異能戦線

咲星

第1話 異能者


 ────20XX年

 異能者が絶滅し千年後の現代



「えーと、それでこれにより異能者は絶滅。そして現代異能を持つ人間はいなくなりましたと。おい。榊、お前先生の話聞いてたか?」 

「あ!はい!!聞いてました!」

僕は慌てて起き上がるとその衝撃で机から教科書やら筆箱やら色んなものが落ちた。

「嘘をつくな嘘を、お前最近ぼーとしてる事多いぞ。」

僕はすいませんと謝り、落ちたものを拾って席に座った。今は歴史の時間、自分の机に広げてある教科書を見て昔に存在したという異能者について考えてみた。教科書には載ってるけど、写真も無い、証言もない、あるのは痕跡だけ、そんな不確かな情報を教科書にあげる事に僕はずっと疑問を抱いている。気づいたら僕は今日の夕飯をぼんやり考えていた。んー今日の夜ご飯はカレーでも作ろうかな。

「せんせー。異能者なんてほんとに存在したんですか?」

とクラスのお調子者の男子が半笑いで聞いた。

「あー?お前それ言ったら終わりだろ、でもまあ、教科書には載ってるけど居たなんて信じてる人はほとんどいないがな」

と笑いながら答えるゴリラ。ゴリラとは先生のあだ名である。

 そうだ、今どき異能者が本気でいたなんて信じてる人は日本中探したっていない。信じてる人周りから笑われるだけ。いい加減教科書から消せばいいのに。


「あー眠いなあ」

やっと学校が終わりスーパーに寄り帰宅途中、僕はあくびをしながらカレーの材料を片手に歩いている。やっぱブレザー着てくれば良かった少し肌寒い。帰ったらまず...ん?僕の家の前に誰がいる。配達でもなさそうだし誰だ?するとその人はパッと僕の方を向き満面の笑みで

「あっ!湊くん!だよね!!」

 全部の語尾にビックリマークが付くような喋り方の人だった。

「えっ、はい。どちら様ですか?」

僕はびっくりして咄嗟に返事をした。

「やっぱ分からないよねー。うんうんそうだよね。そうだと思った!」

その人は1人で合図地を打ちながらそう言った。まるで僕と何処かであった様なそんな言い草だった。身長はもの凄く高くて多分190cm以上はあると思う。それに顔も整っていて髪の毛も綺麗な黒髪。そして右目には眼帯をしていた。

「まあさ!立ち話もなんだし家入りなよ!」

 え、ここ僕の家...なんて突っ込む暇も無いくらい忙しい人で、気づいたら家のドアを開けて僕より先に入って行った。


「わー!家やっぱ広いんだね」

とりあえず、リビングに入るように言ってその人は物珍しそうに部屋をうろうろして色んな物を漁ってる。

「あのー、とりあえず話をしたいんですけど」

我ながら、会って数分の人間を家に入れるなんてどうかしてるなと思いながら、僕は恐る恐るそう言った。その人はごめーん!そうだよねー!と言いながら反省の顔色も無く、僕が座っている反対側のソファに腰を掛け、その人はさっきよりかは真剣な顔付きで姿勢を前のめりに口を開いた。

「単刀直入に言っちゃうね。君異能って知ってるよね?」

異能...?なんで急に異能なんて

「ま、まあ知ってます。詳しい事はあまり分かりませんが。」

「そっかそれなら話は早いんだ。僕ね異能者なんだよね。」


 .....は?

 え、今なんて言った?

 い、のうしゃ?


淡々としすぎて何が起こったのか分からなかった。何が何だか分からなくて

「急になんの冗談ですか?」

僕はなんかの冗談だと思い笑って軽く流す事にした。

「もちろん本気さ。わざわざここに来てまで嘘つくような人に見える?」

見える。僕は心の中で即答した。なんて事は勿論声に出しては言えないが...。でもまあそれもそうだ...。いくら変人でも異能者だと言う冗談を言う為だけに僕の家に来るか...?いやいや、まず普通に考えて異能者なんてまず居るはずない!いやいや、そもそもこの人誰...!?!?何かの宗教か?と僕は頭をフル回転させ色々考えた結果、

「いや、まず異能者なんているはずない。」

僕はこの言葉を選んだ。でも直ぐに後悔した。普通先に誰か聞くべきだったよね...。

「いるよ?だって僕実際異能者だし。教科書にだって載ってるでしょ。異能の存在がちゃんとね」

その人は不思議そうな顔をしてそう言った。

え...?なにこれ僕がおかしいの?僕は動揺しまくっているのに、この人は当たり前でしょといいう風に返してくる。なんだかもうよく分からなくて僕はただ必死に否定していた。

