第2話 私に起こった恐怖

 スマホの懐中電灯が消えているのをモモコもネネも確認する。


「本当にライト…消えてるね」


「これは正しく霊の仕業!アイちゃん!写真撮らせてね」


 私の反応を見る前にモモコは写真を撮る。しかしそのカメラには驚いた私しか写っていない。しかし変わったことがあるとしたらオーブが写っていることだけ。


「オーブだけじゃん」


「そんなにすぐに現象起こらないよ。それよりどうする?もう少し三人で行動する?」


「ならみんなで別行動取ろうよ!」


「いや、私怖いんだけど…」


 私は今すぐにこの場から帰りたかった。ここまでなるのは初めての経験。今すぐに撤収したい。


「大丈夫だよ!こうなるのは初めからわかってたでしょ?!」


 楽しそうにするモモコにもう話が通じないと感じ取る。そして三人でじゃんけんをする。2、1にするため。そこで私の運の悪さが出てしまった。私は一人で硬度することに。


◆❖◇◇❖◆


 二人とまたトイレで集合することにし、私は歩くことにする。普通に歩いている時に感じた。足音が…二つになっている。慌てて振り向くが誰も居ない。また歩き出すが、また聞こえてくる。

 私は恐怖に支配され、走り出す。長いこと走ると池の近くまで来ていることに気づく。


「あれ?そんなに走ったけ?」


 その時にどこかで話し声が聞こえてくる。絶対にいるはずの無い男女の話し声。しかし気になってしまい、森の中に私は入って行ってしまった。危ないのはわかっていても、私は行きたくて行きたくてたまらなくなっている。まるで、誰かに誘われているかのように。

 かなりの上り坂を登っていくと、人の声は聞こえなくなる。その時に誘われていたことに気づいた。森の上には石碑と古いお墓があった。そのため、男女が話しているなんてありえない。ベンチすら無いのだから。振り返ると真っ暗な道が広がっておりその時に気づく。


「あれ?私ライト無しで…どうやって登ったの?」


 スマホのライトが付かないのに、どうやって昇ったのだろう。だが道は明るく照らされていた。あの明かりは?と思ってしまった。まぁ、いいかと思い、石碑のところまで行く。石碑の隣りにはこのお墓のことが書いてあった。

 この場所は昔に戦争で亡くなった人々を弔うために造られた場所らしい。近くにも小さな石塔もある。そして小さな屋根の中に不動明王がある。


「確か不動明王って、霊を極楽浄土へ行けるようにするんだっけ?」


 独り言のように呟いていると誰かの足音が聞こえてくる。そちらを見つめると、白いスカートを履いた女性が見えた。一瞬だけ人だと思ったが、腰から上が見えなかった。何を思ったのか私はカメラのシャッターをきる。すぐに確認せず、その場を後にする。慌てて降りると、遠くの方で二人を見つける。

 慌てて私はそちらに向かう。私は二人の名前を呼ぶ。しかし振り返ることもしない。


「あれ?待ってよ!」


 走り疲れた私はゆっくり歩くと話し声が聞こえてくる。先程まで二人がいた場所に、ベンチがある。


「どこに行ったんだろう…」


 疲れ果てた私はベンチに座る。反対方向に行ったのだろうかとそちらの道を見ると道すらない。そして考えてみると私の中で恐怖心が溢れてくる。


「あの光…池の上…歩いていたの?」


 私が見たのは林の奥。その奥は、池の上。その時に私は恐怖が最高潮に達していた。それと同時に怒りが込み上げてくる。


「なんか…ムカついてきた…!」


 私は思い切って携帯を見る。するとモモコから着信が来ていた。携帯を手に持っていたのに気づかなかった自分が恥ずかしく感じる。こちらから電話するとワンコールで出る。


「もしもし…ゴメンなんだった?」


 電話の奥から聞こえてくるのは水とゴボゴボという音だけ。


「もしもし?」


 電波が悪いのかと思い、場所を移動する。しかし、音はそのまま。もう一度聞き直すと声が聞こえてくる。その声は確かに『まま、どこ?』という小さな女の子の声がした。私は慌てて電話を切る。もう一度電話をし直すとモモコが出る。


「アイちゃん?!今どこに居るの?!」


 慌てた様子の声に私は少し焦ってしまった。


「な、何が?」


「だって…アイちゃんから……がするんだもん!そこって公園なの?」


 この時から私は曖昧な記憶しかない。どうやって友人のところに帰ったのか、ふらつく足取りで一度お寺に向かった。モモコの『絶対空いていない』と言う声に耳を傾けながら、近くのお寺に急いだらしい。

 ちゃんとしたお祓いをしてもらい、ちゃんと気がついたのはお寺の中で、眠っていたらしい。その時に和尚さんにモモコとネネは怒られていたような気がする。


「ネネさん、霊が見えないのに、『見える』と嘘をついては行けません。モモコさん、あなたは死者をバカにしすぎです。このようなことになったのは、お二人が原因なのかもしれませんね」


 私が目を覚ましたことに気がついた和尚さんは私の元へやって来る。


「アイさん、あなたはとても優しいので、たくさんあなたに助けを求めようと来たようです。だからと言って、霊をバカにしたようなことは一切しては行けません。あなたが帰って来れたのは、もしかしたら…おじい様かもしれませんね」


 その時、私は思い出した。約3年前に私の母の父親が亡くなった。その時、おじは私を呼んでいたと聞く。その日の夜、おじと遊んでいる自分の夢を見た。その後、水の中で潜り続けていた自分の夢も。

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この夏、私が体験した話 太刀川千尋 @tihiro564

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