season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
第65話 2-1-1 「雰囲気、変わった?」
2-1-1 「雰囲気、変わった?」 耳より近く感じたい2
美笠学園第一高等学校。
春休み中に
告白されて、私も気持ちを伝えて、両想いに成った。
春休み中に音波に全て話した。
音波は欠陥のある俺を受け入れてくれて、両想いに成れた。
4月、2年生の新学期が始まる。
ーー
始業式前に張り出された新しいクラス表から、名前を探す。
音波は1組、片山は2組、佐藤は3組、梶は4組と、皆バラバラになった。
初対面の人と話をするのに、若干緊張してしまう音波だが、1年の時は人懐っこい梶が最初に声を掛けてくれた。
今回は梶と離れてしまったが、五分の一は1年のときに同じクラスだった子が一緒なので、幾分気持ちが楽だ。
新学期初日のホームルームが終わり、音波が帰ろうとした時、グループチャットが届いた。
梶
「クラスバラバラになったから
帰りみんなで集まろうよ」
佐藤
「了解
誰かの教室前に集合する?」
梶
「音波の1組の前にしよ」
佐藤
「ほーい」
片山
「わかった」
(あれ? 片山くん、顔文字じゃない)
音波もコメントしようとしたとき、左横から声をかけられた。
「円井さん、だよね」
「え?」
振り向くと、男子が立っていた。
前髪は目が隠れる長さで、暗い印象だが、声は明るい。
「えっと、ごめん…誰だっけ?」
面識がないので逆質問する形になる。
「あーごめんゴメン。
初めて話しかけるからさ。
君、片山と佐藤と仲がいいよね。
俺、軽音部の衣装作ったんだよ、学園祭で」
音波は、去年の学園祭で見た和装を着崩した軽音楽部のステージ衣装を思い出す。
「え、あの衣装、あなたが作ったの?
凄い!」
音波は目をキラキラさせて言う。
「うん、同じクラスになったから、君に挨拶しとこうと思って声かけた。
俺、
「私、円井音波、こちらこそ宜しく」
ここで、中條が廊下に気付く。
片山が廊下の壁に寄り掛かっている。
「片山と待ち合わせしてたの?」
この問いに対し、片山だけと待ち合わせしているわけではないので、音波は答える。
「違うよ、実…」
「そうなのか」
最後まで言い終わらないうちに、中條が言葉を被せ、
「じゃあ、また明日な」
と言って、廊下の方に歩いていく。
中條は、片山に近づく。
「よお片山、久しぶり。
あれからまた、上手く立ち回ってるのかよ?」
「あの時は助かった…何とかやっている、
中條、お前本当に話してないんだな、恩に着る」
「フン、」
中條は片山の横に並び、音波を見る。
「円井と待ち合わせ?」
「音波とだけじゃない、啓太と梶も待ってる」
「へぇ、そう、
彼女、…可愛いな。
うん、いいな」
ニヤリと口角を上げる中條の表情に、片山は気付いていない。
片山の肩を叩き、中條は帰っていった。
その間、音波は急いでチャットにメッセージを送る。
円井
「すぐ教室出る」
パタパタと音波が廊下に出ると、まだ片山しか来ていなかった。
「あ…音波」
「ごめん、片山くん、待った?」
音波は自分より背が高い片山を見上げる。
(ん? 片山くんの耳が赤い…)
「片山くん、耳、赤いよ?」
「あー、…中條のせい//」
片山は、思う。
『彼女』
(今まではこの言葉を聞いてイラッとしてたのに…、今は)
「音波ー片山、お待たせ」
梶と佐藤が一緒に来る。
佐藤が3人に訊く。
「ドコ寄る?」
「アタシ、モルドのバーガー食べたい」
梶が速攻で言う。
「お、いいね」
音波は片山を見る。
「片山くんは、”大丈夫”?」
片山は答える。
「ああ、”大丈夫”」
「じゃ、モルドに決まりだな」
進級してクラスが別れても、こうやって集まれる。
音波は思った。
今年はどんな1年になるのだろうと。
4人が仲良く下校していると、1年の時に同じクラスだった男女が声を掛けてきた。
「なあに、お前達クラスが別れても一緒かよ」
「ホント仲が良いよねー」
佐藤が返答する。
「当たり前っしょ。
俺と成斗は親友だし、実花と円井もそうだし」
男子が言う。
「まあ、佐藤と梶は、デキてるしなw」
「2人は事件で有名人になっちゃったもんね」
佐藤が梶を引き寄せる。
「それ以上は言わないでやってよ。
実花が泣くからw」
梶がムッとして言う。
「何ソレ、泣かないもん!」
あははは…
佐藤と梶を見て、音波と片山もお互い目を見て、フッと笑う。
音波たちと別れた男女は、お互い首を傾げる。
「なんか、片山の雰囲気、変わった?」
「お前もそう思った?」
「うん、だって…あの片山が笑ってたよ?」
「片山の奴…、やっぱり」
男子の方は思い出す。
(バイクの話をしてた時は、ただ一緒にいるだけって言ってたけど…、
やっぱり円井の事が好きだったんじゃないか?)
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