第75話 2-3-1 「まさか…な、」
2-3-1 「まさか…な、」 耳より近く感じたい2
新学期早々の、片山と音波の登校時の様子は、瞬く間に噂になり、暫くは見物に来る輩も居た。
毎日一緒に登校する訳ではなかったが、約1ヶ月も経ってくると2学年の間では、次第に公認カップル扱いをされるようになる。
しかし、今年入学してきた1年の耳にまでは、まだ届いていなかった。
ーー中間テスト最終日(5/15金)
音波が帰り支度をしていると、スマホにメッセージ通知音が鳴った。
片山
「部長に呼ばれた
部室に行く
長くなるかも
音波 先に帰って」
円井
「うん、わかった」
片山からのメッセージに返信し終わったとき、左横から声をかけられる。
「円井、ちょっといいかな?」
音波に声をかけてきたのは中條だ。
「うん、いいよ? 何?」
「うん。
実は、円井に頼みたいことがあるんだ。
他の女子じゃ駄目なんだ」
音波は、中條の話を聞いてみることにした。
「取り敢えず、内容を聞いてもいい?」
「ああ勿論、実は…
今度、コスプレのイベントがあるんだけど、
一緒に組んで参加してる女の子が入院してて、
イベントまでにその子のコスチュームを完成させてあげたいんだ。
丁度、円井がその子の体型と同じだから、
衣装製作を手伝ってほしい。
その子のスリーサイズは、もう知ってるから、
合わせとか、試着とかしてくれたら助かる」
中條の話を聞いて、音波は考える。
「その子のこと、大切に思ってるんだね?」
中條は一瞬黙る。
そして、音波の肩に手を置く。
「ああ、大事だよ…。
でも俺は、円井だから頼んでる」
真剣な目で見つめられ、音波はドキッとした。
中條に、グッと肩を掴まれる。
「返事は週明けの月曜日でいい?」
「ああ、いいよ。
じゃあ、来週。
いい返事待ってるよ」
そう言って、中條は音波の肩を掴んでいた手を離し、教室を後にした。
(中條くん、相手の女の子の事をとても大事に思ってるんだ…。
でも、肩…ちょっと痛かった)
ーーその日の夜、
音波は22時を過ぎてから、片山にプライベートメッセージを送る。
円井
「片山くん、もう家にいるのかな?
今日 放課後、中條くんに相談された。
大切な女の子のために衣装合わせの手伝いしてほしいって言われた」
「凄く真剣だったから
力になってあげようと思ってる
いいかな?」
(もうバイト終わって帰ってるかな?
…あ)
「−−−−−−剣だったから
力になってあげようと思ってる
いいかな?」
[既読]
既読は付いたが、まだ片山からの返信はない。
音波は待っている。
片山………入力中
(片山くん、なんて打ってくるかな?)
片山………入力中
・
片山
「わかった」
音波はホッとする。
円井
「ありがとう
おやすみなさい」
片山
「オヤスミ」
ーー
片山の部屋
「……、」
音波には、「わかった」と返事をしたが、片山の気分はあまり良くない。
「…中條、」
(学園祭の衣装合わせのとき、
俺は女に触られるのが駄目だから、
中條にやってもらった…
大切な女の子?
特定の子は居ないって言ってた…
学園祭の後、彼女ができたのか?)
『彼女、…可愛いな
うん、いいな』
(中條のあの言葉、あれは、…どういう意味だ?)
「中條、あいつ音波のことを…
まさか…な、」
(俺が部長に呼び出されなければ、中條と話さずに済んだかな…)
嫌な気分を紛らわすために、片山はノートパソコンを開いて起動する。
そして、溜まっていたメッセージを開き、既読にしていく。
兄のバンド、DOSE.(ドース)用のアカウントに切り替える。
【Dメッセージ:56件】
「…、はぁ、」
片山はメッセージを開いては次々とブロックしていく。
(宣伝…ブロック
出会い系…ブロック
これも、これも…ブロック
鍵垢に出来ないから面倒くさい
これもブロック、これも…)
残り数件になった時、
「…あ、」
【D:Nami☆DOSE.ファン
「恋って難しい」】
(何だこれは…、
受信日は…始業式の日か)
「配置が変わったから、間違えたのか…、フッ、ドジだな」
『D:コメントを入力してください』
→「……………」
片山はカタカタとキーボードを打つ。
カチッ、
マウスで送信ボタンを押した。
【SeiがNamiにDメッセージを送信しました】
Sei☆DOSE.N
「ホント難しいね
スマホの配置
変わったから
気をつけて」
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