おまけその二 重婚

『速報です。先程政府は、少子高齢化を食い止める策の一つとして。一夫多妻制度の導入をする事を発表しました』


 そのニュースは余りにも唐突なものであった。思わず目を疑う。


「……え、嘘……本当なの?」

 当然、俺だけでなく。陽葵達までテレビを見て、目を丸くしていた。


「……? パパ、あれなんてよむの?」

「……あ、ああ。あれはな。一夫多妻制って言って……簡単に言うと、一人の男の人にお嫁さんが一人だけじゃなくて何人も居ていいよって事なんだ」

「それができるようになったの?」

「……そういう事のようだ」


 俺がそう言うと。虹がぱあっと顔を輝かせた。


「じゃあさ! るなおねーちゃんとそらおねーちゃんがるなママとそらママになるってことだよね! まえいってたもんね! ほうりつがあるからできないって! だいじょーぶになったからだいじょーぶだよね!」


 その言葉に……俺は微笑んだ。


「ああ。そうなるかもしれないな」


 そうして頭を撫でると。虹は俺に抱きついて。えへへと笑っていた。


 ◆◆◆


 週末に政府の会見があった。もちろん、一夫多妻制の導入に関する事の細かい発表だ。


 内容を噛み砕いて言うと、次のようになった。


 一夫多妻は認められるが、夫側の年収によって制限がある。俺の場合だと……三人。

 そして、それに合わせて子供への支援も増える。子供が出来れば出来るほど支援額が増えていくとの事。それに合わせ、今子供が居る世帯へも支援を増やすらしい。

 これに合わせて法律の改正が行われる。重婚罪は上で述べたルールを守らなかった者や、ちゃんとそれぞれの女性から許可を取らなかった場合に適用される事になるらしい。


 それと……どうして一夫多妻なのか。女性の権利が侵害されていると言葉が飛んだ。当然だろう。昨今は多様性の世の中だ。そんな質問に政府はこう答えた。


『一夫多妻制に比べ、一妻多夫制は子供が産まれやすいか、と言われると疑問が残る所がある。そのために現在は議席で議論されており……しかし、少し遅れるが一妻多夫制が導入されるだろう』と。


 ……それにしても。


「……まさかこうなるとはな」

「私達が子供の頃は考えられなかったもんね」


 その会見を見ながら。陽葵は笑った。月雫と空はその会見を食い入るように見つめており、ちらちらと俺を見たりしていた。


 虹は友達と遊んでいるので居ない。親がいないのはどうなんだと思われそうだが。相手の親――俺の友人でもある水音が付いているから大丈夫のはずだ。



 そうして会見が続く。……どうやら、この制度が導入されるのは再来年――陽葵の二人目の子供が生まれてしばらくしてからの事らしい。


 会見が終わると……場に沈黙が訪れた。重苦しいものではない。緊張が漂っているだけだ。



 一度陽葵を見ると……にこりと笑いかけられながら、頷かれた。



「月雫、空」

 俺が名前を呼ぶと。二人はびくりと肩を跳ねさせたなんだか少し……懐かしい。





「改めて。俺と結婚して欲しい。そして、俺との子供を産んで欲しい。俺は陽葵はもちろん――月雫と空の事も大好きだから」


 俺はそう言って、二人へ近づき……その唇に軽く触れるようなキスをした、



「今まで、支えてくれてありがとう。これからは一緒に歩んで欲しい」


 そう言うと……二人はその頬に一つの雫を伝わせながら。


「はい。一緒に歩みます」「ん。歩みます」


 笑顔で頷いてくれたのだった。そんな二人を……俺と陽葵で抱きしめた。



 空がぎゅっと俺を抱きしめながら。口を開く。


「あ、あのね……不満とかじゃ全然無いんだけど……私ね。虹を見て時々思ってたんだ。私とのんちゃんの子供が出来たら……どんな子になるんだろう、って」

 その言葉を俺は分かっていながら……強く、抱きしめる。


「わ、私も……最近になってから。佳音との子供、欲しくなっちゃってた」


 分かっていたつもりだった。しかし――もし、月雫と空と子供を作ってしまったとしても、俺は公に父親ですと言えない。言っても敵を増やすだけだ。もし俺が父親だと子供にこっそり伝えるだけだとしても……子供が大きくなってから傷つく事になるだろう。


