【幼馴染み居候女子大生】幼馴染み以上恋人未満。そんな女子大生と一つ屋根の下で暮らす一夏を満喫しない?

さーしゅー

本編

 1,8月18日(水) 幼なじみとと同居生活 


「あっ、おかえり~」


 玄関のドアをガチャリと開けると、ドタドタと廊下走る音が聞こえる。

 次の瞬間、透明な声が耳いっぱいに響いた。


「お仕事、おつかれさま〜。暑かったでしょ? 大変だったでしょ?」


 瑞稀みずきは「はい、カバン」とカバンを手に取りながら、笑顔を見せる。


「私? 私は……今日ゆっくりだったよ。昨日は大変だったけど、引っ越しの荷物はほとんど片付けたし。心配してくれてありがとう」


「ほら、あがってあがって。もう夕飯の支度できてるよ……って」


 瑞稀は手に持っていたビニール袋を見つけるなりひったくり、ガサガサと中を漁る。


「あ〜またお惣菜買ってる……。私の料理じゃダメかな……」


 瑞稀の声は尻すぼみに小さくなり、最終的に口元でボソボソ呟いていた。


「え……そこまでさせるのは申し訳ない? …………やっぱり変だよね」


「そりゃ、そうだよね……付き合ってもないのに、こんなことされたら嫌だよね……」


 瑞稀の声に影が落ちる。


「……ん? 料理まで作らせるなんて、瑞稀が大変…………? ああ、そうゆうこと?」


「私はキミの家に、タダで済ませてもらってるんだよ? ただの居候女子大生だよ? それくらいはさせて貰わないと、こっちが落ち着かないよ」



「私はすごい感謝してるんだよ。一ヶ月も一緒に生活……じゃなくて、友達と一緒のバイト先に通えることが。もしキミが断ってたら諦めざるを得なかったよ。通うには現実的な距離じゃないからね」

 

「だから、キミは一切遠慮する必要無し! はい上がって! ご飯が冷めちゃうよ?」


『……これから一ヶ月間、よろしくね』


 彼女はとびきり明るい声を出した。その後いくつか口を動かしたように見えたけど、その声は耳に響かなかった。

 

 * * *


「じゃあ、いただきます!」


 二人はぱちんと手をたたく。カチカチと食器と箸が音を鳴らし、美味しそうなご飯を口に運んでいく。料理の中の一つ、コロッケを箸でつかみ、ゆっくりと口に運ぶ。サクッとした食感が耳に広がり、美味しさが口の中にひろがっていく。


「あっ……ごめん。気にしないで」


 瑞稀がじぃーっと見るから、つい箸を止める。すると、彼女の申し訳なさそうな声が聞こえる。

 

「えと、その……コロッケの出来栄えがどうかな〜って、気になっちゃって……」


 瑞稀はキョロキョロとしつつも、あきらかに何度か目が合う。

 サクサクとした食感を堪能しつつ、素直な感想を口にした。

 

「おいしい? ほんとに……! よかったぁ〜」


 瑞稀からは安堵にも似た、幸せなため息が漏れる。

 

「一番頑張って作ったの。お口に合ってよかった」


 その笑顔を目にすると、どうしても気になることがあった。


「私の負担……? 何度も言うけれど、私がやりたいからやってるの。いくら幼馴染みとはいえ、タダで泊まらせてもらうわけには行かないからね」

 

 瑞稀は、真剣な声音で言葉を紡いだ。かと思えば……。 


『それに、お母さんが心を掴むには料理からって……』


 瑞稀は口先でモニョモニョと呟くけど、声が小さくてよく聞こえない。


「……えっ? 私たちがいつからの付き合いかって? そんなの、キミもわかってるでしょ? 幼稚園からだったよね?」

  

「中学校まで同じで、高校から違ったんだよね?」


「そして、キミは社会人三年目、私は大学三年生だね」


 瑞稀は「大人になったねぇ~」と、ため息をつく。


「中学校に入ってからは、あまり話さなかったんだよね……」

 

「あの年頃はすぐからかってくるしね……」と苦笑いをしながらつぶやく。


「今思い返せば後悔してる。せっかくの学生時代一緒に過ごしたかったなぁ……」

 

 瑞稀の声音は、遠いものを懐かしむような寂しい響があった。

 

「ってあ……へ、変な意味じゃなくて幼馴染みとしてだよ! 幼馴染み!」


「ん? 私は、まだ学生……? 制服脱いじゃったらもうおばさんだよ?」 

 

 瑞稀は「おばさんになって悪かったわね」とそれらしく言う。

 

「瑞稀はまだ高校生みたいだよ……って何言ってるの! ……そ、そんなこと言ったって、私からは何も出てこないからね!」

 

 瑞稀は「もう……突然変なこと言い出さないでよ……」と困ったような声を漏らす。

 

「とっ、ところで……お、お風呂……なんだけどさ? 先がいい? 後がいい?」

 

