人は誰かに惹かれる。または、誰かを惹く。
多くの女性が、主人公に惹かれて、彼もまたその魅力に抗えない。
なぜなのか?
たぶん、人と人が深く接点を結ぶ時、そこには何か共通性がある。
それは物語の核とも言える、成長ということ。苦しい思いを抱えながらも、暗い感情を抱えようとも、そのことの原因となることを恨まないようなまっすぐな強さ。その精神性が彼らを結びつけるのではないか?
多分彼らは、生きづらいから、そのように、「似た人」をお互いに呼び合う。
そんな人々の愛(欲)とやさしさと、嫉妬と……etc。
登場人物たちの人生を1人としておろそかにせず、しっかりとした輪郭と生きるヒントを持って閉じ込めた、広い視野に立った物語。
あらすじの紹介があったり、人物紹介のページがあったりと理解しやすい環境を作ってくださっていますが、なにより冒頭から始まる主人公の境遇に割かれた文字数が、かなりすごいです。
丁寧に心理や外見、経験している事を綴り、掘り下げが本当に深い。
細かな筆致の細密画を見るように、御話の中で人物の骨格のようなものが作られていくのを見られます。
おそらく後に関係してくるのだろう設定も散見されて、いよいよタイトルにもある少女との出会いに向けてという期待感を高めてくれます。
そしてそこに入り込んでしまえば、後はスムーズに御話に没入できてしまう。
丁寧な文章は読みやすいため、文字数に比べてハードルも高くありません。
ボーイミーツガール、という瑞々しい御話を楽しみたい方にお勧めです。
端的に言うと、デンマークから日本に来た帰国子女の彰少年が美月という美少女と出会う物語です。
美月ちゃんと他の女の子の間で揺れたり、学校での問題に立ち向かったり、恋愛に少しずつ積極的になったりとハラハラドキドキな展開が続き、また伏線の張り方も見事なので、そこも注目して頂けるとより楽しめるかと思われます!!
じれったくも青春!!を味わっている感が甘酸っぱく、読んでいてニヤニヤしてしまうシーンも多いです。
あと兎に角、作者さんが凄く読者に対して親切なんです!!
あらすじや登場人物紹介で、読者に「此処まではこういう話だよ!!」と置いてけぼりにせずに、ちゃんと確認してくれるので、誤解していた点や見逃したり忘れている部分を補ってくれています!!
私はこの手の話が書けないので、研究のために読ませていただいているんですが、一番驚いたのは「作者」の「読者」に対する配慮です。読者が小説を読む時ってだいたい章まで読んで区切りをつけるのですが、この小説には、必ず章の初めに「あらすじ」があって、次回久しぶりに読むときに、思い出すことのできるような配慮がしてあります。そして、最後に必ず、イメージを形作りやすくするキャラクター紹介があって、非常に読みやすい作品になっていると思います。
物語は、外国から帰国した「彰」の日本へのとまどいと克服。そして、それをとりまく女性たちという感じなのですが、女の子の描写が、生々しくてリアリティがあっていいです。こういう「ハーレム?」ものって、男の都合にあわせて「女性の心理」って変わってくものなんですが、そういう「作品の都合の無理やり感」を感じられないのが、この小説の「すごい」所だと私は思います。
ということで、ちょっと「融通」のきかない「ハーレム」もの。たまにはどうですか?手に取って読んでみませんか?