人は誰かに惹かれる。または、誰かを惹く。
多くの女性が、主人公に惹かれて、彼もまたその魅力に抗えない。
なぜなのか?
たぶん、人と人が深く接点を結ぶ時、そこには何か共通性がある。
それは物語の核とも言える、成長ということ。苦しい思いを抱えながらも、暗い感情を抱えようとも、そのことの原因となることを恨まないようなまっすぐな強さ。その精神性が彼らを結びつけるのではないか?
多分彼らは、生きづらいから、そのように、「似た人」をお互いに呼び合う。
そんな人々の愛(欲)とやさしさと、嫉妬と……etc。
登場人物たちの人生を1人としておろそかにせず、しっかりとした輪郭と生きるヒントを持って閉じ込めた、広い視野に立った物語。
私はこの手の話が書けないので、研究のために読ませていただいているんですが、一番驚いたのは「作者」の「読者」に対する配慮です。読者が小説を読む時ってだいたい章まで読んで区切りをつけるのですが、この小説には、必ず章の初めに「あらすじ」があって、次回久しぶりに読むときに、思い出すことのできるような配慮がしてあります。そして、最後に必ず、イメージを形作りやすくするキャラクター紹介があって、非常に読みやすい作品になっていると思います。
物語は、外国から帰国した「彰」の日本へのとまどいと克服。そして、それをとりまく女性たちという感じなのですが、女の子の描写が、生々しくてリアリティがあっていいです。こういう「ハーレム?」ものって、男の都合にあわせて「女性の心理」って変わってくものなんですが、そういう「作品の都合の無理やり感」を感じられないのが、この小説の「すごい」所だと私は思います。
ということで、ちょっと「融通」のきかない「ハーレム」もの。たまにはどうですか?手に取って読んでみませんか?