 子供に伝えない、父親を不明にすると言うのは論外だ。――片親か、片親でない事で与えられる愛情にどれだけ差があるのか、俺は身をもって知っていたから。俺は別にもうその事で母さんも恨んでいないが。……子供に自分のような思いはさせたくない。


「ごめんね、空、月雫。私だけいい思いをして……本当にごめんなさい」

「ううん、陽葵お姉ちゃんは悪くない。それどころか、私達を気遣って……のんちゃんといっぱいさせてくれてたから」

「そ、そうだよ。陽葵姉は悪くないもん」

「ああ、陽葵は悪くない」


 俺はそう一言言ってから。改めて、二人を抱きしめる。


「悪いのは俺だ。二人が寂しがっている事を知っていながら……どうにも出来ない事だと目を背けていたから」

「のんちゃんも悪くない。悪い人なんて居ないんだよ」

「そうだよ。佳音も謝らないで。……というか、誤っちゃだめ。佳音は私達の事幸せにしてくれてるんだから。謝ったら……その事まで後悔してるみたいじゃない」


 月雫の言葉に俺は目を見開く。そして、笑った。


「……ああ、そうだな」


 そのまま五分ほど話してから……俺は離れた。すると、空が微笑みながら陽葵のお腹を撫でた。


「虹の。それと、この子の弟か妹……いっぱい作ろうね」

「ああ。……そのためにももっと働かないとな」


 そう言って……また、俺は三人にキスをした。


 心の奥底で、もし反対意見が多く政府の発表が訂正されたらどうしよう、という不安もなくはなかったが。その時はその時だと不安を押し殺したのだった。


 それから――二年後。政府は方針を変えることなく、一夫多妻制度は導入された。逆の一妻多夫制度は『多数の男性と婚姻関係を結べば資産的余裕も出てきて、子供を産みやすくなる』との理由でその次の年には導入するようであった。


 そして――。


「こ、これ、すっごい恥ずかしいんだけど」

「ん。陽葵お姉ちゃんの気持ち分かった?」


 俺は。空と月雫と、そういう事をするための施設……へと来ている。目的は当然……二人との子供を作るため。陽葵は虹の事を見てくれている。


「う、うぅ……でも恥ずかしいよ」

 月雫と空はもう服を着ておらず、準備は万端だ。……そんな月雫の背中を持たれかかる位置に空は居るのだが。


 空が後ろから手を伸ばし、月雫の脚を広げている。……そのお陰で何もかもが丸見えとなっているのだ。


「……とても綺麗だよ、月雫」

「う、うぅ……」


 月雫は顔を真っ赤にして俯いているが。……その視線の先にはアレがある事も。既に月雫の所は受け入れる準備もバレバレである。


 そして……その豊満な胸も。腕で隠そうとしているが、隠しきれていない。


 その顔へと顔を近づけ……その唇へと口付けをする。


「大好きだよ、月雫」

「うぅ……ぁ、ぅ」


 そう言うと……言葉だけで体液が迸った。


「月雫お姉ちゃんのむっつり」

「む、むっつりじゃないもん」

 そんなやり取りをする二人を見て……俺は思った。


「二人、というか三人とも。見られながらするの好きだよな」

「ん。誰に見られても良いとかそんなのはない。月雫お姉ちゃんも陽葵お姉ちゃんも心から信頼してるから。えっちな所見せても……恥ずかしいのと気持ちいいのはあるけど、嫌悪感は無い」

