鋼鉄の犬(その11)

30分ほどすると、松谷が外階段を降りて来た。

続いて、髭面の巨漢の男が小ぶりな段ボール箱を抱えて降りて来て、松谷の角ばった外国車のトランクに箱を押し込んだ。


松谷の車が発車すると、巨漢の男が工場の横に停めてあった大きなSUVに乗り込み後を追った。

2台の大きな車を、かって一世を風靡した名車とはいえポンコツ車で追うのは大変だった。

ただ、先を急がないのか、2台の大型車はあたりを睥睨するようにゆったりと走った。

漆黒の夜空に星は見えなかった。

まばらな街路灯の明かりがフロントグラスに映っては後ろに流れて消えを延々と繰り返した。


旧武蔵野街道を逆にたどって都心へ向かっていたのが、途中から池袋方面へ曲がり、魔が棲むというコンクリートジャングルのような巨大な街へと吸い込まれていった。

高層ホテルのすぐ裏に広がる歓楽街の雑居ビルに、けばけばしいネオンが毒蛇のように絡みつき、まばゆく輝いていた。

ビルの谷間の駐車場に相次いで2台の車は駐車した。

松谷は巨漢の男と工藤を従えて、JK学園のピンクのネオンの看板の下の階段を降りて行った。

どれだけの時間を待ったらよいのか見当もつかなかった。

ハンバーガーショップでハンバーグとコーヒーを買ってから車を駐車場の横に停め、ハンドルにもたれてハンバーグをかじった。


ゆうに3時間は待った。

時計が12時を回ると、それぞれの車の運転手がどこからともなく現れて車を動かした。

JK学園のネオンが消え、白いブラウスの小太りのママが先に立ち、松谷と巨漢の男が階段を登って来た。

その後ろに女子高校の制服姿の少女の姿が見えた。

まず、大型SUVが巨漢の男と工藤を乗せて発車した。

次に外国車が店の前に横づけになった。

ドアを開けてやると、いきなり可不可が走り出した。

松谷と女子高校生を乗せた車が動き出した時、可不可がもどって来て、

「沙保里さんです」

と息を弾ませながら言った。

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