第66話 2-1-2 告白の報告
2-1-2 告白の報告 耳より近く感じたい2
ーー
モルドのバーガーショップに到着した音波たちは、店内に入り諸々注文する。
そして商品を受け取り、テーブル席につく。
佐藤はビーフと野菜増しのビッグモルドを、梶は野菜増しのモルドフレッシュを、音波はシンプルなモルドバーガーを注文した。
片山が注文したのはフライドポテトとサラダだった。
「それにしても、ここまで見事にみんなバラバラのクラスになるなんて思わなかったなー」
梶がポテトをつまみながら言う。
「本当だな…、
俺は成斗が”心配”だよ。
お前、”大丈夫”かよ?」
佐藤は向かいに座る片山を心配する。
「あー、田中と一緒だし。
まあ、”何とかする”しかない。
”上手くやる”よ」
片山は、サラダを突っつきながら言う。
「そお? 何なら昼、遊びに行くから」
片山は、隣にいる音波の方を向く。
「俺のことより…音波は人見知りだから、クラスメイトと馴染むために、暫く昼は教室で誰かと食べたら?」
音波はコクリと頷(うなず)く。
「うん、そうだね、まだ1日目だもんね」
最初の佐藤と片山の会話がよく分からない梶。
佐藤の、片山に対する過保護の理由は去年の冬に多少は聞いているが、核の部分は話せないと言っていた。
一体、片山は何を抱えているのか…。
だが、梶の疑問は次の佐藤の言葉で直ぐに頭から消えた。
音波は心配そうに言う。
「片山くん…本当に大丈夫?」
「ん…」
片山が穏やかな表情で音波を見る。
そして音波の頭をそっと撫でる。
二人の様子を見て、佐藤が口を開いた。
「なあ、お前等、もしかして休み中に何か進展あったのか?」
「えっ、」
という顔をしたのは音波だった。
顔がみるみる赤くなっていく。
佐藤は片山の方を向く。
「へ? マジで? 成斗、話せよ」
「あー…、」
「…///」
片山は、食べ終わったサラダの器に残したコーンを、意味もなくフォークで移動させる。
音波の方は下を向いている。
「…音波、啓太には報告したい、言っていい?」
「…うん、私も実花に知らせたい」
「わかった」
片山は幾分姿勢を正す。
「…俺たち、両想いに成った。
数日前、音波に"全て"話した。
それでも俺を受け止めてくれた。
…俺が前に進もうと思えたのは、啓太たちが去年計画を立てた"偶然"のおかげ。
二人とも、ありがとう」
片山は、佐藤と梶に頭を下げる。
「マジ…か、全部…そうか…」
佐藤は感激で肩を震わす。
「成斗、よく頑張ったな!」
佐藤は席を立ち、片山を抱きしめる。
「良かった…おめでとう、良かったな!」
「ああ」
佐藤のあまりの嬉しがりように梶は若干引き気味だが、それでも音波を祝福する。
「おめでとう音波。
音波の恋バナいつになるかって思ってたけど。
私なんか釣り合わないって言ってたのに、本当に片山とくっ付いたんだ」
「うん///」
約1年前に話していたダミー彼女が本物の彼女になったのだ。
「行事とかで忙しくなる前に、早速ダブルデートしようぜ!」
佐藤が元気よく言った。
「年末以来だね、3月はライブだったし。
何処に行く?」
梶が嬉しそうに言う。
音波は、みんなの顔を見ながら言う。
「そういえば、カラオケボックスで修さんバイトしてるんだっけ。
私、みんなの歌うの聞きたいな」
「あー、何だかんだで去年は結局行けず仕舞いだったもんなあ。
成斗のスケジュールは? どうなってんのよ?」
片山がスマホのスケジュールを見ながら言う。
「俺、平日バイトだから、今月空いてるのは25日の土曜と、19と26の日曜くらいだ」
音波が珍しく早く言う。
「19日にしようよ」
梶が驚いた顔をする。
「音波がすっごい乗り気だなんて、珍しいね。
そんなにダブルデートが楽しみなの?」
「えっ、そそんなじゃなくて、クラス別れたから、みんなで何処か行けるのが嬉しくて///」
音波は、誤魔化そうと思って言っているが、梶はピン!ときている。
片山と音波が両想いに成って、初めてのデートである。
嬉しく思うのは、当たり前の感情である。
梶だって、そうだったのだから、音波も舞い上がるのは当然だ。
佐藤が言う。
「じゃあ、19日の日曜に決めようぜ。
実花もそれでいいよな?」
「うん、アタシはいつでも大丈夫だよ」
「ふふっ、楽しみだなぁ」
音波は、ニコニコしながら、笑顔で言う。
それを見て、片山は微笑む。
(音波の笑顔を見るのが、一番好きだ…)
だが、両想いに成ったが故に、困難な問題や様々な葛藤と向き合い、立ち向かっていかなければならない事に、音波と片山は、まだ気付いていない。
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