すべきことはいまだあり(ユニット:FFXX本隊)

「なるほどな。……忘れそうだから、端末にドキュメント形式で保存しといてくれや」


 1時間程度の解説を受けたゼルシオスは、情報量の多さにうんざりする。


「ライラ」

「手筈は既に」

「やってんのかよ……もう来たし」


 あまりの手際の良さに嘆息するゼルシオス。すっかり性格を見抜かれている。


「どれどれ……再チェックすっか。『竜の死骸は謎の空間により回収されるため、敵対に備えるならば完全消滅させること』、『セントラルに悪意あり』……いろいろあんな」

「保養地でしたからね。比較的、現地にいた方々と馴染める人員を送って話を聞き出しましたから」


 情報が命、なのはヴェルセア王国艦隊も変わらない。

 敢えてアドレーアとライラが砂浜に降りなかったのは、集まる情報をまとめることに専念していたからである。


「俺の動きに合わせたのかよ。やるな」

「うふふ。何年も艦長してますし、第4とはいえ生まれながらの王族ですから」


 さらに言えば、アドレーアはゼルシオスとは5年――ヴェルセア王国のそれは地球における2年に相当するが――早く生まれている。

 見た目で言えば完全にゼルシオスが年上に見えるが、実年齢は逆なのだ。


「まー、噂は分かった。火のない所に、なんて言うからな。あー、ところで……」


 ゼルシオスとしては、話の流れで言ったものである。


「あの200人の冒険者、どうなった? ちゃんと保護してんだろ?」

「はい。それは確認を取ってあります。ライラ」

「こちらの映像を」


 ライラが端末を操作すると、部屋内のモニターに映像が映る。

 ”青付き”の襲撃によるパニックで若干の負傷者が出たものの、全員大きな怪我をしている様子は無い。


「少し、いいか」


 と、ゲルハルトが口を挟んできた。


「どうぞ」

「彼らだが……このまま保護していても良いのだが、何かこう、役に立ってくれそうな気がする」

「同感だぜ、ゲルハルト。直接戦闘こそ俺らでやるが、サポートに徹してくれたら鬼に金棒な気配がプンプンするんだよな」


 ゲルハルトは、父親にベルグリーズ王国いちの名将を持つ。

 故あって自らの手で討つこととなったが、その力や知識、そして才能は、間違いなく受け継がれていた。

 そう、父から継いだ名将の嗅覚は、保護した者たちの役立て方を見抜いていたのである。


「つーて、俺は部隊指揮はそこまで得意じゃねぇからな。小隊クラスがせいぜいだ」

「得意とする領分は人により多種多様なものだ。……さて、本題に戻ろう。異存が無ければ、彼らの適性を見た上で教導したいと思っているのだが」


 ゼルシオスの言葉を聞いて、アドレーアは頷く。


「自信は十分のようですね。とはいえ、貴方はいわゆる客将きゃくしょう。全てを任せきりにするのも、王家としての在り方に反します。ライラをはじめ、信頼できる佐官さかん数名をサポートに付けますが、いかがでしょう?」

「いいだろう。信頼とは、おのれの力で勝ち取るものだからな。そして、適性を知るにあたって、一人では数が足らぬというものだ」

「もちろんボクも頑張るからねー、ゲルハルト」

「俺も、出来る限りは手助けするぜ」


 すべきことは未だあるものの、気力は十分な一同。




 かくして、彼らは何も起きていない今のうちに、保護した冒険者200名を戦力化する準備を始めたのであった。

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