 少し気まずさがあったのか、最初の一音が外れた音になる。


「……また、銭湯行くって? 昨日は気を遣って私専用にしてもらったけど、それは悪いよ? それにせっかくお風呂浴びても暑い中にいたら、汗びっしゃで意味なくなっちゃうよ?」

 

「わ、私は気にしないからさ……」

 

 その言葉の割には、声がところどころ、裏返っている。

 

「甘えさせてもらう? うん! その方がいいと思うな」

 

「私が先? 覗かないでよ……?」

 

 彼女は悪戯っぽく囁く。だから、無言で立ち去ろうとした。

 

「ごめんって! 銭湯に行こうとするのやめて! 銭湯用カバンを置いて! 信頼してるから! 大丈夫だから!」

 

『……信頼してなかったら、そんな……ど、同居なんてとち狂ったことしてないよ? それに覚悟だってできてるし……』

 

「じゃあ遅くならいうちに入っちゃうね!」

 

 瑞稀はなんてことない明るい声で、小さな呟きを誤魔化した。

 

 

 2,8月19日(木) 二人っきりのオトナな時間 


「はぁ~エアコン涼しい〜」

 

 お風呂上がりの瑞稀は、ガチャリと部屋に入るなり、涼しさあふる声を発する。

 

「お風呂お先でした……って、あれ……皿洗ってくれたの? キミは働いているんだからゆっくりしていていいのに……」

 彼女は皿洗っているのを見つけるなり、ドタドタとすぐ駆け寄ってくる。

  

「せっかくご飯作ってもらっているのにって? この前も言ったでしょ。私が好きでやっているんだって。私は夏休みだから、バイトを半日やっているだけだけど、キミは一日でしょ? 頑張っているんだから、家ではゆっくりしないと!」

 

 彼女は言葉半分に、手から皿を奪い取る。

 

「……え、この後? うん、もちろん覚えているよ! …………オトナの時間だよね?」

 

「準備は万端だから、お風呂上がり……楽しみにしててね」


 そのなんてない言葉は、どこか艶やかで色っぽく感じた。

 

 

 * * *

 

「……ヒック、ヒック、そ、そんな……は、激しすぎるよ」

  

 目に涙を浮かべ、瑞稀は激しい感情を声で表現する。

 

「いや、だめ……もうダメだって…………目が開けられないよ」

  

「だめっ! 私の手をのけないでよ! もう、イジワル!!」

 

 冗談を受け流す余裕がないのか、躊躇のない大声を発する。

 

「ダメ……ダメだって…………だって、だって…………」

 

 悲しい感情を残しながら、少し静寂を作り出し。

 

「こんなエンディング悲しすぎるよぉ!」

 

 瑞稀は缶チューハイを握り、プルタブを引っ張ってプシュゥゥと炭酸の音を立てる。

 そして、小さな口から、ごくごく飲み始める。

 

「……ヒック、ヒック、いや〜終わっちゃったねぇ……」

 さっきまで泣いていたかと思えば、打って変わって充実感を滲ませる。

 

「それにしても、病気が治らないなんて……悲しすぎて……」

 瑞稀は映画の情景が浮かんだのか、瞳には再び涙が伝い、声は湿っていく。

 

「お、お母さんのこと、思い出しちゃって…………話題の映画が、こんな悲しい話だなんて……」

 

 彼女は再びポロポロと涙をこぼす。声の端々が震えていて、悲しいという感情が伝わってくる。その涙声はいつしかこちらを向いていた

 

「ねぇ…………」

 その声には、酔っているのか熱っぽさが混じる。

 

「ぎゅっとしていい? ぎゅっと……」


 トロンしとまどろむ声は、間違いなくこちらに向いていた。

 

「ほんとに? ……ありがとう」

 

 ゆっくり口にすると、ガサガサ這うように近づいてくる。肌にはゆっくりと彼女の温もりがふれる。

 

「はぁ〜……落ち着くなぁ…………好きだなぁ…………この温かさ」

 

 瑞稀は安堵のため息を漏らす。悲しげだった声音も表情もいつの間に晴れていく。

 

「それにしても、食卓で見る映画も意外といいものだね…… 映画館に迫力は負けるけど、邪魔は入らないし、チューハイ飲み放題だし!」


「楽しすぎて、悩み事とか、未来のこととか全部吹き飛んじゃったよ」

 

「毎週木曜日は映画の日! 今決めた! 二人で三百円で超お得だよ!! また映画借りてくるね」

 

 そんな明るい声が止み、静かになると、彼女の息遣いが大きくなった。映画を終えたテレビは、チャプター選択画面のままで、無言を貫く。その近さは、彼女の鼓動まで聞こえてきそうだった。

 

「……人が近くにいるってだけでこんなに落ち着くんだね……。もうこのまま寝ちゃいたいくらい……」

 

