア他3隻のクルーを有効活用し、現地民から情報を集めさせている。


「あー。これ、かったるくなりそうだなぁ。どっか座れる場所にしてくんねぇ?」

「ええ。ブリッジにお呼びしたのは、あくまで集合と確認の意味としてです。もちろん、場所は移しますし、ライラにお茶菓子も出してもらいます」

「そんじゃ、そうしてくれや。あんま堅っ苦しいこと嫌いなの、今さら言うまでもないだろ?」

「もちろんです。では、ついてきてくださいませ」

「へいへい」


 ゼルシオスは嘆息しながら、アドレーアの後をついていく。

 と、その途中で。


「ゼル」

「何だ、ゲルハルト」

「仮にも貴人……というか上司というか、目上の存在によくそんな言葉遣いが出来るな? ずっと気になっていた」

「あー……それか」


 ゼルシオスとしては日常的なものだったが、ゲルハルトにとっては異質なものとして映っていた。


「日常だ。それに俺は、権威だとか階級だとか、大っ嫌いなんでな。そんな俺が爵位持ちなのは皮肉だがよ……」

「ふむ……根深いというか、根源と言うか、その領域だろうな。おれの手には負えん」

「負わなくていいぜ。この気持ちがあっから、“自由”に憧れていられんだ」

自分自身たる証明アイデンティティか……。それもまた、良いな」


 自身の使命とは対極にある考えを持つゼルシオスを見て、ちょっとだけ羨むゲルハルト。

 と、アドレーアが部屋に着いた。


「着きましたわ。では、ライラ」

「はい。人数分のお茶菓子をお持ちします」


 ライラがキッチンへ向かうのを見て、アドレーアは内心で呟く。


(殿方同士の友情……素敵なものですわね。私も男性に生まれていれば、ゼルシオス様とそうなっていたのかもしれません。もっとも、今はヴェルセア王国第4王女として、そしてゼルシオス様のおんなとして生きていく……そう決めたわけですが)




 準備をテキパキと始めながら、アドレーアは内心で“もしも今の自分とは異なる性別に生まれていたら”と考えたのであった。

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