第13話 疑惑の会議



皆より一足先に店についてしまった俺は一人で、オレンジジュースを飲んでいた。





ショウとアヤカからマリアの事を話そうと同時に連絡が来たのだった。俺も同じ考えだった為、スマホを見て思わず笑ってしまった。


他の生徒に話が漏れてはまずいのではと思い、学校から三番目に近いファミレスに集合する事になった。




平日の昼間に学校の外にいるなんて何年振りだろうか。人気も少なく、なんだか落ち着かない。小さな子どもを連れたお母さんの姿や、仲が良く幸せオーラの漂う老夫婦の姿があった。



そんな静かな店にドタバタと二つの足音が近づいて来た。



「もう何なんですか?!」

「だいたいあなたねー」



ショウとアヤカだ。


一緒にいると言う事は、二人は待ち合わせして来たのだろうか?いや、喧嘩しながら来たように見える……。




「「あ、アツシくーん!!」」



二人は声を揃えて俺の方に手を振っていた。




「ごめんね、待った?」


「いや、全然……」


「ショウくんが邪魔するから遅くなったのよ!」


「何ですか?その言い方は……」


「……二人ともなんか仲良さそうだね?」



また喧嘩が始まりそうだ。俺は冗談交じりで苦笑しながら二人に言った。



「「そんな事ない」」


「ほら、仲いいじゃん」


「「よくない」」





何だかんだ息がぴったり合っている。これで仲が良くないというのだから不思議だ。「ひょっとしたら二人はお似合いなのでは?」とさえ感じる。


ショウは俺の隣に、アヤカは向かい側に腰掛けた。



「……何か飲む?」


「「メロンソーダ!」」


ショウとアヤカはまた睨み合っていた。


収拾がつかない為、俺は話を切り出した。


「話してもいいかな……」


「全然いいよー。何なにー?」


「昨日のトモキとの事なんだけど……」





俺は昨日の一連の出来事を、アヤカに報告した。トモキとサホとマリアの関係、それからトモキに送られてきた謎のメールの事を。アヤカは頷きながら真剣に聞いていた。




「そんな事があったの……トモキ最低ね!DV、モラハラの上に二股なんて。何でマリアはトモキを好きになったんだろう?……とりあえず今はその送り主を調べるって事ね」



「うん。後、トモキがさ別れてからマリアの周りには男がいっぱいいたって言ってたんだ。アヤカは何か知らない?」




「そうねー。トモキと別れたあたりから私はあまり、マリアと普通に会話してなかったからなー」



「そっか。じゃあ、しらみつぶしにマリアのフォロワーを調べてみるしかないか……」



何万人もいるフォロワーのアカウントを一人一人見ていくとなるとかなり時間がかかるし、気が遠くなる。俺が悩んでいるとショウが、口を開いた。



「ヤマダ先生の事はどう思いますか?やっぱりこのタイミングで退職はおかしいと思いませんか?」


「ヤマダ先生も少し気にはなるよな。確かに突然すぎる」


「ヤマダ先生は関係ないと思う」



アヤカは真顔で自信があるように答える。



「どうして言い切れるのですか?」



「だってヤマダ先生がマリアを誘拐してあの動画を撮ったって言うのなら、とっくに捕まってると思う。警察だって動いているのよ?こんなに身近な人物のヤマダ先生がやったって言うなら逃げるタイミングあからさますぎない?それに本当に生徒に興味が無かったのよ、あの人」



「確かに……」



自分から疑われるような動きをするのはおかしい気もする。ヤマダ先生は独特だったし、たまたま事件のタイミングと、退職したいタイミングが重なってしまっただけなのだろうか?それにまだ、テレビでは容疑者が捕まったなどと言う報道は出ていない。



ショウはアヤカの話を聞いて何とも言えない表情で考え込んでしまった。



「あと、俺さ!やっぱりフライの事が気になって今朝、話を聞くことが出来ないか、メッセージを送ってみたんだ。返信はまだ来ないけど……」



「あー。アツシくん最初からフライも怪しいって疑ってたもんねー。マリアと最後に連絡取り合ってたのがフライだったんでしょ?」



「うん。そうみたいなんだ」



「それも本当に不思議よねー。マリアはフライの話なんて私の前では全然した事なかったのよ?仲が良い素振りもなかった……」



「あはは。アヤカの事信用してなかったから話さなかっただけじゃないですかー?」



ショウが仕返しと言わんばかりにニヤニヤしながらアヤカに言っていた。



「もう!そんな事ないもん!!最初は仲良かったし……」



「まあまあ……。じゃあまとめると、俺とアヤカはマリアのフォロワーを調べて、ショウにはトモキのメールの送り主を調べてもらうって事で。ヤマダ先生とフライは何かが分かり次第、報告しあうって事で。手分けして頑張ろう」




「「おー!」」






返事が重なってしまった事でアヤカとショウはまた睨み合っている。





「……やっぱり仲いいよな?」



俺の口から自然と言葉が漏れていた。





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