第74話 2-2-5 「本来は…アレが本当の」
2-2-5 「本来は…アレが本当の」 Wデート2 耳より近く感じたい2
--
4人は、昼を摂り、カラオケボックスに入る。
梶が早速曲を入れる。
「さー歌うぞ!」
「おー、歌えよ実花」
佐藤も曲を入れる。
片山が音波にタブレットを渡しながら訊く。
「音波は、どんな曲を聴くの?」
「邦楽、洋楽、どっちも聴くよ」
「へえ、そう」
音波は曲を入れ、タブレットを片山に渡す。
「片山くんは、何を聴くの?」
「俺は色々聴く。
歌が無いのも聴く。
どんなジャンルでも演奏できるように、色んな曲を聞いて耳コピしてる」
「そうなんだ」
(片山くんは、本当に音楽が好きなんだな…)
片山が曲を入れようと検索していると、佐藤が話しかける。
「成斗、
俺、久し振りに聞きたい」
「え、アレを歌うの?
あー、分かった」
片山は検索して、曲を入れた。
音波は片山が歌うのを初めて聞けるので、ワクワクする。
梶が歌い終わり、佐藤が歌い始める。
音波は佐藤の選曲に驚く。
アニソンだからだ。
「佐藤くん、アニソン聞くんだ」
音波が言うと、梶が歌っている佐藤の代わりに答える。
「啓太、アニソンとか結構知ってるよ。
なんかね、ギターのリフ? がカッコいいんだって言ってた」
「そうなんだ」
佐藤が歌い終わり、音波の番になる。
音波は少し恥ずかしそうに歌う。
それを、片山は穏やかな笑顔で見る。
次の曲を入れ終わった梶は、佐藤の肘を突く。
「片山、あんな表情が出来るんだ、意外だわ」
佐藤は少し間をおいて、言う。
「なに、本来は…アレが本当の成斗なんだよ」
「ふーん」
音波が歌い終わり、片山の番になる。
画面に映し出された選曲は、ハイトーンボイスで有名なバンドの曲だ。
片山が歌う、原曲のキーのまま歌う。
話す声は高いと思っていたが、歌う声も高かった。
音波は、再び片山に見惚れる。
(片山くん、カッコいい…//)
歌い終わった片山に、音波は笑顔で言う。
「片山くん、カッコよかった!
あんな高い声が出るなんて、凄い!」
瞳をキラキラさせながら話す音波を見た片山は、久し振りに頭の奥に鈍い痛みを感じた。
(…、)
「あー、ほら、音波も曲入れて。
梶がどんどん入れてる」
片山はそう言い、タブレットを音波に渡す。
「うん」
音波は素直に曲を検索して入れる。
4人はいろんな曲を歌った。
佐藤が男パートを、片山が女パートを歌ったゲーム曲等、遊びで入れた曲もあったりで、楽しい2時間はあっという間に過ぎた。
店を出ると、外は大分暗くなっている。
佐藤がみんなに言う。
「明日学校あるし、そろそろ帰るか」
梶が返事をする。
「うん、そうだね」
「じゃ、駅にむかいますか」
音波と片山も頷く。
歩きながら、片山は3人に頼む。
「今日ウィッグの店で撮った写真、自分のをSNSにアップするのはかまわないけど、俺のはアップしないで、頼むから。
兄貴に迷惑をかけたくない」
梶が即答する。
「しない、しない。
身バレとか怖いじゃん、直ぐに拡散されるしさ」
佐藤も頷いて言う。
「そうだな、でも数年後の自分の姿を想像したりして、楽しかったな!」
音波は言う。
「大学生になったら、色んな髪型したいな。
私、生まれつき髪の毛がウェーブかかってるから」
梶が頭を抱える。
「アタシ、大学行けるのかな? この頭で…」
「今から頑張ればいいっしょ。
何なら勉強付き合うし」
と言って、梶の頭をポンポンと優しく叩く佐藤。
あはは…
駅に着いたところで、音波たちは別れる。
「じゃあ、また明日ね」
「ああ」
「気を付けて帰れよ」
「りょーかーい」
こうして、初めてのダブルデートが終わった。
音波と梶を見送った、片山と佐藤。
歩きながら佐藤が片山に訊く。
「どうだった? 初デート」
片山は、顔を少し上に上げて言う。
「ああ、楽しかった。
普段よりも時間が経つのが早く感じた」
「そりゃあ良かった。
次は2人でのデートだな」
「え、」
片山は佐藤を見る。
「成斗、お前来月、誕生日だろ?
デートに誘えば?」
「あー、」
「大丈夫だって、円井はベタベタしてこないタイプだから。
それに、クラス別れて会ってる時間減ってるんだし。
恋人同士なんだから、デートしないでどうすんのよ?」
片山は、不安そうで悲しそうな顔になる。
「…、考えておく」
片山の表情を見て、佐藤は言う。
「成斗、あんまり構えるな、」
「分かってる、…」
片山は目線を下に下げて言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます