この夏、私が体験した話

太刀川千尋

第1話 友人との再会

 この話は…私が体験した心霊現象です。友人の名前はモモコにしています。


 このようなことになったのは8月に入って間もない時、友人からある一本の電話が入った。(私の名前はアイにしています)


「あいちゃん、久しぶり!元気?」


 なんの変哲の無い友人からの電話。友人の声は何やら嬉しそうに感じた。


「モモコちゃん、久しぶり。最近忙しくて、電話してあげれなくてごめんね」


「そんなの全然いいよ!ところで、今週の土曜日、空いていたりする?」


「空いてるよ?それがどうかしたの?」


「久しぶりに肝試しやろうよ!今までコロナの影響で出来なかったからさ」


 当時の私は少し迷いがあった。五年前にとある神社で肝試しを行った時、神社の前で老婆が座っているのが見えたため、断念した。しかし、これで断ったら「意気地無し」と言われるかもしれないと思い、参加することにする。


「いいよ。どこで待ち合わせにする?」


 友人は待ち合わせ場所と時間を言うとすぐに電話を切ってしまう。少しだけ、楽しみになったがすぐに不安が押し寄せて来た。今までこのようなことが無かったが、今回の肝試しは…普通ではないと感じた。


◆❖◇◇❖◆


 夜9時頃に待ち合わせ場所に行くと友人と見知らぬ少女が立っていた。


「おまたせ、その子は?」


「この子は私の知り合いの(仮)ネネだよ。霊感を持ってるからすごいよ」


 自慢話をするかのように、モモコは話をしていた。彼女は少し気まずそうにしていたが、すぐに笑顔になる。


「揃ったから早速いこう!」


 モモコは楽しそうにとある場所へ向かう。電車を乗り継いで、着いたのが何の変哲のない大きな池の公園。街灯はあるが、なんだか暗く感じる。


「ここが調べた心霊スポットだよ」


「なんか…普通の公園って感じがするね」


 私は少し肌寒く感じる。まだまだ夏であり、この公園に来る前は暑くてたまらなかったはずなのに。


「ここで出てる現象は…」


 モモコはこの公園で起きたことを話し始める。この公園では昔にこの公園で殺された女性が体をバラバラにされて捨てられた場所だと言われている。この場所を帰り道で通った時に二人がかりの男に押さえつけられた後、レ〇プされ飽きたらそのまま身体をバラバラにされて池に棄てられたらしい。

 酷く惨いことに私は顔を顰めてしまった。しかしひとつわかっていないことがある。この場所でバラバラにされたと言っているが、頭部だけがまだ見つかっていないと言う。そのせいでか、よくこの場所に頭が無い人を見かけたりしている。


「なんか…酷いね」


「でも、心霊スポットには持ってこいの現象だよ!他には何かあるのかな?」


 無邪気に検索をするモモコに私は苦笑いするしかない。周りを見ていると池のことを書かれている看板を見つける。どうやらこの公園に石碑が建てられていることが書いてある。上手く覚えていないが、この池にはとある女性が自殺をした場所だと言われている。

 この池の近くにとある夫婦が暮らしていたらしい。嫁さんはかなりの働き者で有名だった。嫁さんは怪我をした旦那のために薬草を取りに山に行ったが、帰ってきたら旦那が知らない女と寝ていたと言う。裏切られた奥さんはその女と旦那を殺し、ナイフと一緒にこの池に身を投げたと書かれていた…と思う。


「アイちゃん、何してるの?」


「ん?なんでもない!」


 私はそのことを真剣に見ていなかったため、すぐにモモコのところに戻る。するとネネは遠くを見つめる。


「どうしたの?」


「誰かが、私たちを気にしてる」


「幽霊?!どこにいるの?!写真撮る!」


 幽霊を甘く見ているモモコの言い方になんだか不信感を持つ。

 シャッターを切るモモコだが、その写真には何も写っていない。


「何も映らない…」


「私には見えても、カメラに映らない時が多いよ。それとさっき調べた時、四人で行動はダメって書いてあったけど、どういう意味だと思う?」


「タヒだからじゃないの?」


「そうなのかな…?一応そういうことにしよう。他には何かあった?」


「えっとね…池の周りを歩くと水に濡れた足跡がついてくるらしいよ。他にはオーブが見えたり、トイレの鏡に人が写ったり。白い影とか黒い影とか」


 ニコニコ話すモモコだが、すぐに不機嫌な顔になる。


「何よ!人の姿が全然見えないじゃん!」


 モモコの悪い所が出てしまった。彼女は幽霊は人の姿をして出てくると思っているらしい。なので人の姿として出ないこの現象が気に触るらしい。


「普通はそうだよ。モモコちゃん」


「私は普通が嫌なの!」


 明らかに不機嫌になるモモコに私は苦笑いしかできない。そのまま自分たちはよく怪奇現象が怒るというトイレに向かう。


「トイレ…本当にいるのかな?」


 文句を言うようにモモコは私とネネを睨んでくる。私はこの場所のことをよく知らないので苦笑いするしかない。


「いると聞いているだけで、実際には分からない。でも行ってみないと分からないから」


 ネネはトイレを見つめると突然歩みを止める。ネネはトイレを指差すと「誰がいる」と言う。モモコはすぐにカメラを構える。しかしそれには何も映らない。その事に私は安堵してしまう。

 その時、私は嫌な寒気が感じる。耳元で、誰かが囁くような声が聞こえた。その言葉は確かに『嘘つき』と言っているような気がした。

 慌てて声を上げると二人が驚いた表情をする。


「なに?!急に声なんて出して…」


「今、誰かの声がした…」


「女の人?」


「うん……」


 私は恐怖で、震えが止まらない。スマホを見ると明かりが消えているのを確認する。懐中電灯を忘れた私はスマホの電気を使って行動をしていた。

 私に起きた恐怖はここから始まっていたのかもしれない。スマホの懐中電灯のマークはついたままを示している。しかし消えている。


「なんで?!」

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