第69話 2-1-5 荷物
2-1-5 荷物 耳より近く感じたい2
ーー新学期二日目、午後(4/8)
ピンポーン
片山が学校から帰宅後、直ぐにインターホンが鳴った。
片山はモニターを見る。
(宅配業者か?)
「宅配です。片山さんのお宅で間違いないでしょうか?」
「今、開けます」
片山は玄関に行き、ドアを開ける。
配達物は、段ボール箱が数個。
届け先氏名は兄で、送り主は…親戚。
(兄さんがよく繋いで話してる人だ)
品名を確認する。
片山は、荷物が届いたことを兄に伝えるため、スマホに文字を打ち、送信する。
数分後、兄の大智から電話が掛かってきた。
プルル…、プッ
[もしもし、成斗?
お前、今週の土曜日、空いてる?]
「あー、うん、空いてる。
何で?」
[届いた荷物、
あいつ、お前に会いたいって言ってるし]
「え、画面で会ってるし」
[まだお前に直に会った事無いから、会いたいんだって]
「あー、そう、わかった」
[一人暮らし初めてだし、親戚の住んでるとこ、お互いに知っとかないと、何かあったとき困るから。
お前も場所、覚えとけよ。
荷物、4,5個だろ?
家具とか男手必要だし、人手多いほうがすぐ済むから]
「あー、わかった」
[大丈夫、接触しないように俺が間に入るから、一応お前も気をつけといて]
「…、わかった」
[帰ったら、当日の段取りとか詳しく話すから。宜しくな]
プツッ
「…、」
(俺は、兄さんの頼みは、どんな小さなことでも断らないから…)
ーー土曜日、親戚のマンション
「ほーんと助かっちゃったぁ、ありがと
セイちゃんも修さんも有り難う」
修が言う。
「デカいアンプに比べたら、こんなの軽いって」
大智が言う。
「バイトは軽いトレーだけどなw」
修が言う。
「いや、グラスとか皿とか乗せたら、重いよ?」
片山が尋ねる。
「この段ボール、どうするの?」
「あ、それ? 大智のところに置いといてもらえないかなぁ」
大智が訊く。
「何で?」
「ちょっと古いから。
大智のとこ、置くとこ余裕あるでしょ? 納戸もあるし。
ここ、大智のとこより狭いからさ、一個くらいいいでしょ?」
大智は承諾する。
「まあ、一個くらいなら置いといてもいいけど?」
「やったぁ。ありがと大智!」
そう言って、大智に抱きつく。
「うわっ、そんなに大げさに喜ばなくても…、
たかが段ボールひとつで//」
大智は、よろめきながら抱き留める。
修が二人を見て言う。
「なんか暑いぞこの部屋」
大智が誤解を解こうとする。
「そんなんじゃないって、ただの親戚//」
「そうそう、親戚なの」
「そうなの? ナル」
いきなり修に話を振られた片山は、
「あー、知らない」
と答えた。
「ねえ、みんなのお陰で早く済んだから、ご飯食べに行こうよ」
この誘いを片山は断る。
「あー、俺はちょっと無理」
「ええ、どうして?」
ここで修が片山を助ける。
「ナルは今から俺と大学で特訓するから。
大智と食べに行けば?」
「え? 何で? 俺、特訓なんて聞いてない」
大智は驚く。
続けて修は言う。
「ナルは俺の車で送るから、大智はナルが乗ってきたバイクで帰って来いよ」
「…え、何で」
修は大智に小声で言う。
「ナル、外で食べるのキツイだろ?
俺がこのまま送ってやるから、大智はゆっくり親戚の相手でもしとけ」
「修…」
片山は言う。
「修さん、ありがとう。
じゃあ、もう帰っていい?」
「ほーんと音楽が好きなのねぇ。
セイちゃん修さん、また今度食べに行こうね。
あ、セイちゃん、コレよろしくね!」
そう言って、段ボール箱を指さす。
「成斗、修、ありがとな」
大智の言葉に修が言う。
「おう、次は大智、お前の特訓だなw」
「…、」
ーー
親戚のマンションを出て、修の車まで移動する2人。
片山は言う。
「俺、バイクで来ててよかった。
車に乗ってるだけじゃ、ココ覚えられない」
修が車のドアを開けながら言う。
「じゃあ、今のうちに場所、登録しとけば?」
「ん、そうする」
片山は、スマホを操作した。
「じゃあナル、送るよ」
「修さん、さっきは助かった。
あの人、グイグイ来そうだったから…」
片山は助手席に乗り込む。
「そうだなw
ナルにはオトハちゃんが丁度いいかもな!」
片山は、いきなり音波の名前が出て焦る。
「修さんっ、何で音波の名前が出てくるの!///」
修は…解った。
「おや、否定しないという事は?
やっとナルにも彼女が出来たのかー」
片山は、右手を振りながら言う。
「もういいから、早く送ってください//」
「はいはい、了解了解っと」
修は車を発進させた。
運転しながら、修は片山に訊く。
「ナル、お前最近、よくスタジオに入ってるみたいじゃないの。
店長から聞いてるぞ、啓太と他にあと1人、3人で入ってるって」
片山は下を向いて言う。
「あー、ただ遊んでるだけ。
DOSE.(ドース)のサポートは優先するから、大丈夫」
「大智は昔から、ナルの事を最優先にしてきたからな。
お前の”精気を奮い起こす為”に、音楽にドップリのめり込ませたからな」
「…兄さんには感謝している、2月は…申し訳ないと思ってる」
運転しながら、修は言う。
「2月? あの時はぶっ倒れるほどお前の事酷使して、俺たちの方こそ悪かったよ。
まあ、ナルが居てくれたお陰で、バンドも続けられて、大智も音楽から離れずに済んだから、俺はナルに感謝してる」
「修さん、」
「俺たちみたいにメンバーが抜けたり入ったりしないで、5年も変わらないのは稀かどうかは分からない。
短い間でもいいから、ナルも自分でバンド組んでみれば?
バンドの形なんて、色々だろ?
足りてないパートは助っ人入れてライブすればいいんだよ」
片山は、手をヒラヒラさせながら言う。
「バンドは…組まない、俺が何処かの助っ人で入るくらいでいい。
俺、音楽以外で優先することが、あるから」
修は片山をチラ見しながら、ボソリと言う。
「まあ、そうだな」
修は考える。
(大智とナル、両方が依存しちまってる、どうにかしてやれないもんかねぇ、)
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