第10話 1-3-1 「お前だから…」

1-3-1 「お前だから…」 耳より近く感じたい



円井マルイ音波オトハ 15才、高校一年生。


クラスの隠れイケメン、片山カタヤマ成斗セイトくんの笑った顔を初めて見ました。



ーー教室にて


「今度の体育祭で誰が何の種目に出るかを半分決める」


 担任が言いながら、種目を黒板に書いていく。


 右側には、主に走る種目を、左側にはその他の種目を書いていく。


「この間の体育の授業でタイムを測ったから書いていくぞー」


 100メートル走…400メートルリレー走まで書き終わる。


「名前のない者は今から配る紙に第三希望まで書いて出せー。

 書いたらこの箱に入れに来い」



 音波は、第一希望に玉入れ、第二希望に障害物競走、第三希望に狩り人競走と書き、箱に入れた。



「今から先生がクジを引いて上から順番に書いていくから、自分たちの幸運を呪え」



「ええー」



 玉入れに音波の名字が書かれた。


「良かったぁ」


 音波は、ホッとする。


 梶と佐藤は400メートルリレー


 片山は、狩人競走だった


 片山は…落胆した。



 体育祭が近づくにつれ、片山の背中に負のオーラが出て、日に日に酷くなっていく。



「…啓太、俺当日休みたい」


「何言ってんの、大丈夫っしょ」


「俺の直感が、当たるといってる」


「いやナニそれ、コワイっしょw」



ーー体育祭当日 土曜日


 400メートルリレーが始まった。


 佐藤2番手、梶3番手に選出されている。


 梶が足が速いのは意外だった。


 クラスのみんなも応援する。



 佐藤が1番を競っていたが、隣の走者に激突されて転ぶ。


 3位まで順位が下がった状態で3番手の梶にバトンを渡す。


 梶は、こけさせたクラスを追い抜き、2位まで順位を上げ、アンカーにバトンを渡す。


 アンカーが、接戦の末1位を勝ち取る。



 音波は、戻ってくる梶と佐藤にタオルや飲み物を渡しながら言う。


「ふたりともお疲れ様、実花みかの追い上げ凄かったよ」


 梶が言う。


「久しぶりに超本気モードで走った!

 佐藤のカタキはとった!」


 佐藤が後から言う。


「梶って足速いのな。

 俺コケて申し訳ない」


「男がコケて女が挽回するとか、普通逆だろw」


 クラスメイトが言う。


 佐藤が言う。


「もう言わないで、一番恥ずかしいの俺だから」


アハハハ…



 音波の玉入れ競技も終わり、イベントの狩人競走になった。


 梶が言う。


「お題、何かな?」



ーー

 片山は、お題の紙を見る。



『お題 クラスで初めて話した異性』



(やっぱり当たってしまった…)



 異性…適当には選べない。


 誰か…、クラスの方を見る。


「!」



(あ…、あいつ…初めて話した…

 あいつなら、)


「…っ!」



 片山が3組の方に走ってくる。


 奥の方に座っていた音波たちのところに来る。



「音波、来て」


 音波に手を差し出す。


「え?」


「お前だから、来て」


 片山が音波の手をとり、優しく引っ張る。


 そして…2人で走る。



 片山が音波の斜め前を走る。


 音波の歩幅に合わせて走る。


 2人の髪が上下に流れる。


 しっかりと握った手。


 だが痛くはない。



 片山の横顔を見て、"何か"に似てる…


 音波は一瞬、そう思った。



『お題 クラスで初めて話した異性』



ーー

 1着でテープを切った音波と片山。


 走り終わったあと、片山はメガネを取り、シャツで顔を拭ぬぐう。


 そして前髪をかき上げる。


 音波と目線が合う位置まで頭を下げ、音波に言う。


「あー、1位お疲れ」


 音波は、片山がメガネを外した顔を久しぶりに見た、間近で。


「う、うん///」



 運動場にいた女子たちが、ザワザワと騒ぎ出す。


 片山は、すぐにメガネをかけた。



 競技が終わり、クラスのところに戻る音波と片山。


 クラスメイトに囲まれハイタッチ。



 片山は、相手に気づかれないように、巧みにハイタッチをかわした。



 体育祭は、学年総合2位で終わった。

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