 瑞稀は空にぼそりとつぶやいた。

 

 

 

 3,8月20日(金) 仕事帰りの二人の時間 

 

「お、お……おかえり。き、今日は遅かったね……」

 

 そのぎこちない声は、僅かに音程が外れていた。

 

「そっ、それでね……、きっ……昨日のことなんだけどね……アレはちょっとした事故というかね、酔っていたというかね……」

 

 彼女は語尾を濁し、モニョモニョと口先を動かす。

 

「……朝も、朝ごはんも準備できずにごめんね。起きてたんだけどね、ちょっと、顔見れなかったというかね…………って、大丈夫?」

 

 これまでの浮いた声とは打って変わり、彼女は芯のある声で心配そうな声を発する。

 

「全然問題ない……? 大丈夫じゃないでしょ? なんだか暗い顔してる! 帰りが遅かったのも関係あるの?」

 

「それより話の続きが聞きたい……? それどころじゃないでしょ?」


「とにかく私の話だって?」


「……そんな明るく、取り繕ったような声を出しても、私はそんなに上手く、はぐらかされてあげないから」

 

 彼女はさっきのぎこちなさが嘘のように、真剣だった。

 

「……汗かいているみたいだし、とりあえず先にお風呂入ってきてよ。その後は……、覚悟してね? 全部相談してくれるまで夜ご飯抜きだから」

 

 その声音からして、言っていることは冗談では無さそうだった。

 

 * * *

 


「あっ、お風呂上がった? じゃあ、おいでおいで! 私の膝の上あいてるよ」


 その声音は、覚悟していたものよりとても軽く、柔らかい。

 

「怒られるかと思った? 私が怒るわけないじゃん。もう十分つらい思いしたんでしょ? …………えっ、違う?」

 

 彼女は考え込むように、首を傾げる。そして、思いついたように顔を赤らめる。

 

「……あれ? もしかして……膝枕恥ずかしがってるの? そっ、そりゃ、恋人じゃないから、恥ずかしいかもしれないけれど、今はそうじゃないの。緊急事態だよ! はい! 早く!」

 彼女はバンバンと膝の上を叩き、「は〜や〜く〜」と急かすから、勢いのままに膝の上にお邪魔する。少し重たかったのか、彼女から少し息が漏れる。そして、「膝枕できてえらい!」

 と、まるで子供をあやすかのように、優しい声を発する。

 

「それで……何があったの? えっ……何もないって? …………ウソつきだね?」

 

 彼女の優しい声は、耳の上から優しく降ってくる。


「キミがどれだけ、明るい声を出して取り繕っても、私にはわかるんだよ?」


「……電車がギュウギュウで疲れた……? 瞳にウソだってはっきり書いてあるよ?」

 彼女の声音には、わずかに冷たさが混じる。でも、それは何処か悲しそうな声音だった。


「もしかしたら、気を遣ってくれるのかもしれないけれど……ウソついて欲しくないなぁ……」

 

 お互いの気まずさからか、パタリと会話が止んでしまった。あまりにも彼女は悲しそうにしているから、悩みを口にした。 


「えっと……キミは毎日一生懸命頑張ったのに、報われるどころか、大失敗で謝りに回ったと。それを引きずったから、仕事が進まなくて遅くなったと……」

 

「……やっと、話してくれたね」

 彼女はボソっと言葉をこぼす。どこか安堵のため息のようだった。


「頑張ったところで何にもならないし、賽の河原で小石を積んでいるみたい……? 大変だったね」

 

 彼女は悩みの全てを受け止めるように丁寧に相槌を打つ。その声を聞いただけ、心は少し軽くなる。

 

「でも、大丈夫……他の誰がなんと言おうと、キミの努力はちゃんと私が見てるから。キミはすごく頑張ってるよ。謝ることなんて一番大変な事なんだから、本当によく頑張ったよ」


 彼女は「よしよし」とつぶやいて、頭をサラサラと優しく撫でてくれた。


「謝るのは自分の所為だから、頑張るも何もない? たしかにそうかもしれない。だけど、謝ることはとても大変で、とても怖くて、とても心が痛くなること。それでも逃げずにやったんだから、頑張ったことには変わりないよ。他の人がたとえその失敗でキミを恨んでいたとしても、私は気にせず、キミの頑張りを認めるよ」


「……周りは助けてくれないし、敵だらけだって?」


 彼女の穏やかな言葉はまるで大きく包んでくれるようで、ついつい心の中が溢れていく。


「もしかしたら、誰も助けてくれないかもしれない。でも、どんなことがあっても私は味方でいるから。つらくなったらちゃんと帰ってきて。何もできないかもしれないけれど、そばにいてあげることはできるから」


「……こんな情けない自分が嫌い?」


「私は好きだよ? いろんな事を一生懸命に考えて、居候の私にだって気を遣ってくれて、お仕事もちゃんと頑張って……そんなキミが私は好きだよ」

  

