第2話 1-1-1 入学式 -この日から始まった-

1-1-1 入学式 -この日から始まった- 耳より近く感じたい


はじめ


………子供の頃の夢を見た


光の中から誰かが現れて、


私に覆いかぶさるように包み込む


そして、耳元で私に囁ささやく


『…ー、大丈夫?良かった』


『…大丈夫だから、泣かないで』


そこから視界が曇って途切れて終わる


怖いけど、何故かあたたかい


そんな気持ちになる夢


何が大丈夫なの?


何が良かったの?


何故泣いてるの?


ねえ、君はダレ?






「音波ー早く起きて準備しなさい


 入学式早々遅刻なんて恥ずかしいでしょ?」


 一階から母さんの声がする。


 のそのそとベッドの横にある台の上の時計を掴んで時間を見る。


「そうだ


 今日から電車通学になるんだった」


 ベッドから勢いよく飛び起きて、真新しい制服に着替える。


 白いシャツの上に淡いクリーム色のベストを着る。


 青のネクタイを締め、濃いグレーのブレザーを羽織る。


 スカートはグレーのチェックでギャザーが入っている。




 生まれつき少しウェーブのかかった自分の長い髪を左右に分けて、ゴムで縛る。




 鏡に映った自分の制服姿を見て、


その場で1回クルッと回ってみる。




円井マルイ 音波オトハ15歳


今日から高校一年生。


音波は右手でゲンコツをつくり、


胸を2回叩く


「よし、行こう!」




どんな学校生活になるんだろうか


どんな友達ができるんだろうか


恋だって、してみたい


好きな人は出来るだろうか


どんな人を好きになるのだろうか




そんなことを考えながら、


音波オトハは電車に乗った。

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