命の危機と隣り合わせの切ない日常

この物語には『怖い』が二種類ある。『隣人』が語る、人ならざる者も危ない人もごちゃ混ぜになった、友人から聞いた話。それから、主人公の母親。『怖い』に囲まれる主人公は、それでも人生を健気に生きている。温厚だけど人と価値観が根本的に合わない『隣人』含めマンションの住人。かすかに匂う絶望と恐怖の中、『隣人』との交流で生み出される一種の優しい日常が良く映えている。
胸の中で抱きしめたくなるような物語。