「よしよし、頑張った、頑張った。えらい、えらい」

 

 優しい声の後、瑞稀は柔らかく、頭を撫でる。不思議とこれまで悩んでいたことがが解けていく。


「うん、いい顔になってきたんじゃない。私はつらい顔をしているより、幸せそうな顔が好きだよ」

 彼女はゆっくりとつぶやくと、「……あっ、そうだ」と顔を上げる


「……あっ、そうだ……耳かきをしてあげようか?」


 「ちょっと待ってね」とつぶやき、引き出しをガサガサと探す。しばらくすると、ドンドンと音を立てて耳元に戻ってくる。


「はいっ、横向いて」


 瑞稀の透明な声が、左の鼓膜の近くで響く。ゆっくりと、細いものがカサカサと柔らかい音を立てながら耳の中に入っていく。その優しい音は聞いているだけで、心が安らぐ。

 

「……どう? 気持ちいい? ……そう、よかった」


「小さい頃ね、お母さんがよくやってくれたんだ。別にかゆくはなかったし、もどかしい感覚だったけど、耳かきしている間はなんだか安心したんだ」

 

 彼女は手を止めずに、ゆっくり続ける。

 

「……私にはこんなことしかできないけれどさ、何かあったら言ってよ。できることはするから……なんてね」


「はーい、よしよし……次は反対かな」

 

 うながされるままに、彼女の膝の上で一回転すると、今度は右から優しい声がいっぱいに聞こえる。


「いつもとは違って、私がお母さんに見える…………? それは私は普段幼いと思われているって事?」


 瑞稀の明るい声は、妙にトゲトゲしていた。


「冗談だよ? 私ね……お母さんのようになりたいなって、思ってるの。優しく包んでくれた、私の大切な人。でも、まだ届きそうにないから、これは演技なのかもしれないね……」

 

 言葉の余韻を残すかのように、耳かきが続いてから、しばらくして手が止まる。


「はい! 辛気くさい話は終わり! そんなことより、明日から休日だよ! ねぇねぇ何する?」

 

 彼女の膝の上はまるで夢見心地だったからか、今したいことを素直に答えた。


「……たくさん寝る? なし!! それは、絶対なし! いっぱい遊ぼうよ!」


「キミは一緒にしたいこととかある? あっ……日曜日は開けておいてね? 海に行くから」


「……ない? え~〜。何かあるでしょ? 私と一緒に行きたい場所とか、したいこととか。せっかく、女子大生が居候してるんだよ?」

 

「なんでもいいんだよ?」と彼女が急かしてくるので、適当なところを口にする。


「……なになに、駅前のカフェに行きたい? えっ、あのおしゃれな所!? ほんと!? 行こう行こう! 約束だよ!!」

   

 その声は今日一番に花咲いていた。



 

 4,8月21日(土) オシャレなカフェでデート 

 

「お、お待たせ……ごめんね〜?」

 

 駆け寄ってきた彼女は、少し息を切らしながら、申し訳なさを口にする。


「本当ごめんって? でもまだ遅刻じゃないよ? ……もしかして……待ちきれないくらい楽しみだったり……?」

 瑞稀は悪戯っぽく、まるで覗き込むかのように尋ねて来る。


「一緒に出れば遅刻なんてなかった? まぁ、たしかに、そうなんだけど……そうなんだけれど!」

 彼女は何かもどかしそうに主張する。


「女の子にはいろいろ準備があるの![#「!」は縦中横] それに…………やっぱ待ち合わせの方が味があると思わない?」


『……恋人みたいで?』


 街の喧騒の中、彼女は不満そうにするから、慌ててフォローを入れる。


「なになに? このワンピース似合ってる…………? 本当に? 嬉しい!」


『頑張って準備してよかった……』


「で、でも、そんなに褒めたところで私からは何も出ないからね?」



 そう言う割に、彼女の声は弾んでいる。

 でも、流石に気恥ずかしさはあったのか、しばらく二人とも黙ってしまった。

 騒がしい街の中を二人の足音がゆっくりと進んでいく。そのもどかしい時間も不思議と心地よかった。


「……ねぇ、手、つないでもいい……あっ、いや、これはま、迷子になっちゃいけないからで……」


 彼女は俯きながらボソボソとつぶやく、その手は小さく震えていた。


「あ、ありがとう……」


 瑞稀がぎゅっと手を握り返す中、何かを噛みしめるように口にした。


「当然ことなんだけど、手大きくなったよね? 最後につないだのは小学生低学年だったっけ……」


『……もう、絶対離しちゃだめだよ』


「ほら、もう見えてきたよ!?」


 彼女の指差す先には、お目当てのカフェが見えていた。

 

 * * *


「このパフェ……すごい……」


 瑞稀は恍惚とした声で、感嘆を漏らす。


「イチゴにマンゴーにキウイにフルーツいっぱいだし……何層にもなっててカラフル! ガラスからのぞく萌え断がもう〜〜〜おいしそう! 写真だけでも美味しすぎる!!」


 瑞稀はメニュー表のパフェにのめり込み。我を忘れて恍惚な悲鳴を上げる。かと思えば途端に黙って、少し恥ずかしそうに目を逸らす。



「キ、キミはどれにするか決めた? ……私? 私はもう決めたよ。私はこの、パ………………ンケーキにするよ」


「えっ、パフェ? いやべ、別にパフェを見てたわけじゃないから……ね? 普通にパンケーキが食べたいだけだよ? ほら! パンケーキおいしそうでしょ?」

 

「えっ? さっきからパフェばっか見てる? そっ、そんなことは……ないかなぁ……? それに、少し量が多そうだし……」


 そう言う割には、とても小さな声で「パフェ……」とこぼしている。


「えっ、キミがお金出すのす? いやいや、それは悪いよ! ただでさえ居候させてもらっているのに、こんな高いパフェ…………」

 

 彼女はわたわたと必死の抵抗を試みる。


「えっ!? これ食べないと家から追い出す!? そ、そんなぁ………じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて、パフェを…………」


『…………もう、優しいんだから』


 彼女の複雑そうな声も、どこか嬉しそうだった。

 

 * * *


「……あっ、パフェ来た!」


 瑞稀の声は、その瞬間飛び跳ねた。

 

「お、おいしそう~~! 写真で見たのとは全然違って、実物は美しすぎる! あっ写真撮らないと? はい、笑って、ピース!」


 瑞稀はスマホに二人とパフェを映すと、カシャリとスマホのシャッターを一度きる。


「いただきま~す! ……っえ? 写真もっととらなくていいのかって? ……私は別にSNSに投稿するつもりはないし、思い出の一枚だから、むしろ少々雑な方が、思い出映えするんだよね」


『初めての記念だし……』

  

「じゃあ、改めまして、いただきま~す! う~ん〜〜〜〜〜〜〜!! 見た目だけじゃなくて、味もおいしすぎる!! すっきりとした甘さだから、全部いけちゃいそう!」


 瑞稀はとても美味しそうにパフェを食べる。その姿を見ているとこちらまで笑顔になる。

 

「キミのパンケーキもおいしそうだね? あっ、そうだ! はい、あ~ん! パフェのお裾分けだよ?」

 

 瑞稀は「ほら、早く」とスプーンを差し出してくる。それを中々食べられないでいると、彼女は首をかしげる。


「えっ? 恥ずかしい? まっ、まあただの幼なじみだし、恥ずかしいよね……」

 

「でも、そんなこと言ってる場合じゃないんだよ? 緊急事態なんだよ? こんなおいしいもの独り占めできないから! はい、あ~ん」

 

 彼女に押されるまま、ゆっくりと口を開く。そして素直な感想を告げる。


「……どう? えっ? 味わかんなかった…………し、仕方ないなぁ…………じゃあ、もう一回だね。はい、あ、あ~ん……」


 瑞稀は冷静を装っていたけれど、声は明らかに高い。

 

「どう、おいしい……? だよね!」


 まるで自分ごとにように笑顔を見せる。そんな彼女に、黙ってはいられなかった。


「っえ? パンケーキくれる?」


「じゃあじゃあ……~~~んんん!! パンケーキもおいしい〜〜〜! 生地ふわっふわっだし、バターの香りが香ばしくて……パフェもいいけれど、パンケーキも負けてない」


 彼女はパフェを食べた時のように、興奮を言葉にする。


「えっ、いや、そ、そんなことはないよ? 別にパンケーキをもう一口食べたいとか思ってないよ? えっ? チラチラと見てたって? き、気のせいだよ」


「……えっ、パンケーキ一枚くれる……ストップ! ストップ! これは遠慮している訳じゃないの! その……今日たくさん食べちゃったら……」

 

 彼女はためらうように言葉を濁している。そして、とても小さな声でボソボソと一言。

 

「……明日の、み、水着が着れなくなるの……」


「だっ、だからさ……ま、また来ない……? いい? 本当? 約束だよ?」


 二人はスイーツを食べた後、コーヒーを注文した。香ばしい香りと共に、テーブルにコツンコツンとたどり着く。


「はぁ~ おいしかった! 食べたあとの苦いコーヒーがまたいいねぇ……」


「もう、なにも考えたくないなぁ……将来のこととか……もう、パフェになっちゃいたいなぁ……」


「……ああ、そうだ。これから水着買いに行くの付き合ってよ? ……この時期もう海に入れないって? ま、まあそうなんだけど……いいじゃん……」


『……恋人みたいな事したいじゃん』


「ううん? 何にも? じゃあ、そろそろ行こうか? 次は隣のショッピングモールだね?」





 

 5,8月22日(日) 二人っきりの海 


「あっ、次のトンネル出たところを左に曲がって。少し細い道に入るから気をつけてね」


 軽快なエンジン音に、BGMとして流している流行の曲。瑞稀の声に合わせて、ウィンカーをカチカチとあげて、タイミングよく左に曲がる。


「今日はありがとうね、車出してくれて。バスで行こうと思うと大変だったから。もちろん時間がかかるって言うのもあるけど、今ちょっと危ない格好をしているから、バスには乗りたくないかな?」


 少しスピードを落とすと、エンジンの音か、車内は少し静かになった。


「キミ……もしかして、危ない格好って聞いて、ヘンな想像したでしょ?」


 彼女は覗き込むような声でささやく。


「でも、残念でした~水着の上からジーパンにパーカーを着ているだけです! まあ、この季節にパーカーの前をしっかり閉めているから、変な格好にはなってるんだけどね……」


「それはともかく、もう見えてくる頃だよ? ほら! 海!! あっそこを曲がって、その線が引いてあるところが駐車場だから。どこでも止め放題だよ? これが7月とかだと、そうはいかないからね?」

 

 車をゆっくりバックで駐車し、エンジンを切る。ドアをバタっと開くと、開放感あふれる風の音が聞こえる。

 

「はぁ〜ついたぁ! 海の音が聞こえる! 気持ちいぃ!」

 

 彼女は外に出ると、気持ちようさそうに大きく伸びをした。


「レジャーシートとパラソルとクーラーバック……他に持って行く物あったっけ?」


 瑞稀の爽やかな声が、運転席まで響く。


「以上……? じゃあ、持って行くね」


「……えっ、手伝う? いいよ。だって、運転で疲れてるでしょ? じゃあ、助手席に置いてある私のカバン持ってきてよ」

 

 瑞稀は右肩にクーラーボックス。左肩にレジャーシートの入ったカバン、そこに両手でパラソルを抱える。


「……よっと」と声を漏らし、危ういステップで、一歩二歩とふらふら前に進む。


「えっ、いいのに? クーラーボックスも、私が持つよ? 何? 危なかっしくて見てられない? それは私がか弱いってバカにしてるの?」


「……ケガしたら困る? えっ? 私のお父さんが怖い?」


「え~、何それ…………あっ、そういえば……私が居候するって決まったとき、お父さんと二人で何か話してたよね? 何話してたの?」


 彼女は一歩二歩と踏み寄ってくる。


「えっ……秘密? すごい気になるんだけど? 教えてよ?」


「……男同士の秘密? えっ? 余計に気になるんだけど? ねえねえ?」


「……どこに場所とろう? あ、話逸らしたな……? 人もまばらだし、どこでもいいよ? じゃあ、あそこにしようよ」

 

『……いつかちゃんと教えてね』


 彼女は苦笑いしながら、つぶやきを波に溶かした。



 * * *


「レジャーシートもパラソルもOK! 準備完了! 意外と時間かかったね?」

 

 彼女はふぅと大きく息を吐く。その表情には達成感が滲みてでいた。。

 

「じゃあ、お待ちかねのアレしますか……って、なんでクーラーボックス開けてるの! もっとあるでしょ、気になるところ?」

 

 彼女は「私の格好とか、私の格好とか……」とボソボソつぶやいている。


「いやだから、お弁当取り出さないの!まだちょっと早いでしょ? そんなことより、いいの? 私このままパーカ脱がなくても?」


「何で黙るの……? もしかして照れてる……?」


「えっ? キャッチボールしないか……? もう。知らない!」


 彼女は投げやりな声をあげ、座り込んでしまう。


「…………何? 私の水着見たい? そんな頼み方じゃ見せてあげない…………見せてくださいお願いします? しょうがないなぁ……」


 瑞稀はファスナーに手をかけてパーカーを脱ぐ。そして、今度はジーパンのファスナーにも手をかけて、ジーパンも脱ぐ。サラサラと衣擦れ音が耳に響く。


「じゃーん、似合ってる? ありがとう! …………でも、あんまりじっと見ないでね? 恥ずかしいから」


「いや、だから弁当を開けないの! いや、もういっか! もうご飯しよっか!」


 彼女はヤケクソ気味に、弁当の準備を始めた。。



 * * *


「結構遊んだね」

 

 瑞稀は満足感を言葉に漏らした。


「この時期の海も案外いいもんだね? 海には入れないけれど、人が少ないから気楽に遊べるね」


「はぁ……休みが終わっちゃう……」

 

 彼女は遠くを見ながら、波の音にため息を隠した。


「まだ夕方だって? でも、今から帰ったとして、かえってお風呂入ってご飯して……そうしたらもう寝る時間でしょ? そしたらまた平日じゃん?」


「また来週遊べばいい? いや……そうなんだけど、あまりにも楽しすぎてさ。その分現実に返るのがつらいっていうか……?」

 

