第2話 おばあちゃんは『校舎裏の話』を知っていた?

 家の扉を開けてすぐ、おばあちゃんの優しくおっとりした声が聞こえてきた。

「おかえりなさい、陽菜ちゃん」

「ただいま、おばあちゃん!」

 手を洗って、台所へ向かう。机の上にはおまんじゅうが置かれていた。私は一人っ子で両親が共働きだから、おばあちゃんが毎日遊んでくれるんだぁ。

「今日はあんこのおまんじゅうだよ。美味しいかい?」

「うん! とっても美味しいよ!」

「それは良かった」

 目尻と口に皺を寄せ、にっこり笑うおばあちゃん。つられて私も笑顔になる。美味しいおまんじゅうと大好きなおばあちゃん。今、とっても幸せ。今日の夜は何をして遊んでもらおうかな。・・・・・・って、違う。夜は『校舎裏の話』の調査に行くんだった。

 そういえば、おばあちゃんは清華小学校出身だったんだ。一度も清華村を出たことないって言ってた気がする。

「ねぇ、おばあちゃんは『校舎裏の話』って知ってる?」

「その話、どこで聞いたの」

「え」

 辛そうで、悲しそう。おばあちゃんの見たことない表情に返事ができなくなる。そのことに気づいたのか、いつもの穏やかな顔に戻る。

「ごめんね。その話、おばあちゃんが小学生の頃からあったんだよ。今でも残ってるんだなぁと思ってね。懐かしいわぁ」

「そ、そうなんだ」

 ちょっとドキッとした。いつものおばあちゃんに戻ったから大丈夫だよね? 気を取り直して、今日学校であったことをいっぱい話す。

 時計を見ると、あっという間に数時間が過ぎていた。おばあちゃんって聞き上手だから、いつまでもお話しちゃうんだよね。私は宿題をすると言って、二階にある自分の部屋まで移動する。

 気のせいかな。階段を上ってる途中、おばあちゃんの悲しそうな声が聞こえた。

「『校舎裏の話』、こんなに広まっちゃったのね」

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