「ああ……なるほど」


 その言葉に納得していると、月雫に胸を撫でられた。


「ね、ねえ……私、もう我慢出来ないんだけど」


 月雫のその手は下へと下ろされていき……俺のモノを一つ撫でてから。


 そこを。両手で広げた。そのまま月雫は涙目で俺へと……懇願するように。


「か、佳音の子供。作らせてください」


 そう言った。


 俺の理性はもう消え去っていた。


 ◆◆◆


「……のんちゃん、やっぱり凄い」

 俺の目の前では月雫が肩で息をしながら時折甘い声を上げている。……理由として。


「空も人の事言えないと思うが」

 その脚と脚の間に……空は居るのだ。中から溢れ出してくる液体を舐めている。


「ぁ……ぅあ、そら……だめ。赤ちゃん、できなくなっちゃう」

「ん。大丈夫。外に溢れてきてる分だけ」

「ぁうっ……」


 その姉妹の淫靡なやり取りにまた俺は元気になっていると。空がやっと月雫を解放した。


 空は人のに混ざるのが好きだ。……いや、ほかの二人も混ざりがちなのだが。空はほぼ毎回混ざろうとしてくる。


「……聞いた事無かったが、空ってそっちも出来るのか?」

「んー。多分無理。陽葵お姉ちゃんと月雫お姉ちゃんが気持ちいい顔するのは好きだからやってるだけ。もちろんのんちゃんが気持ちよさそうにするのも好き」

 そう言って……空は俺を押し倒して。俺に乗ってきた。


「ねえ、のんちゃん。子供出来たらもっとおっぱいおっきくなるよね? 私ね、やりたい事もいっぱいあるんだ」


 そのまま空は体を押し倒して。


「――私、のんちゃんにミルクあげながらしてみたいな」


 その息は浅く。頬は赤く染まっていて。


「お母さんになってのんちゃんと子供一緒にいるのも、女としてのんちゃんと一緒に居るのも楽しみ」


 空はそう言って……つぷりとくっつけてきた。


「だから、のんちゃん。いっぱい愛して。もっと――幸せにしてね」

「ああ……大好きだよ、空」


 空はそのまま腰を落とし。俺の理性も程なくして切れたのだった。


 ◆◆◆


「ねえねえ! るなママ! そらママ! おとこのこだった? おんなのこだった?」

「ん。二人とも女の子だったよ」

「わーい! おんなのこがいっぱいだ!」


 月雫と空を連れて帰ると真っ先に虹が来た。……その後ろから、陽葵がまだ小さい子――雪乃ゆきのを抱っこしている。

 雪乃ゆきのは女の子だ。そして……空と月雫のお腹に居るのも女の子。偏りがあるが、俺としては男の子でも女の子でも。どちらでも大切に出来るから良いのだ。


 ちなみに、俺は仕事関係でもかなりの成果を上げて昇給を遂げる事ができた。そのお陰で生活にもかなり余裕がある。


 月雫や空が働けない分、俺が頑張らなければ……と思っていたのだが。もう少し虹が大きくなったら陽葵が仕事に復帰してくれるようだ。

『苦労は夫婦で分かち合うものだよ。私の時は月雫と空が頑張ってくれてたんだし』

 と、陽葵はそう言ってくれた。


「えへへー。虹だよー? おねえちゃんになるからよろしくねー?」


 虹が月雫と空のお腹に耳を当ててそう言った。その様子を微笑ましく思いながら……家の中に入る。


「パパ。パパも雪乃の事抱いてあげて」

「ああ。……雪乃、パパだぞ」

「ぱぱ!」


 少し前から雪乃は言葉を覚え始めている。俺はその言葉に頬を緩ませながら。体を揺らして雪乃をあやす。きゃっきゃと楽しそうにしているのが……もう、見ているだけで幸せだ。



 この幸せは――途切れる事はない。むしろ、これから膨れ上がっていくのだ。


「……パパ」

 陽葵に呼ばれ――俺はキスをされた。


「大好きだよ、パパ。これからもよろしくね」

「ああ……俺も大好きだよ。これからも楽しく暮らそうな」

 俺はそう返して陽葵へとキスをした。


「あー! ママずるい! わたしもちゅーする!」


 虹がそう言って俺の腰へと抱きつく。俺がしゃがむと……虹は俺のほっぺたにちゅーをしてくれた。


「えへへ……わたしもパパだいすき!」

「ああ、ありがとうな。パパも虹が大好きだぞ」


 虹の頬へとキスをして。俺は立ち上がり、陽葵へ雪乃を移動させる。


 そして……月雫と空に。俺はキスをした。


「月雫、空。大好きだ。これからもよろしくな」

「うん! ……これからもいっぱい美味しいご飯、作るからね!」

「ん。皆でもっと幸せになる」


 二人は微笑んで俺にキスをしてくれた。



 今が幸せの絶頂期、と思い始めて何年も経っている。……きっと、これから先も思い続けるのだろう。


 まだまだ人生は長い。その伴侶となる存在に三人が居るのはとても心強く……幸福な事だ。


 これから先、色々な事が起きるだろう。それでも、三人が一緒に居てくれるなら。子供達が一緒に居てくれるなら。


 俺はきっと頑張れる。もっと大きな幸せを掴む事が出来るだろう。



「みんな……本当にありがとう。大好きだ」


 ふと噛み締めた幸せに涙が零れそうになりながらも、俺は言った。



 この幸せな日々がずっと――永遠に続くように、願いを込めて。









 ――おしまい。

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