第70話 2-2-1 「成斗、俺はアイツを…」

2-2-1 「成斗、俺はアイツを…」 耳より近く感じたい2


ーー音波の家(4/12)


 音波は、4月2日の事を改めて思い返していた。


(片山くんの話、想い、色々聞かせてくれた。

 沢山、教えて貰った…)


「だけど、片山くんのお兄さんの言葉が気になる…」


『この間君を送ったときに話したよね。

 今回は”当たり”だったって』


『君が見た成斗の症状はアレだけじゃない。

 時に出方が変わるから、

 その時は直ぐに俺か啓ちゃん_啓太に連絡して、いいね』


(保健室で片山くんは言ってた、)


『…夢なら、出来るのに』


 保健室で片山に抱き寄せられた時は、音波の身体は寝ている片山の胸の上だった。


 2月の片山の家では、音波の身体がベッドで寝ている片山に密着して、体を起こそうとした時に、症状が出た。


 過度の密着、抱きつかれるのは駄目なのか?


「私からは、抱きしめられないのかな…」


 片山は音波の事を、ふんわりと包み込むように、優しく抱きしめる。

 音波からは、閉じ込められた時の1回だけ。


 音波は考える。


「もっと片山くんの事を知りたい」


 音波は、片山の時間が取れる時に、訊いてみようと思ったが、思いとどまる。


「片山くんの症状が出た時って、片山くんの意識は飛んでるんだから、本人もどういう状態か分からないんだよね、多分、後で聞かされるんだ」


 中学の時に片山を助けたのは、佐藤。

 学園祭の時に片山を助けたのも、佐藤。


 佐藤は片山と、子供の頃から一緒で、親友。


「佐藤くんに訊いたほうが、一番良いかもしれない…

 そうすれば、片山くんのお兄さんが話していた、”アタリ”や”ハズレ”の意味も解るかもしれない。


 症状の出方が違う場合の対処法とか、私が聞いておかないと、知っておかないと…

 片山くんの事を、支えるって決めたから」


 音波は、佐藤に連絡を取ってみる事にした。



ーー


円井

「いきなり連絡してごめん

 片山くんの事なんだけど

 症状の出方(でかた)について

 佐藤くんに聞きたいことがあるの


 私が知っておかないといけない事が

 沢山あると思うから、

 佐藤くんに色々と教えて欲しいの


 時間が取れないなら

 チャットの通話でもいいし、

 でも、出来れば

 佐藤くんの表情を見ながら話したい


 連絡 待ってます」



--


 音波がメッセージを送った日の夜、佐藤はチャットに気付き、内容を読んだ。


「…円井、成斗のやつ、本当に全部話したのか…、中1のあの日の事も、」


(円井は、もしかしたら俺が思ってた以上に、成斗と付き合っていく上での、相当の覚悟が出来てるかもしれない…)


 佐藤は考える。


 どこから話すか、どこまでなら話していいのか…

 自分が成斗を守ってきた話まで…するか、

 成斗の兄の話は、どうするか、


 訊かれる前から悩んでも仕方がない。


「取り敢えず、円井の質問に対して答える形でいくか…

 あとは、その時の状況によっては…俺も覚悟して話すか」


 佐藤は音波宛てに文字を打つ。


佐藤

「円井 悪い 今チャット読んだ

 会って話すなら 成斗がバイトの時間帯がいい

 その前は 成斗と一緒に部活だから


 早い方がいいなら 明日話す


 16:30まで時間潰してくれるなら

 その後 場所変えて話そう

 カラオケBOXとか

 

 人の居るところでは 話したくないから


 場合によっては 話が長くなるかも

 

 円井の家、夕飯何時に食べてんの?

 何だったら 一緒に食って帰ればいいし」



 メッセージを打ち終わり、送信ボタンを押すのを…躊躇ためらう。


「……、成斗、俺は円井を信じてみる事にするぞ、」


 佐藤は、送信ボタンを押した。


 音波からの返信は、佐藤が送信した約30分後に届いた。


円井

「佐藤くん ありがとう

 時間を作ってくれて

 明日だね 分かった


 時間まで 駅の中の本屋で待ってる」


「本当にありがとう おやすみなさい」


佐藤

「おう

 しっかり寝とけよ

 おやすみ」

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