season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~

第65話 2-1-1 「雰囲気、変わった?」

2-1-1 「雰囲気、変わった?」 耳より近く感じたい2



美笠学園第一高等学校。


円井音波マルイオトハ16歳。

春休み中に片山成斗カタヤマセイトくんは、辛い経験を話してくれた。

告白されて、私も気持ちを伝えて、両想いに成った。


片山成斗カタヤマセイト16歳。

春休み中に音波に全て話した。

音波は欠陥のある俺を受け入れてくれて、両想いに成れた。


4月、2年生の新学期が始まる。


ーー

 始業式前に張り出された新しいクラス表から、名前を探す。

 音波は1組、片山は2組、佐藤は3組、梶は4組と、皆バラバラになった。


 初対面の人と話をするのに、若干緊張してしまう音波だが、1年の時は人懐っこい梶が最初に声を掛けてくれた。


 今回は梶と離れてしまったが、五分の一は1年のときに同じクラスだった子が一緒なので、幾分気持ちが楽だ。


 新学期初日のホームルームが終わり、音波が帰ろうとした時、グループチャットが届いた。


「クラスバラバラになったから

 帰りみんなで集まろうよ」


佐藤

「了解

 誰かの教室前に集合する?」


「音波の1組の前にしよ」


佐藤

「ほーい」


片山

「わかった」


(あれ? 片山くん、顔文字じゃない)


 音波もコメントしようとしたとき、左横から声をかけられた。


「円井さん、だよね」

「え?」

 振り向くと、男子が立っていた。


 前髪は目が隠れる長さで、暗い印象だが、声は明るい。


「えっと、ごめん…誰だっけ?」

 面識がないので逆質問する形になる。


「あーごめんゴメン。

 初めて話しかけるからさ。

 君、片山と佐藤と仲がいいよね。

 俺、軽音部の衣装作ったんだよ、学園祭で」


 音波は、去年の学園祭で見た和装を着崩した軽音楽部のステージ衣装を思い出す。

「え、あの衣装、あなたが作ったの?

 凄い!」

 音波は目をキラキラさせて言う。


「うん、同じクラスになったから、君に挨拶しとこうと思って声かけた。

 俺、中條なかじょう 武瑠たける、宜しくな」

「私、円井音波、こちらこそ宜しく」


 ここで、中條が廊下に気付く。

 片山が廊下の壁に寄り掛かっている。


「片山と待ち合わせしてたの?」

 この問いに対し、片山だけと待ち合わせしているわけではないので、音波は答える。


「違うよ、実…」

「そうなのか」

 最後まで言い終わらないうちに、中條が言葉を被せ、

「じゃあ、また明日な」

 と言って、廊下の方に歩いていく。


 中條は、片山に近づく。

「よお片山、久しぶり。

 あれからまた、上手く立ち回ってるのかよ?」


「あの時は助かった…何とかやっている、

 中條、お前本当に話してないんだな、恩に着る」

「フン、」


 中條は片山の横に並び、音波を見る。

 

「円井と待ち合わせ?」

「音波とだけじゃない、啓太と梶も待ってる」


「へぇ、そう、

 彼女、…可愛いな。

 うん、いいな」


 ニヤリと口角を上げる中條の表情に、片山は気付いていない。

 片山の肩を叩き、中條は帰っていった。

 

 その間、音波は急いでチャットにメッセージを送る。


円井

「すぐ教室出る」


 パタパタと音波が廊下に出ると、まだ片山しか来ていなかった。


「あ…音波」

「ごめん、片山くん、待った?」

 音波は自分より背が高い片山を見上げる。


(ん? 片山くんの耳が赤い…)


「片山くん、耳、赤いよ?」

「あー、…中條のせい//」


 片山は、思う。

『彼女』

(今まではこの言葉を聞いてイラッとしてたのに…、今は)


「音波ー片山、お待たせ」

 梶と佐藤が一緒に来る。


 佐藤が3人に訊く。

「ドコ寄る?」

「アタシ、モルドのバーガー食べたい」

 梶が速攻で言う。

「お、いいね」


 音波は片山を見る。

「片山くんは、”大丈夫”?」


 片山は答える。

「ああ、”大丈夫”」

「じゃ、モルドに決まりだな」


 進級してクラスが別れても、こうやって集まれる。

 音波は思った。

 今年はどんな1年になるのだろうと。


 4人が仲良く下校していると、1年の時に同じクラスだった男女が声を掛けてきた。


「なあに、お前達クラスが別れても一緒かよ」

「ホント仲が良いよねー」


 佐藤が返答する。

「当たり前っしょ。

 俺と成斗は親友だし、実花と円井もそうだし」


 男子が言う。

「まあ、佐藤と梶は、デキてるしなw」

「2人は事件で有名人になっちゃったもんね」


 佐藤が梶を引き寄せる。

「それ以上は言わないでやってよ。

 実花が泣くからw」


 梶がムッとして言う。

「何ソレ、泣かないもん!」


 あははは…


 佐藤と梶を見て、音波と片山もお互い目を見て、フッと笑う。



 音波たちと別れた男女は、お互い首を傾げる。


「なんか、片山の雰囲気、変わった?」

「お前もそう思った?」

「うん、だって…あの片山が笑ってたよ?」

「片山の奴…、やっぱり」


 男子の方は思い出す。

(バイクの話をしてた時は、ただ一緒にいるだけって言ってたけど…、

 やっぱり円井の事が好きだったんじゃないか?)

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