「ほんとに異能者が居たとしてもそれは千年前に絶滅してるはずです。なんで急に現れてそんな事言ってきたのかは知らないですけど、そんなふざけた事に付き合ってる暇僕には無いので、とにかくもう帰って下さい」

よし...!言えた...!言いたい事を言えて少し満足気に席を立つと、その人は小さな声で

「しょうがないか...」

「え?今なんていっ、」

僕の言葉を遮って、その人は僕の目を見て話し始めた。

「榊湊17歳、千秋高校の2年2組。誕生日は11月15日、丁度明日で18を迎える。中学で友人関係で揉め、中2の秋から不登校。それから高校は頑張って勉強し、普通の公立高校に通うも、中学のトラウマからか仲のいい友達も作る事が出来ず、君の引き出しの中には退学届けが閉まってある。でもそれも出す勇気も無く1年間ずっと引き出しの中に眠っているよね。そして母親は産まれてから直ぐに亡くなり、父親も10歳の時に失踪し、行方不明。こんな所でいいか。」

その人は僕の個人情報を、足を組みながらスラスラと話した。僕は足の力が抜け、またソファに座り込んだ。

「君の事ならなんでも知ってるけどまだ何か聞きたい事ある?答え合わせでもする?」

その人は楽しそうにそう言った。

「なん、で、」

なんだ?この人は...警察?近所の人が通報した?児童相談所の人...?

「ちなみに僕は警察でも児童相談所の人でもないよ。だから安心してよ。僕は君の味方なんだから。」

ん?味方?どういう事だ...?急に家にきて異能者だのなんだの言って、僕の個人情報も全部知ってて本当に何者だ?色々な情報が頭を渦巻いて何が何だか分からなかった。

「まあ、まずは僕が異能者だって事信じて貰わないとだからー...」

と言って、その人はキッチンに入ると包丁を取りだして、自分のお腹めがけてエイ!と言い、包丁を振り下ろした。

「は!なにやってるんですか!!」

僕は急いでキッチンに走ると、刺したはずのお

腹から血がでてない。え...?どういう事...?

「異能者はね、自分の事を殺せないんだよ。それが一般人と異能者の大きな違い。まあ、ほんとは異能使って見せてあげたいんだけど、なにせ周りに何がいるか分からないからこういう形になっちゃったけど信じて貰えたかな?」

この人の言ってる事が全然理解出来ない。異能者って作り話じゃないのか...?そんなパニック状態の僕にその人は軽くこう言った。

「あ!大事な事言い忘れてた!湊くん君も異能者だよ〜」


 え.....?は?

 いや、え?僕が異能者?


本日2度目の静寂。今日だけで驚いた事が多過ぎて僕は寿命が縮んだ気がする。 

「いやいや!そんなはずないと思います...!異能なんて使った事ないし」

僕は焦って首を勢いよく横に振ってそう言った。ただでさえ異能者が実在すると知って驚いていたのに、僕も異能者...?ていうかこのタイミングで言う?僕は勇気を振り絞ってその人を睨見つけるように見てやったが、その人はやはりヘラヘラしていた。

「ごめんね!本当に!これを伝えに来たのにまさか忘れるとは自分でも驚いたよ!湊くんも自分が異能者だって信じられないなら刺してみれば?」

馬鹿なんだ...。この人。普通に刺してみれば?って言うけどさあ...僕はもう考える気力がなくてなにも言う気も起きなかった。

「ほらほら〜はやくはやく〜」

その人はニヤニヤしながら急かしてくる。もういいや、わかった。こうなりゃもうヤケだ!刺してやる!これで僕が異能者じゃないって証明してやる!僕は思いっきりナイフを振り下ろした。

「痛っ!!!」

 痛すぎて気を失うかと思った。今にも死にそうだ、けど痛みを感じるって事は、

僕はやっぱり異能者では──。え.....?血が出ていない。それに段々傷愚痴も癒えてきて痛みも消えていく。

「あゴメン〜殺せないけど痛みはちゃんと感じるんだよ!」

「それを先に言え!」

僕は思わずツッコんでいた。え...?じゃあ僕は

本当に異能者なのか?いつから...?なんで僕が?異能者って実在したのか...?

「ね、言ったでしょ?湊くんは異能者だって」

え、いつ、から?え、まさに思考停止。

「ほんとに、僕は...」

パニックで何も話せない。考えられない。

「ねね驚いてる所悪いけど時間ないから、僕の事掴んでくれる?」

そんな僕を気にせずその人はそう言った。僕はもう言われるがままその人の袖を掴んだ。すると風をきって一瞬にして場所が変わった。

「え──────────」

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