 彼女の言葉は歯切れが悪くて、思わず心配になる。 


「……悩み事? ううん、そんなんじゃ全然ないよ? ただ、寂しいなって思うだけ。 楽しい時間がずっと続いてほしい思ったの。幼子のだだだね」


「えっ、夜までずっといるかって? そんなことしたら明日が大惨事だよ!」


 彼女は少し寂しそうに笑った。


「じゃあ惜しいけど……帰ろっか」


 彼女の声は寂しさもあるけれど、何か吹っ切れたようにスッキりもしていた。


『また、絶対来ようね……』

 

 夕陽に響く、波の音は相変わらず、心地よかった。



 * * *


 

 6,8月23日(月) 瑞稀と添い寝した


「あっ、おかえり。ご飯できてるよ?」


 玄関から入ると早速迎え入れてくれる瑞稀。だけど、その声はわずかに低く、妙に淡々としている。


「……私? ううん、何もないよ? さぁ、早く上がって!」


 瑞稀はいつも通りの明るい声……ではなく。取り繕ったように一段と高い、少し外れた声を出す。その違和感が気になって動けないでいると、彼女が首をかしげる。


「あれ? 上がらないの? ……もしかして、またつらいことがあったの! それなら私に何でも言ってね?」

 

 それでも、彼女の心配そうと言う気持ちは本物だった。


「大丈夫? なら、よかった〜 さ、上がってよ?」


 その違和感に、もどかしさをひきづりながらも、言われるままに家に上がった。



「いただきます!」

 

 二人パチンと手を叩き、カチカチと箸を握る。


「えっ……ごはんありがとう? そ、そりゃ居候だし…………これくらいは、当然だよ?」


 そして言葉がプツリと途切れた。これまで意識せずとも会話があったのに、今日は皿と箸の音しかしない。


「何かあったかって……? ううん? 何もないよ? 大丈夫だよ?」


 再び訪ねてみるけど、彼女は相変わらず平静を装う。だけれど、言葉がどこかぎこちない。


「ああ、強いて言えば、今日は大学に行ったから少し電車通学が大変だったかな……でも、大学に行くのは夏休み中三回くらいだから、気にしなくて大丈夫だよ!」


「そうじゃない……って? もしかして、キミの方がつらいんじゃ……」



「上司が素直に謝ったことについて、褒めてくれた……って? よかったじゃん!」


 彼女はまるで自分ごとにのように喜んでくれる。だけど、それさえも取り繕っているように見えてしまう。


「素直になるって難しいし、何かの所為にしちゃうこともたくさんあると思う。その中で逃げなかったって、やっぱすごいことだと思うよ……」


「あっ、そうだ。お祝いって作った訳じゃいけれど、その唐揚げ頑張って作ったんだ! お祝いだと思って食べてよ!」

 

 その明るい声が響いたあと、途端に会話が途切れた。いや、断ち切った。


「……あれ、どうしたの? あんまり唐揚げ好きじゃない?」


 少し表情に影を落とす彼女、それでも、箸を動かすことはない。


「素直に話して欲しい……? さっき言ったとおりだよ? 電車の中って結構人が多くてね……それこそ怖い人もいっぱいいるし。あんまり好きじゃないんだよね。だから、ちょっと顔に疲れが出ているんだと思う。でも、こうやって、キミが聞いてくれたおかげで少しは楽になったんだよ? ありがとね」


 彼女は淡々と口にして、話を切り上げてしまう。


「ど、どうしたの? ご飯中に立ち上がって? ……えっ? 素直に話してくれるまで、顔見たくない……?」



「何でそんなこと言うの! 私は大丈夫って言ってるじゃん! 本当に何もないんだって! わかってよ!!」

 

 彼女は感情的に声を荒げる。


「……あっ、ちょっと。行かないでよ! ご飯は? いや、本当に何もないんだって! ほんとだって!」


 そんな叫びを背中に、扉をばたりと閉め、部屋を後にする。

 去り際に聞こえた「もう知らない!!」の声も、ドアに遮られとても小さく聞こえた。


 



 * * *


 コンコンコンとドアのノックが聞こえ。時計を見ると、ちょうど日をまたいでいた。

 

「起きてる……?」


 瑞稀は返事を確認すると、ドアをそっと開けて中に入ってくる。


「ごめんね、日が変わった頃に訪ねちゃって……お布団に入って、寝るところだったよね?」


 瑞稀の声はとても小さくて暗い。若干の震えも混じっている。

 

