第二話 テニス部2
タイミングよく階段へと差し掛かった加藤への追跡はまだまだ終わらない。勝負もまだ終わってはいないのだ。加藤が便座に腰を下ろすその瞬間まで。
階段を軽い足取りで下っていた加藤は、先ほど視界の端で一瞬
「なんてやつだ。梯子を使ってショートカットしてきやがった」
事前に用意していたのだろうか。加藤に先回りできるよう、最短距離を選んだのだ。落ちれば命までは落とさないだろうが、それでも大怪我は
「覚悟が違いすぎるぜ」
確かに、芝田は急に視界に現れた。まさか窓から飛び入ってきていたとは。
恐れ多すぎるクラスメイトの決死の
テニス部二人との攻防を制した加藤だったが、それも
まずは一つ、通路の選択だった。
先に述べた通り、本校舎に渡る方法は二つしかない。二階の渡り廊下か、一階まで下りきるかだ。
ここで迷って歩を止めてしまえば、たちまち追跡者の
「一階まで下りれば、その後の回避経路は格段に広くなる。だが、もう一階に下りる読みで待ち構えている奴らも多いだろう」
ここはさすがの加藤の判断力。
「渡り廊下を渡るしかない……ある程度の敵は倒さなければならないかもしれないが」
手すりを
渡り廊下に差し掛かった加藤は、目の前の光景に再び
「な、なんだとお前ら……!」
ほぼ全員、渡り廊下の先で待ち構えていたのだ。
走ったまま、加藤は一階を
「
「いいや、俺たちからしたら起きるべくして起こった事象だ。お前の思考は大体
「さすが、大好きだぜお前ら!」
中高
「狭い通路でその人数……
「数で押すのさ。人の間を
「そうしている間に、後ろでバドミントン部の岸田と上野がネットを張っているぜ」
「な、なに?」
隙間から覗く奥には、確かにネットが張られていた。ネットの端を二人が持ち、いつでも
ネットに掛かった瞬間捕らえる––––––さながら
「くそ、この勢いのまままかり通るのは厳しいか……」
渡り廊下の途中に差し掛かったとき、後ろから追ってきていた生徒が退路を
突っ込むわけにも、止まるわけにもいかない。
万事休すかと思えるこの状況の中でも、必死に突破口を探す。こんなところで諦めていては、陸上部の名を汚してしまう。
戦うのはいつだって自分自身と。体力が尽きかける時からが勝負だ。
「終わりだ、加藤!」
そう言ってサッカー部の遠坂は、低弾道でボールを蹴った。無回転のボールはゆらゆらと揺れながら、でも確実に加藤に向かって飛んでいた。この狭い通路でこれだけの弾速と正確性を出せるのは、さすがの実力と言えるだろう。
「ここまでか……」
そう半ば諦めかけていた加藤の真横に––––––
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