「私、前にさ、お母さんみたいになりたいって言ったじゃん…………だから、キミには心配かけたくなかったの……」


「でも、キミはそれを許してはくれなかった……優しいから」



「ねえ、……一緒に寝てもいい?」


 瑞稀は耳元で、小さく囁いた。



「あ、も、もちろん変な意味じゃなくて、純粋に一緒のお布団に入りたいだけ? あっ、えっと、それもなかなかヘンだよね……」


「いいの? …………じゃあ、お邪魔します」


 少し嬉しそうに声を出すと、おずおずとすぐ隣で横になる。面と向かう恥ずかしさからか、何を言うわけでもなく、自然と背中合わせになっていた。


「えへへ……キミの背中あったかいね」



「暑いって? そんなこと言わないでよ……あっ、タオルケット半分借りるね」


 そこで、会話はポツリと途切れ暗い部屋は静まりかえった。だけど、不思議と嫌な感じはしない。

 時計の音が心地よく刻む中、彼女は小さく言葉をつぶやく。


「……今日大学で就活セミナーがあったの。いろんな企業が来てて楽しさはあったんだけど……いざ自分の将来を考えちゃうと何をすればいいんだろうって思っちゃって……これが私の悩み。ちっぽけでしょ?」

 

 瑞稀は、少し自虐的に笑った。


「私将来のことが全然想像できなくて、考えようとすると、いつもわーって叫びたくなっちゃうの、やりたいこととか思いつかないしガクチカとかも思いつかない……就活とかやりたくないなぁ……とかね?」


「それで、もう働き始めてるキミは偉いな~なんて思ったりしてね……」


 瑞稀は「キミは偉いんだよ!」と褒めてくれる。


「……えっ、大丈夫だって? ……もしかしてそれは私のマネ? じゃあこっちだって、大丈夫よしよしでお返しだ~ なんてね……」


 瑞稀の声は少し落ち着いていた。


「でも、私はもう大丈夫だよ」


「なにもしてない…………ううん? キミが話を聞いてくれただけでも心がすっきりしたの。これはウソじゃない。本当だよ。明日からも頑張ろうとも思えたの。だから……私に本当に必要なのは……言葉じゃなくて、キミなのかもしれない…………な、なんてね?」


「えっ、背中が熱い……だって? う、うるさい! 明日早いんだから、もう寝るよ! はいおやすみ!!」


 背中の熱は冷めないまま、深い眠りへとおちていった。


 

 7,8月24日(火) 瑞稀との同居生活は永遠に


「おはよう……」


 夢うつつな、瑞稀の声はとても眠たそうだった。

 

「そういえば、このまま寝たんだったね? なんだかいつもより、安心できてぐっすりだった気がする……」

 

「今何時…………って、時間やばくない!!」

 

 突然ベットの上が、がたことと騒がしくなる。「安心しすぎて寝過ごした!」と彼女の悲鳴が聞こえる。そして、その声はこちらへ向く


「ちょっと、起きて!!」

 

 体がゆさゆさと揺られ、ベットがギシギシと軋む。


「あとちょっとじゃないから! ちゃんと、起きてね! わかった? ……ならよし! 私朝ご飯用意するから早く来てね!」


 瑞稀はそう残すと、ドンドン慌ただしい音を立てて部屋を出ていく。そして嵐が去って、再び、夢の中に舞い戻ろうとしたその時、足音がピタリ止まる。

 

「あっ〜、言ってるそばから寝てるじゃん! はい、起きて!!」


 振り返った瑞稀は、再びこちらに駆け寄って来て、体をゆさゆさと揺らしてくる。


「もう〜遅刻しちゃうから!!」


 策士瑞稀との戦いは十分にも及んだ。


「はい、ご飯どうぞ! 時間がないからコーヒーも一緒に出すね!」


 瑞稀はバタバタと朝食の準備を終えると、コーヒーを両手に向かい側の席に座る。


「はぁ〜これでなんとか間に合いそうだね……」


 彼女はほっとため息をつくと、コーヒーを抱える。


「ありがとう? ……いつも言ってるけど居候させてもらってる…………そうじゃなくて?」


「……私と一緒にいてくれること? こ、これからもずっと一緒にいてほしい?」


 彼女はコーヒーカップをゴトンと落とす。


「えっ? そ、それって、ももももしかして……ぷ、ぷ…………」

 

「えっ、ただの感謝だって…………そんな紛らわしいこと言わないでよ!! はい、遅刻するからさっさと食べて!」


「でも、じゃない! もう時間なんてないんだからさっさと行った、行った!」

 

『……こちらこそ、ずっと一緒にいようね』


「あっ、お皿はいいよ? 片付けておくから! それより早く!」


 廊下に二人の早足が響く。



「今日は遅くなるの? ……そうでもない? じゃあ、今日はゆっくり晩酌でもしちゃおっか? って今、そんなこと言ってる場合でもないよね?」

 

「楽しみにしてる……? そっか……私も楽しみにしてる」

 


「じゃあ、行ってらっしゃい! お仕事頑張ってね?」


 瑞稀の明るい声に背中を押され、いつも通り玄関のドアをくぐった。

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【幼馴染み居候女子大生】幼馴染み以上恋人未満。そんな女子大生と一つ屋根の下で暮らす一夏を満喫しない? さーしゅー @sasyu34

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